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03 トライアル (1)マリーン探し
11 Vesta (マリーンのオーナー)
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「こんにちは、デュナンさん。C571098rpです。マリーンさんのことで……」
『レプリカント人権保護局さん? あのさ、相談したいことがあるんですよ。マリーンのことはもういいです。なんか変な男がね、最近俺の周りをうろついてるみたいで。俺を保護してもらえないですかね?』
「男?」
『男ですね。知らない男』
「何かお心当たりは?」
『ないです』
「あの……うちはレプリカントの人権を守る部署なので、警察の方に」
『そんなこと言わないで!』
「お話はわかりました。伺いますのでお時間頂戴できますか」
バルがすっと横から引き取った。いいの?
『お願いします。在宅なんで、こっちはいつでも大丈夫です』
「では今から伺っていいですかね。ご自宅は……コッパーズタウンの方でよろしいですか? 一時間程度で着くと思います」
『はい。お願いします』
コールが終わる。
「いいの? 警察の管轄かなって」
「うん。警察の管轄だよ。俺は俺が聞きたいことを聞きに行くだけ。承ってないだろ。話はわかったって言っただけだ。行くぞ」
「はは」
屁理屈。でもバルのこういうとこも好きだ。公用車を手配する。
「ねえ、もしさ、俺がエアランナーの免許取れたら、局のランナーで行けるの?」
「パイロットとして登録すれば、かな。二種まで取って面接受けて適正試験受けて」
「えー!」
「なんだよ。パイロットに鞍替えか?」
「そういうわけじゃないけど、俺がエアランナー運転できたら便利かなって思ったのになあ。結構厳しいね」
「個人でどっかに行くくらいならな。公用はそれなりに難しい」
マドラ・デュナンの家はコッパーズタウンの外れにあった。まずまず大きな一軒家。ただ、古い。ありていに言うとぼろぼろ。
「あ! レプリカント人権保護局の?」
出てきた男は黒髪で、かなり長身だった。バルよりも背が高い。二メートル近いのかも。
「捜査官のA492090rpとC571098rpです」
「その記号みたいな名前なんとかなりません?」
「すみませんね。規則ですから」
どうぞと言われて室内に入る。廊下に今時珍しい紙の雑誌が紐に括られて、かたまりになっていくつも置かれている。埃っぽい。へんなにおいがする。バルは嫌だろうな。リビングにもたくさんそういうよくわからない雑誌や紙がある。
「散らかってて。イラストレーターなもんでね、描いたものや資料が」
なるほど。
「まず、お話を伺いますね」
バルがマドラを促すと、堰を切ったように話し始めた。
変な気配を感じたのは最近だ。2階から外を見た時、フードを被った男が家の前に立っているのが見えた。偶然かと思ったが、注意していると週に何度かそういうことがある。在宅仕事だから外に出なくても支障はないが、気味がわるい。心当たりもない。ファンの可能性はゼロではないが、直接尋ねてみる勇気はない。
「そうでしたか。今日はその男はおりますか?」
「今日はいなかったですね。昼に見てみましたが」
「本当にお心当たりはないですか? 恨まれたり」
「……ないですけど」
「実は、マリーンさんへの虐待の疑いがあなたには掛けられているんですよ」
「虐待? ははは」
マドラは紙の束をデスクから持ってきて差し出した。女の絵。血塗れだったり、縛られていたり。ぞっとするような絵だ。
「私はイラストレーターなんですよ。そりゃ、こういう作風ですから、仕事柄多少はね、モデルになってもらったりはありましたが、そんな虐待と言われるほどのことは……」
「そうですか。わかりました。今度男が家の前に立っていたら、画像を送っていただけませんか。誰なのかわかるかも知れませんので」
「あのー、私の保護は?」
「現段階ですと、その男性があなたに危害を加えるつもりなのかどうかわからないため保護はできかねます。今後、必要なようなら対応します。マリーンさんについて、本当のことを話していただいて何か関連がありそうなら別ですが」
「だから……」
「先月コールした時、あなたはマリーンさんをお探しでしたよね? なぜですか?」
「あー……モデルに逃げられてしまって」
「なるほど。ご自分のレプリカントであれば基本的には何をされても逃げませんからね。ではなぜ払い下げられたんでしょうか」
「えーと……」
「マリーンさんは体に傷があったようですね。どうしてついた傷なのかご存知ですよね?」
「あー…………なんだったかな」
「質問を変えますね。モデルに逃げられたと仰いましたね。なぜ逃げられたんですか?」
「……」
「そのモデルの方とはお話できますよね。あなたからお伺いできないのであればそちらに伺います。ありがとうございました」
バルがさっと立ち上がる。急いで後を追う。
「もういいの?」
「いいだろ。『レプリカント人権保護局の捜査官に言えないようなことをマリーンにやりました』って言ってただろ」
「ふふ」
「マリーンとその不審者の関係かな? わかってないのは。恋人?」
「……それは違うと思うなあ」
「なんで? ていうか、お前何か知ってるだろ。一瞬同じところにいたにしろ、会ったことないやつそんなに探すか?」
「……」
「しらばっくれんなよ、こら」
ちらっとバルを見上げる。口元が笑っている。
「……ザムザの恋人なんだよ。マリーンは。二人でずっと探してたんだけど……」
「それな、先に言えよ! マリーンの傷の話とか先にわかったんじゃないか?」
「あ、そっか。ごめん、だってバル、ザムザのことあんまり好きじゃないじゃん」
「あのな、それとこれとは別。仕事は仕事」
くしゃくしゃと頭を撫でられる。これ、褒められる時もダメなことした時もやられるからよくわからない。
「あれか? お前の前に連邦捜査局から潜入したレプリカントか?」
「そう。捜査局の受付でザムザの彼女だったから。でも戻ってこなくて」
「ふーん……」
それは見つけてやらないとな、とバルは言った。
『レプリカント人権保護局さん? あのさ、相談したいことがあるんですよ。マリーンのことはもういいです。なんか変な男がね、最近俺の周りをうろついてるみたいで。俺を保護してもらえないですかね?』
「男?」
『男ですね。知らない男』
「何かお心当たりは?」
『ないです』
「あの……うちはレプリカントの人権を守る部署なので、警察の方に」
『そんなこと言わないで!』
「お話はわかりました。伺いますのでお時間頂戴できますか」
バルがすっと横から引き取った。いいの?
『お願いします。在宅なんで、こっちはいつでも大丈夫です』
「では今から伺っていいですかね。ご自宅は……コッパーズタウンの方でよろしいですか? 一時間程度で着くと思います」
『はい。お願いします』
コールが終わる。
「いいの? 警察の管轄かなって」
「うん。警察の管轄だよ。俺は俺が聞きたいことを聞きに行くだけ。承ってないだろ。話はわかったって言っただけだ。行くぞ」
「はは」
屁理屈。でもバルのこういうとこも好きだ。公用車を手配する。
「ねえ、もしさ、俺がエアランナーの免許取れたら、局のランナーで行けるの?」
「パイロットとして登録すれば、かな。二種まで取って面接受けて適正試験受けて」
「えー!」
「なんだよ。パイロットに鞍替えか?」
「そういうわけじゃないけど、俺がエアランナー運転できたら便利かなって思ったのになあ。結構厳しいね」
「個人でどっかに行くくらいならな。公用はそれなりに難しい」
マドラ・デュナンの家はコッパーズタウンの外れにあった。まずまず大きな一軒家。ただ、古い。ありていに言うとぼろぼろ。
「あ! レプリカント人権保護局の?」
出てきた男は黒髪で、かなり長身だった。バルよりも背が高い。二メートル近いのかも。
「捜査官のA492090rpとC571098rpです」
「その記号みたいな名前なんとかなりません?」
「すみませんね。規則ですから」
どうぞと言われて室内に入る。廊下に今時珍しい紙の雑誌が紐に括られて、かたまりになっていくつも置かれている。埃っぽい。へんなにおいがする。バルは嫌だろうな。リビングにもたくさんそういうよくわからない雑誌や紙がある。
「散らかってて。イラストレーターなもんでね、描いたものや資料が」
なるほど。
「まず、お話を伺いますね」
バルがマドラを促すと、堰を切ったように話し始めた。
変な気配を感じたのは最近だ。2階から外を見た時、フードを被った男が家の前に立っているのが見えた。偶然かと思ったが、注意していると週に何度かそういうことがある。在宅仕事だから外に出なくても支障はないが、気味がわるい。心当たりもない。ファンの可能性はゼロではないが、直接尋ねてみる勇気はない。
「そうでしたか。今日はその男はおりますか?」
「今日はいなかったですね。昼に見てみましたが」
「本当にお心当たりはないですか? 恨まれたり」
「……ないですけど」
「実は、マリーンさんへの虐待の疑いがあなたには掛けられているんですよ」
「虐待? ははは」
マドラは紙の束をデスクから持ってきて差し出した。女の絵。血塗れだったり、縛られていたり。ぞっとするような絵だ。
「私はイラストレーターなんですよ。そりゃ、こういう作風ですから、仕事柄多少はね、モデルになってもらったりはありましたが、そんな虐待と言われるほどのことは……」
「そうですか。わかりました。今度男が家の前に立っていたら、画像を送っていただけませんか。誰なのかわかるかも知れませんので」
「あのー、私の保護は?」
「現段階ですと、その男性があなたに危害を加えるつもりなのかどうかわからないため保護はできかねます。今後、必要なようなら対応します。マリーンさんについて、本当のことを話していただいて何か関連がありそうなら別ですが」
「だから……」
「先月コールした時、あなたはマリーンさんをお探しでしたよね? なぜですか?」
「あー……モデルに逃げられてしまって」
「なるほど。ご自分のレプリカントであれば基本的には何をされても逃げませんからね。ではなぜ払い下げられたんでしょうか」
「えーと……」
「マリーンさんは体に傷があったようですね。どうしてついた傷なのかご存知ですよね?」
「あー…………なんだったかな」
「質問を変えますね。モデルに逃げられたと仰いましたね。なぜ逃げられたんですか?」
「……」
「そのモデルの方とはお話できますよね。あなたからお伺いできないのであればそちらに伺います。ありがとうございました」
バルがさっと立ち上がる。急いで後を追う。
「もういいの?」
「いいだろ。『レプリカント人権保護局の捜査官に言えないようなことをマリーンにやりました』って言ってただろ」
「ふふ」
「マリーンとその不審者の関係かな? わかってないのは。恋人?」
「……それは違うと思うなあ」
「なんで? ていうか、お前何か知ってるだろ。一瞬同じところにいたにしろ、会ったことないやつそんなに探すか?」
「……」
「しらばっくれんなよ、こら」
ちらっとバルを見上げる。口元が笑っている。
「……ザムザの恋人なんだよ。マリーンは。二人でずっと探してたんだけど……」
「それな、先に言えよ! マリーンの傷の話とか先にわかったんじゃないか?」
「あ、そっか。ごめん、だってバル、ザムザのことあんまり好きじゃないじゃん」
「あのな、それとこれとは別。仕事は仕事」
くしゃくしゃと頭を撫でられる。これ、褒められる時もダメなことした時もやられるからよくわからない。
「あれか? お前の前に連邦捜査局から潜入したレプリカントか?」
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それは見つけてやらないとな、とバルは言った。
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