Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

文字の大きさ
180 / 229
08 デモンストレーション

05 Baltroy (手がかり)

しおりを挟む
 ヴェスタの様子がもうずっとおかしい。

 今朝も髪がかなり青っぽいブルーグリーンで、顔色も冴えなかった。マリッジブルー? 見た目通り。はは。なんだろうな。

 ルーたちに会わせた時はちょっとほったらかし気味だったかも知れない。俺も久しぶりだったから。つい。またヴェスタの全然思ってることをしゃべらないやつが発動してて、何考えてるのか全くわからない。少し様子を見るか。

 さて。骨の件だ。8体の骨。まあ、三体は腐乱死体。年代順に並べてみる。一番古い骨が5年前の骨。正確には、5から7年前の骨。ずいぶん開きがあるな? いくら骨になったからって、もう少し死亡時期は絞れるもんだけどな。他の骨も見てみる。3年から5年。2年も開くか? 鑑識にコールする。

「先日もらった骨の死亡時期なんですが、かなり広くないですか? 期間が」
『そう。なんだかね、状態がよくなくて特定できなかったんだ』
「状態がよくない? 燃やされてたとか、薬品でも掛けられてたとか?」
『いや、そうでもないんだ。細かいヒビが入ったりしててね。どちらかというと膨張と収縮を繰り返したのかなと。つまり……』
「寒暖差が大きいところに放置されていた?」
『そうじゃないかなと。一応死亡時期の推定はしたけど、参考程度に考えて欲しいな』

 ふうん。まあ、空調もない山中の倉庫の中だ。街中よりはずっと寒暖差があっただろうが……。

 一番古い骨は5から7年前。これが一体。次が3から5年前。4体ある。そのうちの一体に首がない。これはまだ身元がわかっていない。レプリカントは遺伝子の登録をしないし肉親もいないから、顔がわからないと難しい。

 次が腐乱死体の三人。これは最近の遺体。腐乱死体の三人には、性行為の跡があった。暴行? 和姦? 体液は見つからなかった。これで犯人にどうやって辿り着くか。

「ヴェスタ」

 そんなに機嫌の良くないヴェスタが右側に滑り込んでくる。でもこういうのはお前の管轄だろ。何か思いついてくれ。

「骨の状態が悪くて死亡時期がフワッとしてるけど、だいたいこんな順で殺されてる。この一番古い遺体が5年前に捜索願が出てるやつだから、もしかすると3年前って言われてるやつと前後するのかもな。何か気づくか?」
「……どうして一体だけ首がないのかな?」
「そうだな。何でだろう? 戦利品? だったら他の遺体も損壊しそうだよな。身元をわからなくする目的なら全部やるよな」
「俺、この人を探してみる」
「この首のない遺体?」
「うん。だめかも知れないけど」
「かなり難しいぞ。手がかりにできるのは身長くらいかな」

 身長は恐らく163センチ。首がないから推定だ。

「お前と同じくらい」
「他の人は?」

 他のも見てみる。163センチから168センチ。大体似通っている。

「他になんか思いつくか?」
「攫われてから殺されるまで随分タイムラグがあるだろ。どこに隠されてるのかな……監禁されてる?」
「うーん……」

 その通りだ。腐乱死体の三人のうちAさんなんかは、一年も前に誘拐されて死んだのは最近だ。一年近くも。他の女性とも一緒にいた時期さえありそうだ。

「体液は見つからなかった?」
「見つからなかった。見つかってれば一発だったのに」
「なんで? 性行為したんだろ?」
「なんでって……」

 ヴェスタが声をひそめた。

「いく時抜いたって、ちょっとは残っちゃうんじゃないの? 検出できないの?」
「………や、抜くとかじゃなくて」
「ちがうの?」

 これ。教育を間違った。というか……

「……家で説明してやる」

 おいおいおい。プレインストールされてないのかよ? アラスターも教えろよ。人のこと言えねえか……。ディープキスはプレインストールだったのにな。基準がおかしいだろ。

「とにかく体液は見つからなかった。俺はあの倉庫がある山の周辺のカメラの映像を見てみる。三人分の遺体を運んだんなら、それなりにでかいオートキャリアを使ってるはずだ」
「うん」

 気を取り直して映像を探してみる。倉庫から一番近いのは不法投棄予防のための個人が設置した防犯カメラだった。腐乱死体が捨てられた日あたりの映像をもらう。さすがに3年も前の映像は消えていた。辺鄙な山奥だ。そんなに車通りがあるわけではない。

 やはり輸送用の大型のキャリアが多い。あんまり絞れない。まあ、土やら石やらを載せたやつは除く。シーツに土はついていなかった。パイプや板みたいな、隠しようもなく資材ばかりのやつも除く。すると一日で10数台。

「ここから先か……」

 道は一本道だ。抜けた先には当分カメラはない。コンコンとペンでデスクを叩く。叩いて何か思いつくわけじゃないけど。犯人の気になってみよう。遺体を運ぶ……3人分だ。あの倉庫まで。山を登っていく。倉庫の中まで乗り入れて、遺体を下ろす。さて、帰ろう。オートキャリアに乗り込む……。

 もう一度映像を見る。この道は一本道なんだ。このまま走っていけば、戻る時にものすごい遠回りになる。もと来た道を戻ったはずだ。遺体を下ろすのにどれくらいかかる? 一人につき5分? 10分? 30分から1時間程度でこの道を戻っているのを探す。一台だけだ。どこかの企業名と魚のロゴが車体に入っている。

 フィッシュトルネード。

 すぐに社名を検索してコールする。

「こんにちは、こちらレプリカント人権保護局の捜査官A492090rpです。貴社の社名入りのオートキャリアについて伺いたいんですが」







しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)

おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが… *オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ *『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

恋人はメリーゴーランド少年だった。

夏目奈緖
BL
溺愛ドS社長×ツンデレ高校生。年の差恋愛。社長からの告白と束縛に戸惑う高校生。すれ違いばかりの片想いから恋人同士へ。ひねくれもの天使的な高校生と心を閉ざした会社社長との年の差BL。中山夏樹(18)は従姉妹の結婚式の2次会で、倒れてきた酔っ払いの下敷きになり左手に怪我を負った。助けてくれたのが、会場レストラン経営の黒崎ホールディングス代表取締役社長・黒崎圭一(33)。左手の抜糸がすむまで黒崎の車で送迎されることになった。黒崎は誰にも心を開かない。夏樹も同じである。しかしながら、夏樹は黒崎の前だけは自分の意思とは反対に、本音を吐き出す。2人は孤独を抱えており、夏樹は黒崎に惹かれていく。黒崎は夏樹に一目惚れし、執着する。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

圭琴子
BL
 この世界は、αとβとΩで出来てる。  生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。  今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。    βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。  小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。  従って俺は戸籍上、β籍になっている。  あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。  俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。  今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。  だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。  だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。  学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。  どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。  『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。

処理中です...