Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

文字の大きさ
45 / 229
02 潜入捜査

24 Vesta (できること)

しおりを挟む
『キャリコ・トルーディ』
「捜査してた?」
『いや。だって、AAAの役員だろ?』
「でもバルが言うんだから必ず何かに関わってると思うよ」
『大した自信だね』
「それはね」

 ザムザとの通信を終える。バルにもザムザにもちょっと相談できなかった。だってどっちからも100%ダメだって言われるもん。

 無茶だってわかってる。運が悪かったら殺されるのもわかる。でも、絶対何か動くと思うんだ。きっと、ReLFやイレプリカの尻尾をつかめる何かが。

「ファビア。ちょっと大事な話をしたいんだ。来てくれない?」

 ファビアが訝しげな顔をして付いてくる。事務室のドアを叩く。

「おや。どうしたの? ヴェスタ、ファビア」
「ヨールカにも聞いてほしい。入ってもいい?」

 ヨールカはちらっと部屋の中を振り返ってから、いいよと言った。事務室の中は殺風景で、奥に端末が載った大きなデスクがあり、あとは来客用と思われるソファセットがあるだけだ。ヨールカに促されて3人でソファに座る。俺の向かいに二人が並ぶ形。

「あのね、俺は本当はReLFの仲間になりに来たんじゃないんだ。俺はレプリカント人権保護局の捜査官で、ここの調査をしていたんだ。本当に人道的な扱いを受けてるのか」
「レプリカント人権保護局の捜査官? でも身分証は? まさかヒューマン?」
「俺は本物のレプリカントだよ。身分証の中身だけ変えてる。暗くしてもらえば、俺は目にサーモと暗視が入ってるからレプリカントだとわかるはずだよ」
「あんたが壊れて妄想癖に取り憑かれてるだけだったら? 何か証拠はあるの?」

 ファビアが自分の爪の先を見ながら冷たく言った。

「ファビア、君は半年前にもうここのメンバーになってるよね。だから君だけに声をかけたんだ。君は新人たちを精神的に誘導するための工作員でしょう?」
「……はあ?」
「半年前、君はオーナーに自分のブリングを送りつけて行方をくらましてる。IDのついたブリングが無くても行ける所は、知ってるでしょ? レプリカントなら風俗かここだけだよ」
「………」

 ヨールカの方が一つため息をついた。

「ファビア、心当たりはある?」
「はい。ヴェスタの言う通り……」
「ふーん……。それで、ヴェスタはどうしたいのかな。調査が終わったからここを出たいってことかな?」
「いえ。俺も本当に・・・仲間に加えてほしいんです。俺が仲間になったら、レプリカントに関するどんなデータでも渡すことができる。今、ReLFで持っているデータはAAAのばかりなんでしょう? 俺なら他の会社の納品データも渡せるし、ここの事も嘘の報告をしてあげられる。ねえ、レプリカントが逃げ込めるところは本当にここだけなんです。俺だってそれはわかってる。俺だってレプリカントだ。応援したい」
「それは、レプリカント人権保護局を裏切るってこと?」
「そうなる、ね。でも、俺がReLFについた方が沢山のレプリカントを守れると思う」
「……なるほどね、ヴェスタ。もしそうなら、少し待ってくれる?」

 端末の前に座ったヨールカがどこかにコールをする。たぶん本部。

「……そう。レプリカント人権保護局の捜査官だって言ってる。うん。捜査官IDで確認? わかった。ヴェスタ、あなたの捜査官IDを教えて」
「C571098rp」
 
 ヨールカがまた別なところに繋ぐ。今度はきっとレプリカント人権保護局。

「こんにちは。すみません、C571098rpさんとお話したいんですが。ええ、以前お世話になって。いらっしゃらない? 長期出張? バディの方は? 今日は非番? そうですよね、土曜日ですからね……。バディの方のIDを伺っても?」

 コールを終えたヨールカがこっちを見る。

「ヴェスタ、あなたのバディのIDは?」
「A492090rp」

 ヨールカが手元のメモを見て、納得したように頷いた。

「本当に捜査官みたい。わかった。でも一つ条件がある。ガーゴ」
「はい。ヨールカ」

 ヨールカに呼ばれたガーゴが返事をした。ガーゴはこの部屋にも入っているようだ。

「私たちにパスコードを教えられる? 書き換えるとかそういうことじゃなくて、信用してるかの確認なんだけど」
「もちろん」
「ガーゴ、20秒後にあの言葉を言って彼のパスコードを記憶してくれる? 私たちは一旦部屋の外に出るから」
「承知しました」

 ファビアとヨールカが部屋を出て行く。こんな感じできっと沢山のレプリカントたちが、パスコードを教えてプログラムを書き換えられていったんだろう。

「15秒経過」




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)

おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが… *オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ *『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

圭琴子
BL
 この世界は、αとβとΩで出来てる。  生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。  今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。    βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。  小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。  従って俺は戸籍上、β籍になっている。  あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。  俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。  今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。  だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。  だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。  学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。  どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。  『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。

【完結】それより俺は、もっとあなたとキスがしたい

佑々木(うさぎ)
BL
一ノ瀬(27)は、ビール会社である「YAMAGAMI」に勤めていた。 同僚との飲み会に出かけた夜、帰り道にバス停のベンチで寝ている美浜部長(32)を見つけてしまう。 いつも厳しく、高慢で鼻持ちならない美浜と距離を取っているため、一度は見捨てて帰ろうとしたのだが。さすがに寒空の下、見なかったことにして立ち去ることはできなかった。美浜を起こし、コーヒーでも飲ませて終わりにしようとした一ノ瀬に、美浜は思いも寄らないことを言い出して──。 サラリーマン同士のラブコメディです。 ◎BLの性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください *   性的描写 *** 性行為の描写 大人だからこその焦れったい恋愛模様、是非ご覧ください。 年下敬語攻め、一人称「私」受けが好きな方にも、楽しんでいただけると幸いです。 表紙素材は abdulgalaxia様 よりお借りしています。

処理中です...