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side A10
しおりを挟むどうしよう。
エンマには珍しく、学校から帰って小一時間、まだ制服のままでいた。
このまま私服に着替える?それともシャワーを使う?くおんの家に行くなら、そろそろ出ないと夜遅くなる。
まあ、多少遅くなっても大して困ることはない。エンマの母は保険の仕事をしていて、いつも夜遅いし夕食を作るのはエンマの担当だ。とりあえずエンマは味噌汁を作り、肉をあとは焼くだけという程度に味をつけた。さて。
さて……。
自分が女の子だったら、こんなことで悩まなくていいんだろうなと思う。そのままふらっと行ってもなんとかなるんだろう、たぶん。下心があろうとなかろうと……下着を気にするくらいか。
こっちが男になると話が違う。準備していなければ相手がその気になってもできないし、準備をばっちりして行けばあんまりにも露骨じゃないか。セックスしに来ましたって言ってるみたいだ。
「おう。遅かったな」
相変わらず鍵のかかっていない部屋の扉を開けると、くおんが定位置(ソファの前)であぐらをかいて、珍しくノートパソコンで何かしていた。
「何してんの?」
「レポート。溜まってきてさ」
「うわー、大学生ってかんじ。見慣れねえ」
「おまえもそろそろ志望校とかそんなんじゃねえの?」
「うちは金ねーから。くおんのとこ一択だから。落ちたら就職」
「へー、もう決まってんだ。後輩になんのかあ……」
まず受験だからと言いながらくおんの頭越しに画面を覗いてみる。化学らしい。急にくおんが画面を見ていたエンマの横顔にキスした。
「うわ」
「ちょっと待ってろ。あと結論だけだから」
ソファに座って漫画を読む振りをしてくおんを背中から見る。さらさらさらとキーを叩く軽い音が聞こえる。
「速い」
「何が」
「文字打つの」
「慣れ」
「俺できねーわ」
「パソコン持ってないんだもんな」
「うん。できる気がしねー」
「慣れる。パソコン買ったらネトゲでもしてみろ。必要に駆られて覚えるから」
しゃべる間にも、画面に次々と文字が浮かんで増えていく。こういうくおんを初めて見る。
「はい終わり。こんなもんで」
最後にカチカチとマウスを動かして、くおんはパソコンを閉じた。
「あー!なんかかっこいい。早く大学生になりてー!受験の年すっとばして大学生になってねえかなー」
「俺も三年とき思ったわ。まー、待ってっから」
床に座っているくおんが、ソファの上のエンマを手招きする。エンマが顔を寄せると、そのままくおんに床に引きずり下ろされてしまった。
「もう大丈夫なん?」
「何が」
「ケツ」
「あのさー、それもうちょっと言いようねーのかよ。スゲー嫌なんだけど」
「なに。アナル?」
「それもヤダ……けつの方がマシに思えてきた」
「だろ。で、どうなん?」
「うん。もうなんともねーわ」
「格段に元気そうだもんな。言っとくけど金曜日おまえ死んでたから。顔が」
足を軽く組んだまま寝そべっているくおんの上にエンマが馬乗りになっている。くおんの体の、呼吸や筋肉の微細な動きが伝わってくる。
チョイチョイとくおんが指でエンマを招くので、エンマがくおんの肩に手を置いて顔を寄せると、案の定頭を捕まえられてキスされた。
もう片方のくおんの手がエンマの腰に添えられている。ただそこにあるだけなのに、そこから何かむずかゆいような、ゾクゾクする何かがこみ上げてきて、エンマは思わずその手に手を重ねた。
「この手……」
「なんもしてねーだろ」
「……」
「え?感じてんの?」
「…ねーよ」
説得力がないのはわかっていた。息が上がってきているし、何よりあれが反応してきている。服越しでもくおんにわからないはずはない。
「つかまれ」
「え?」
「こう、ガッと」
くおんがエンマごと体を起こし、肩の上から抱きしめるように首に手を回した。エンマはその通りにくおんに抱きつく。すると、くおんはエンマをそのままひょいと抱き上げてしまった。
「ちょっ……」
あれよという間に隣の部屋のベッドの上に乗せられ、服の中を弄られる。息つく暇もないキス。
「ダメか?」
くおんも息があがっている。焦れているのがわかる。心臓が一瞬縮み、一気に膨らむ。
「ダメ……」
あれ、俺これ。
「じゃない……」
「フェイントすんなよな」
くおんは言いながら下着ごと服を脱ぎ捨て、エンマの服を脱がした。ほとんどひっぺがすという勢いだった。
先週と違って、慣らすのももどかしそうでぎこちなかったが、やはり二度目のせいか今回は解れるまでさほど時間がかからなかった。ただ、気が急いているのか中々入らない。
「悪り……」
くおんは何に詫びられたのかわからずにいるエンマをひっくり返すと、膝をつかせて後ろから入れた。
「いっ!」
「ごめ……」
「……う……」
後ろから入れられると深くまで入る。エンマは苦しさと快感でシーツを強く掴んだ。ストロークが長いので、いいところを長く攻められる。膝が震えて崩れそうになる。何もわからないし考えていられない。くおんが動くたびに何度も何度も波が来る。自分が何か別なものになってしまう。
すごい。すごく気持ちいい。
「あ…いっ…く…」
エンマが自分の両腕に顔を伏せて声を絞り出すと、もっと激しくなった。やばい……
「うあ…は……やば…も…う…」
パタパタっとエンマのものの先から液体が溢れた。
「っは……」
くおんがゆっくりと引き抜く。エンマはそのままベッドに崩れ落ちる。すごい。やばい。溶ける。
見るともなくくおんを見ると、コンドームの口を縛ってぽいとゴミ箱に捨てるところだった。エンマは少しほっとした。くおんもいけたのがわかったからだ。
「シャワー浴びてきな」
くおんがエンマの視線に気づいて言った。エンマはまだおっくうだったが、ベッドから降りてみた。そして気づいた。
「うわ!なんかゴメン……」
シーツが至る所濡れていた。顔を埋めていたところ、腹の下あたりだったところ、膝をついていたところ……涙、唾液、精液、ローション。
たぶん前回もそうだっただろう。自分のことしか見えていなかった。
「……ホントごめん……」
「あのな、シーツなんか替えたらいいんだよ」
くおんがエンマの頭をポンと叩いた。
「とっととシャワー浴びてこいよ。俺も浴びるんだから」
エンマがシャワーから出ると、もうシーツが変わっていた。入れ違いにくおんが入る。
「はぁ……」
俺が、ぜんぜん気がつかなかったのに……くおんは文句の一つも言わなかったわけだ。
自分ばっかり痛いの苦しいのと思ってたけど。
「ん?どうした?大丈夫か?」
烏の行水という程度で出てきたくおんを目の前にして、エンマは改めて申し訳なく思った。
「痛かった?」
「痛くなかった。今日は体はぜんぜん。てか、ほんと、いろいろ汚してゴメン…」
「そんな気にすんなって。別にお前だけで汚してるわけでもねーし」
「いやー、こんなになってる自覚なくて」
はあー……とエンマがため息をつくと、くおんがプッと吹き出した。
「スゲーしょんぼりすんのな」
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