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03 トライアル (1)マリーン探し
09 Vesta (海へのフライト)
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初めまして。僕はガートルード・トーマソン。姉のマリーン・トーマソンを探しています。姉とは半年前から連絡が取れていません。どんな小さなことでもいいので、姉のことをご存知の方がいたら、コールしてください。どうかお願いします。
「読み上げて」
「バルでもいいんじゃないの?」
「かわいげがある方がいいだろ、こういうのは。髪染めるか。マリーンと同じに」
バルはいろんなこと考えるなあ。
ともかく、マリーンが生きてることがわかってよかった。ザムザに知らせてあげないと。家でシャワーを浴びるついでにブロンドに染める。アイボリーにした時より派手な印象になる。
「お」
シャワールームから出ると、バルがちょっとだけ髪を摘んだ。
「ゴージャス」
「やめてよ」
照れる。バルも笑っている。バルも金髪の人とか好きなのかなあ。
「……終わってもこのままがいい?」
「いや、俺は色が変わるやつの方がいいな」
バルは前の時もこう言った。本当は、俺は自分の素の髪があんまり好きじゃない。心を裸にされてるみたいで。カラスなんかは俺の髪が青い色になるのが面白くてからかってきていた感じがある。バルからもわかりやすすぎるって言われるし。
でもバルが元のがいいって言うから、普段は染めないでいる。何でだろうなあ。何で元のがいいって言うんだろう。俺は名前も外見もぜんぶランダムにしたみたいだから、バルの好みってわけじゃないのに。
……そうなんだよね。いっそバルの指定なら、自信が持てたのにな。少なくとも外見だけはバルの好みなんだって。
職場から持ってきたブリングで動画を撮る。さっきの台詞のやつ。
「動画じゃないとだめ? 恥ずかしいよ」
「涙を誘うだろ。動画の方が」
ブリングにはもう偽のIDが入っているので、このブリングから送信すればガートルード・トーマソンのIDから送られたように見える。渋々ブリングに向かって話す。マリーンの画像を映しながら。ブリングの向こうでバルが肩を震わせて笑う。
「ちょっと!」
「ごめんごめん」
バルがやれって言ったくせに!
撮り終わった動画を見てみると、恥ずかしくて目を伏せがちに、笑いを堪えて下を向く感じが、すごく……
「いいな! たまたまだけどめっちゃいい」
姉を想って半泣きで呼びかけているみたいに見える。やれやれ。何をやらされるか分かったもんじゃない……。
「まだ髪戻すなよ。何か連絡があったら会いに行くんだから」
もし俺とマリーンの面識があれば、普通に俺からの呼びかけで良かった。ReLFの残党として呼び掛ければ一番だった。でも面識がないと話すとバルはこんな作戦を考えだした。これならマリーン本人が連絡して来なくても、マリーンを見かけた人が連絡をくれるかもしれない。
いいアイデアだとは思うけど!
「そんなに笑うなよー!」
「……ごめ……」
バルは動画を見返しては笑っている。もう!
これを、マリーンが防犯カメラに捕捉された地域のIDが公開されている店舗や公官庁に撒く。しばらくそれで様子を見てみる。とりあえず一歩前進。
エアランナーの操縦の方は少しずつだ。あと39時間もやらないと受験すらできないんだから。
「はい。おさらい。最初は?」
「フライトヘルメットとシートベルト」
「あたり。そして?」
「エラーがないか確認すること」
「素晴らしい。今日は離陸できそう?」
「うーん……」
アラスターは笑ってまた手を添えてくれた。「今日は行き先を音声じゃなく入力してみようか」。
「モニタに触って。画面のどこでもいいよ」
恐る恐る触れてみると、ブルーだった画面にメニューがぱっと表示された。
「ちょっとメニューを見てみようか。メーター、マップ、フューエル、エンジン、レベル、オーディオ。分からないのないだろ? 行き先を設定したいから、マップを選んで」
軽く触れる。キーボードが現れる。
「どこに行きたい? 行きたいところある?」
行きたいところ? 行きたいところ……。
「あっ! 海! 海見てみたい」
「海か。結構遠いよ。飛行時間稼げそうだね。じゃあ、俺のおすすめ」
アラスターの長い指がさらさらとキーボードを叩く。コーラル・アイランドコースト。
「入力したら、マップのポイントを確認してディスティネーションにチェック。エンター。これで終わり。簡単だろ。操縦桿を握って」
また手が添えられる。離陸は引く。ちょっとわかってきた。ふわっと飛び上がったエアランナーは、するすると高度を上げてオートに切り替わった。到着予定時刻が表示されている。90分かかる。遠い!
「次からは一人で離陸できそうだね」
「やってみる。てか、海って遠かったんだ! ごめんね。時間大丈夫?」
「大丈夫だよ。髪、染めたんだね。似合ってるよ」
どきっとする。そういうことではバルはからかってはくるけど、こんな風にストレートに褒めたりしないから。
「あ、ごめん。そういうの言われるの嫌かな?」
「や……慣れてないから返しがわかんなくて」
くすくすとアラスターは笑った。
「ヴェスタは面白いよね。どうして急にブロンドにしたの?」
「仕事で。しばらくこれなんだ。終わったら戻すんだけど」
「前はもっと白っぽくしてたよね」
「そう、あの時も仕事で。俺、勝手に髪の色が変わっちゃうからさ」
「そうだったんだ。ゲームしてる時も……」
「えっ! ゲームしてる時も変わってる?」
「変わってる。調子よく進んでるとだんだん白っぽくなるし、ライフが減ったり面倒な敵が出てくると黒っぽくなるよね」
「うわー……。そうなんだよ。だからバルがよそに行く時は染めろって」
「ははは。なるほどね。その髪は生まれつきって言うか、最初からなの?」
「そう。バルが選んだんじゃないんだ。バルはあんまり俺に興味ないからさ、ランダムでこの髪になったんだよ」
「そうなんだ。バルとは……うーん、はっきり聞いちゃうけど、どういう関係なの? 恋人とかではないの?」
「バディ」
「それだけ?」
「それだけ」
本当に、それだけ。
「そうか。安心した」
「安心? どうして?」
「……だってさ、君がバルの恋人だったら、二人っきりで長旅なんて許してもらえないよ。帰るのが怖くなっちゃうよ」
「そうなの? だってアラスターはバルの友達でしょ。それでも?」
「友達だから余計に変なことできないんだよ」
そうなの? 俺は友達って言える人もいないから、よくわからない。ザムザは友達でいいかな?
バルは? バディ。で、オーナー。
以上。
でも、俺の動画を見て笑ってくれる人……。
「アラスターは俺の友達でいい?」
「いいよ」
正面に水平線が見え出した。青い空と濃い藍色の境目。
「海だ!」
「そう。初めて?」
「うん。端末でしか見たことない」
到着予定時刻まであと45分もある。そんなに遠いのにもう見えるの?
「ここから少し南に下るよ。東側にずっと海が見える」
アラスターの言った通り、左手にずっと水平線があった。でも色が少しずつ変わってくる。藍色からゆっくりと紫色に、そしてブルーグリーンに。白い砂浜。
「きれい」
「だろう」
ディスティネーションの文字がモニタに出る。
「ここはポートがないから俺が停めるね」
アラスターの横顔が耳元からモニタを覗き込む。見やすいようにとちょっと体をずらすと、アラスターが「いいよ」と言った。「そのままで」。
モニタに砂浜の地形が等高線で表れる。俺の手ごとアラスターは操縦桿を微調整して水平に着陸した。
「もう少ししたらこれも教えるからね」
できる気がしない……。
アラスターがぽんと砂浜に飛び降りる。続いて俺も。
「わ……」
思ったよりずっと砂が柔らかい。足を取られて転びそうになると、アラスターがさっと手を取ってくれた。
「歩きにくいよ」
「ありがとう!」
顔を上げる。まもなく五月の砂浜には誰もいない。ブルーグリーンの海と白い砂。広い!
「わー! 海だ」
走ろうとすると足が埋まって重い。靴に細かい砂がさらさらと入り込んでくる。海にもっと近づいてみたい。不思議なにおい。これが潮のにおい? 貝殻がいくつも埋まっている。こんなに普通にあるの? 貝って。波が見える。本当に寄せては引いていく。どうして? くつをぽんと脱いで海のすぐそばに行く。冷たい。足が濡れた砂に吸い込まれるような感覚。アラスターがにこにこと追いかけてきた。
「ふふ。そんなに嬉しいんだ?」
「うん! 来てみたかったんだ。ありがとう」
「運転したのは君だよ」
「俺じゃないよー」
浅瀬にきらきらと何かが光る。いろんな色の小さい魚。水がないみたいに透明に海の中が見える。
「喜んでもらえたかな」
「もちろん! すごいきれい。海ってこんな感じなんだ」
波を追う。足首くらいまでの深さに高い波が来て、膝まで浸かってしまう。
「ははっ! すごい濡れちゃった」
ぐんと波が引く。ふらっと沖に一緒に取られそうになる。大きな手が伸びてきて、手首を掴まれた。危ない。
「ありがとう」
「波が結構強いから気をつけて。攫われるよ」
波打ち際を二人でしばらく歩いた。白い貝を拾う。
「ひとで」
「こっちは珊瑚」
「これは何?」
「何かの骨かな」
「どうして穴が開いてる貝殻があるの?」
「別の貝が食べた跡だよ」
風が気持ちがいい。片手に靴と靴下。片手に拾った貝殻。
「この辺で何か食べて帰ろう。おいしいシーフードが食べられるよ」
「うん!」
「潮のにおいがする」
俺が家に入るなりバルが言った。
「海に行ったんだ。シャワー浴びた方がいい?」
「いや、いいよ。懐かしいな」
ほんと? テーブルにころんと貝殻を出すと、バルは白い歯を見せて笑った。
「子どもみてえ」
「だってさ、初めて行ったんだもん。前にバルから聞いて行ってみたいなって思ってて」
「そんな話したかあ?」
「したよ」
バルは貝を手に取って、ああ、好きなにおいだ、と言った。海に行って良かったと思った。
「読み上げて」
「バルでもいいんじゃないの?」
「かわいげがある方がいいだろ、こういうのは。髪染めるか。マリーンと同じに」
バルはいろんなこと考えるなあ。
ともかく、マリーンが生きてることがわかってよかった。ザムザに知らせてあげないと。家でシャワーを浴びるついでにブロンドに染める。アイボリーにした時より派手な印象になる。
「お」
シャワールームから出ると、バルがちょっとだけ髪を摘んだ。
「ゴージャス」
「やめてよ」
照れる。バルも笑っている。バルも金髪の人とか好きなのかなあ。
「……終わってもこのままがいい?」
「いや、俺は色が変わるやつの方がいいな」
バルは前の時もこう言った。本当は、俺は自分の素の髪があんまり好きじゃない。心を裸にされてるみたいで。カラスなんかは俺の髪が青い色になるのが面白くてからかってきていた感じがある。バルからもわかりやすすぎるって言われるし。
でもバルが元のがいいって言うから、普段は染めないでいる。何でだろうなあ。何で元のがいいって言うんだろう。俺は名前も外見もぜんぶランダムにしたみたいだから、バルの好みってわけじゃないのに。
……そうなんだよね。いっそバルの指定なら、自信が持てたのにな。少なくとも外見だけはバルの好みなんだって。
職場から持ってきたブリングで動画を撮る。さっきの台詞のやつ。
「動画じゃないとだめ? 恥ずかしいよ」
「涙を誘うだろ。動画の方が」
ブリングにはもう偽のIDが入っているので、このブリングから送信すればガートルード・トーマソンのIDから送られたように見える。渋々ブリングに向かって話す。マリーンの画像を映しながら。ブリングの向こうでバルが肩を震わせて笑う。
「ちょっと!」
「ごめんごめん」
バルがやれって言ったくせに!
撮り終わった動画を見てみると、恥ずかしくて目を伏せがちに、笑いを堪えて下を向く感じが、すごく……
「いいな! たまたまだけどめっちゃいい」
姉を想って半泣きで呼びかけているみたいに見える。やれやれ。何をやらされるか分かったもんじゃない……。
「まだ髪戻すなよ。何か連絡があったら会いに行くんだから」
もし俺とマリーンの面識があれば、普通に俺からの呼びかけで良かった。ReLFの残党として呼び掛ければ一番だった。でも面識がないと話すとバルはこんな作戦を考えだした。これならマリーン本人が連絡して来なくても、マリーンを見かけた人が連絡をくれるかもしれない。
いいアイデアだとは思うけど!
「そんなに笑うなよー!」
「……ごめ……」
バルは動画を見返しては笑っている。もう!
これを、マリーンが防犯カメラに捕捉された地域のIDが公開されている店舗や公官庁に撒く。しばらくそれで様子を見てみる。とりあえず一歩前進。
エアランナーの操縦の方は少しずつだ。あと39時間もやらないと受験すらできないんだから。
「はい。おさらい。最初は?」
「フライトヘルメットとシートベルト」
「あたり。そして?」
「エラーがないか確認すること」
「素晴らしい。今日は離陸できそう?」
「うーん……」
アラスターは笑ってまた手を添えてくれた。「今日は行き先を音声じゃなく入力してみようか」。
「モニタに触って。画面のどこでもいいよ」
恐る恐る触れてみると、ブルーだった画面にメニューがぱっと表示された。
「ちょっとメニューを見てみようか。メーター、マップ、フューエル、エンジン、レベル、オーディオ。分からないのないだろ? 行き先を設定したいから、マップを選んで」
軽く触れる。キーボードが現れる。
「どこに行きたい? 行きたいところある?」
行きたいところ? 行きたいところ……。
「あっ! 海! 海見てみたい」
「海か。結構遠いよ。飛行時間稼げそうだね。じゃあ、俺のおすすめ」
アラスターの長い指がさらさらとキーボードを叩く。コーラル・アイランドコースト。
「入力したら、マップのポイントを確認してディスティネーションにチェック。エンター。これで終わり。簡単だろ。操縦桿を握って」
また手が添えられる。離陸は引く。ちょっとわかってきた。ふわっと飛び上がったエアランナーは、するすると高度を上げてオートに切り替わった。到着予定時刻が表示されている。90分かかる。遠い!
「次からは一人で離陸できそうだね」
「やってみる。てか、海って遠かったんだ! ごめんね。時間大丈夫?」
「大丈夫だよ。髪、染めたんだね。似合ってるよ」
どきっとする。そういうことではバルはからかってはくるけど、こんな風にストレートに褒めたりしないから。
「あ、ごめん。そういうの言われるの嫌かな?」
「や……慣れてないから返しがわかんなくて」
くすくすとアラスターは笑った。
「ヴェスタは面白いよね。どうして急にブロンドにしたの?」
「仕事で。しばらくこれなんだ。終わったら戻すんだけど」
「前はもっと白っぽくしてたよね」
「そう、あの時も仕事で。俺、勝手に髪の色が変わっちゃうからさ」
「そうだったんだ。ゲームしてる時も……」
「えっ! ゲームしてる時も変わってる?」
「変わってる。調子よく進んでるとだんだん白っぽくなるし、ライフが減ったり面倒な敵が出てくると黒っぽくなるよね」
「うわー……。そうなんだよ。だからバルがよそに行く時は染めろって」
「ははは。なるほどね。その髪は生まれつきって言うか、最初からなの?」
「そう。バルが選んだんじゃないんだ。バルはあんまり俺に興味ないからさ、ランダムでこの髪になったんだよ」
「そうなんだ。バルとは……うーん、はっきり聞いちゃうけど、どういう関係なの? 恋人とかではないの?」
「バディ」
「それだけ?」
「それだけ」
本当に、それだけ。
「そうか。安心した」
「安心? どうして?」
「……だってさ、君がバルの恋人だったら、二人っきりで長旅なんて許してもらえないよ。帰るのが怖くなっちゃうよ」
「そうなの? だってアラスターはバルの友達でしょ。それでも?」
「友達だから余計に変なことできないんだよ」
そうなの? 俺は友達って言える人もいないから、よくわからない。ザムザは友達でいいかな?
バルは? バディ。で、オーナー。
以上。
でも、俺の動画を見て笑ってくれる人……。
「アラスターは俺の友達でいい?」
「いいよ」
正面に水平線が見え出した。青い空と濃い藍色の境目。
「海だ!」
「そう。初めて?」
「うん。端末でしか見たことない」
到着予定時刻まであと45分もある。そんなに遠いのにもう見えるの?
「ここから少し南に下るよ。東側にずっと海が見える」
アラスターの言った通り、左手にずっと水平線があった。でも色が少しずつ変わってくる。藍色からゆっくりと紫色に、そしてブルーグリーンに。白い砂浜。
「きれい」
「だろう」
ディスティネーションの文字がモニタに出る。
「ここはポートがないから俺が停めるね」
アラスターの横顔が耳元からモニタを覗き込む。見やすいようにとちょっと体をずらすと、アラスターが「いいよ」と言った。「そのままで」。
モニタに砂浜の地形が等高線で表れる。俺の手ごとアラスターは操縦桿を微調整して水平に着陸した。
「もう少ししたらこれも教えるからね」
できる気がしない……。
アラスターがぽんと砂浜に飛び降りる。続いて俺も。
「わ……」
思ったよりずっと砂が柔らかい。足を取られて転びそうになると、アラスターがさっと手を取ってくれた。
「歩きにくいよ」
「ありがとう!」
顔を上げる。まもなく五月の砂浜には誰もいない。ブルーグリーンの海と白い砂。広い!
「わー! 海だ」
走ろうとすると足が埋まって重い。靴に細かい砂がさらさらと入り込んでくる。海にもっと近づいてみたい。不思議なにおい。これが潮のにおい? 貝殻がいくつも埋まっている。こんなに普通にあるの? 貝って。波が見える。本当に寄せては引いていく。どうして? くつをぽんと脱いで海のすぐそばに行く。冷たい。足が濡れた砂に吸い込まれるような感覚。アラスターがにこにこと追いかけてきた。
「ふふ。そんなに嬉しいんだ?」
「うん! 来てみたかったんだ。ありがとう」
「運転したのは君だよ」
「俺じゃないよー」
浅瀬にきらきらと何かが光る。いろんな色の小さい魚。水がないみたいに透明に海の中が見える。
「喜んでもらえたかな」
「もちろん! すごいきれい。海ってこんな感じなんだ」
波を追う。足首くらいまでの深さに高い波が来て、膝まで浸かってしまう。
「ははっ! すごい濡れちゃった」
ぐんと波が引く。ふらっと沖に一緒に取られそうになる。大きな手が伸びてきて、手首を掴まれた。危ない。
「ありがとう」
「波が結構強いから気をつけて。攫われるよ」
波打ち際を二人でしばらく歩いた。白い貝を拾う。
「ひとで」
「こっちは珊瑚」
「これは何?」
「何かの骨かな」
「どうして穴が開いてる貝殻があるの?」
「別の貝が食べた跡だよ」
風が気持ちがいい。片手に靴と靴下。片手に拾った貝殻。
「この辺で何か食べて帰ろう。おいしいシーフードが食べられるよ」
「うん!」
「潮のにおいがする」
俺が家に入るなりバルが言った。
「海に行ったんだ。シャワー浴びた方がいい?」
「いや、いいよ。懐かしいな」
ほんと? テーブルにころんと貝殻を出すと、バルは白い歯を見せて笑った。
「子どもみてえ」
「だってさ、初めて行ったんだもん。前にバルから聞いて行ってみたいなって思ってて」
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「したよ」
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