Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

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08 デモンストレーション

11 Baltroy (容量不足)

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 出勤してみると10通ほどメッセージが来ていた。フィッシュトルネードの社員からだ。「課長がサディスト。絶対人も殺してる」。ご愁傷様。「犯人がいると思うと安心して出社できない。容疑者を教えてほしい」。悪いけど転職してくれ。「営業のマーデイ・ガルという社員が怪しい。身辺調査をしてみろ」。それだけじゃなあ。

 他のも似たり寄ったりだ。そんなもんか。まあそうだ。殺人鬼が明らかに怪しかったら苦労しない。うまく溶け込んでるから何年越しの殺人ができるんだ。だめかもな。タレコミは望み薄だ。

 昨日は検索をかけっぱなしで帰った画像を見る。すごい。何千枚だ? よくあるタイプの顔貌だったらしい。車に乗っていた社員114人の一覧は画像が付いてない。一から。だめだな。

 だめだ。何も思いつかない。

「………」

 ふっとため息が出る。脳みその容量が何かに取られている。わかってる。昨日のゴーシェの話だ。やめろ。考えるな。少なくとも今は。

「バル」

 ヴェスタが右側に立つ。スペースを空けてやるといつも通りにそこから端末を覗き込む。青緑色の髪を左の耳に掛けている。真剣な横顔。

「あのさ、この死後3年から5年の人たちはみんな同じ時期に殺されたのかな? 三日目で発見された3人みたいにさ」
「んー……なんとも言えないな。細かい時期はわからない……。死因は出たんだっけ」
「出た。みんな絞殺されてる。レプリカントは抵抗しないから、なのかな? 抵抗しないってどれくらい抵抗しないの?」
「例えば、ヒューマンなら首を絞められたら相手の手を引き剥がそうとしたり、相手の顔に手をやったりするんだ。爪を立てたり、噛み付いたり。レプリカントは一切できない。ヒューマンを傷つけることはできない」
「何ならできるの?」
「傷つけないでできる程度のこと……そうだな、やめてって叫んだり、首を振ったり、あとは……」

 細い首に男の手がかかる。腕に手をやることはできるだろう。身を捩ること。肩をすくめたり……。そんなのはほとんど無抵抗みたいなもんだ。あとは心理的に訴えるしかないんじゃないか。例えば、手を離してって諭したり、涙を流したり。

 そんなことで心が動くなら8人も殺さないか……。

 頭の中で誰かが、細身の体に馬乗りになって首を絞める。太い手首を白い手が掴む。苦しそうに顔を歪める……

 ヴェスタ。

「バル?」

 はっとする。嫌なイメージだ。

「……ま、だめだろうな。本気で相手が殺しに来てるなら……AIの入ったレプリカントでは無理だ。ヒューマンは無傷だろう」
「あともう一つ! ミイラになるってどういうこと?」
「遺体が微生物の繁殖や腐敗よりも先にある程度乾燥したって事だな。乾燥をわざとさせたのかな……」
「普通はならないよね?」
「ならない。砂漠じゃないんだから。遺体の腐敗を遅らせるために、何か撒いていたのかもしれないな。乾燥剤みたいなものだったり……」
「条件があるんだね」
「この国の気候ならかなり珍しい」

 ありがとう、と言ってヴェスタは席に戻って行った。一番嫌なこと。俺にとって一番されたくないこと。例えば………






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