Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

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03 トライアル (3)Vesta & Baltroy

28 Baltroy (虫の知らせ)

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「んー………」

 新しい画像を端末に開く。なんの変哲もない少年の生活。

 ダリルについたバグは落ちてしまった。普通の少年だ。外したか。じゃああの俺に着いてきたバグは誰が飛ばしたバグだったんだ。世の中そんなにバグを勝手につけてくるやつがいるのかよ。物騒だな。

「何もないな」
「そうなのかな……」

 ヴェスタが、さっと自分のデスクに帰って行った。何か思いついたらしい。こう言う時はほっておく。新しい殺人事件が起こってないのがせめてもの救いだ。

 前の殺人から一ヶ月になる。今週は危ない。前の被害者の殺害された状況をもう一度調べる。次は俺が被害者になる予定だからだ。

 一人目はほとんど抵抗してない。着衣の乱れもないし、腕も伸ばしたままだ。二人目は半裸。でも加害者の皮膚片だったり血液だったりはない。抵抗しなかったと考えるのが妥当。
 三人目は後ろからナイフで刺されている。これは部屋の中を逃げ回っている。四人目。部屋の中は血まみれ。レプリカントだから、強い抵抗はしなかっただろう。参考にならない。五人目も同じ。

 女性の一人暮らしだ。そんなに簡単に殺人鬼に部屋を開けない。どうやって入った? この防御創のなさは何を意味する?

「ヴェスタ」
「バル」

 ちょうどヴェスタもこちらを振り向いていた。何か見つけたらしい。ヴェスタのデスクに行く。ダリルの画像の中の一枚が拡大されて解像度を上げられている。器用なやつ。

「これ。ダリルのブリングの中を見て」

 なんだ?

 小さな映像を引き伸ばしてある。解像度を上げていても鮮明ではない。でもアップになったダリルのブリングには、画像データが映っている。街中で撮影された、黒いワンピースの女の画像に見える。

「ん? これがどうした?」
「バル、これバルだよ」

 俺?

「俺がダリルにバグをつけた日の、バルだよ。覚えてない? この服だっただろ? 黒のワンピース」
「あ。そうだ……な」

 そうだ。スカート混ぜやがったなと思った日だ。しかもそれをヴェスタに見られて、ザムザをぶっ殺したくなった。画像をよく見ると、髪も青っぽい気がする。

「バルにバグを付けたのは少なくともこの子なんじゃないかな」
「よく見つけたなあ」
「バルはどうしたの?」
「ああ。お前ならどう思うかなと思って」

 ざっくり一人目と二人目の被害者の状況を説明する。全く抵抗の跡がない。被害者の入室時に押し入ったとしても、その後抵抗されずに被害者だけ殺すって言うのはどうやってると思う?

「うーん。薬?」
「検出されてない」
「パルスガン」
「一般人には手に入らない」
「何か変な跡はないのかな? 遺体に」
「あったら検案書に書いてあると思う」

 さすがのヴェスタも思い浮かばないようだった。死ぬかもなこれ。下手すると。

「ヴェスタ。念のため、俺のビーコンの緊急連絡先をお前にしておく。鳴ったら……」
「今まで誰だったの?」
「俺だよ。俺は死なないから。でも今回はちょっと」

 体力も落ちてるし手口がわからない。準備しておくに越したことはない。

「ビーコンが鳴ったら。たぶん退勤後だ。鳴ったらすぐにザムザに連絡すること。お前のブリングにマップが出るが、俺のとこには一人で来るな。ザムザの指示に従え。わかったか?」
「……え」
「おい。復唱しろ。ビーコンが鳴ったらザムザに連絡して指示を待つんだ。わかったな?」
「ビーコンが鳴ったら……ザムザに連絡して指示を待つ」
「そう。くれぐれも飛び出すな。俺は簡単には死なない。ビーコンの設定だってかすり傷でもお前に連絡がいく設定にしてある。鳴り出したって慌てなくていい」

 虫の知らせなんて信じてない。でも、悪い予感ていうのは当たるもんだ。






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