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「クオンくんはさー」
四か月に一回の棚卸しだった。この日は店長とくおんとエンマの3人でやる。今回は海外ドラマとOVAの棚。エンマが通常業務で、店長とくおんが棚卸し。
「付き合ってる人とかいるのー?」
店長が女子高生みたいなノリで聞く。
「いますよ」
「やっぱりいるんだー。どんな子ー?」
「普通ですよ。まあ、カワイイ系すかね」
「芸能人で誰に似てるとか?」
「俺芸能人あんまり知らないんで。あー、強いて言うなら白根れんかすかね」
「えー!最高じゃん!いいねー」
……そうなんだよな。
くおんは高校からの彼女と遠恋している。俺にはどうしようもない。俺がどんなにくおんに引かれていても、俺にはくおんを引き付けることができない。
彼女さんが俺のことを知ったら傷つくんだろうか?
このあたりのことを考えると頭がごちゃごちゃしてくるから、普段はあまり考えないようにしている。今日は勝手に耳に入ってくるのでつらい。
「二人で出かけたりとかするの?」
「いや、そういえば滅多にしないすね。こないだちょっと出かけたくらいで。なかなか都合合わないですしね」
「土日とかは?あ、クオンくんがバイト出てるかあ。たまに休んでいいんだよー。ね、エンマくん」
「……そっすねー」
「あーでも、エンマくん今年いっぱいで辞めちゃうんだよね。新しい人募集してるから、その人に土日入ってもらおう!」
二人は二十二時に店長だけを残して帰る。自転車の鍵を探しているとくおんが声をかけてきた。
「辞めんの?」
「言ってなかったっけ」
「なんで?」
「受験生なるから」
「そっか。そうだよな」
「……」
「おいどうした?なんかしょげてる?」
大丈夫と言いかけて、くおんのスマホのバイブが鳴る。ぜんぜん大丈夫じゃない。
くおんが画面を確認している間に手を振って自転車に乗る。話してるところを見たくない。どうしてこんなことで落ち込むんだ。自分でもわからない。
家に着くと、スマホにメッセージが来ていた。くおんからだった。
「今度遊びに行くべ。受験生なる前に」
六文字以上のメッセージ珍しい。俺がしょげてたからかなー……。
単純に嬉しくなってしまう。ほんとバカだ。
自分がくおんのことばかり考えていると自覚してから、あまりセックスが楽しめなくなった。
やればやったで気持ちいいし、くおんもそれは好きらしい。何よりしてる最中はすごく満たされた気分になれる。
でも終わった後の虚しさが倍増するようになった。これはどういう意味の行為なんだろうなって。
性欲の発散?友情の延長?前から漠然と考えていたことが、最近耐え難いレベルで俺を落ち込ませる。でもそんなことを、面と向かってくおんに言う勇気はない。じゃあやめるかってなるのが怖い。
「えー、それでは、宮内エンマくんの送別会と佐藤トモヒロさんの歓迎会と忘年会を兼ねましてー」
十二月二週目の水曜日だった。店長がもろもろの会を兼ねて飲み会を開いてくれた。とはいうものの、くおんとエンマは未成年なので食べるだけ。
新しく入った佐藤さんは二十五歳で、レンタルショップでも働いた経験のある人だった。ノリの良い人で、引き継ぎも簡単で楽だった。
「エンマくんは来年受験なんだよね。がんばってな」
「ありがとうございます。ほんとお世話になりました」
「えー、若いなあ」
こういうのって慣れない。店長には感謝してるし気持ちは嬉しいけど、仕事から離れると何を話したらいいのかわからない。
「クオンくんもエンマくんがいなくなったら大変だと思うけどがんばってな」
「がんばりまーす」
「クオンくんには白根れんか似の彼女がいるんだよ!うらやましいよねー」
「えぇー!うらやましいなあー!よっ!イケメン!どこで出会うの?友達紹介して!」
「いや……」
くおんがちらっとエンマを見た。なんだよ。今更気ぃ使うなよ。エンマは少しくおんをいじめてやりたくなった。
「苫渕さんて、今まで何人くらい彼女いたんすか?すげー泣かせてそう」
「お。気になるナァー!」
「……え。俺かなり回転早いんで覚えてないんすよね。中二くらいから年二人くらいで十人くらいじゃないすか」
「……」
エンマは聞いたことを後悔した。自分で傷ついてどうする。
「すごいねー、一番長くてどれくらい?」
「それは今付き合ってるやつかも。半年以上行ったから俺の中では新記録すね」
ぐりぐり傷口が抉られる。完全に墓穴。
「これまでなんでそんなに回転早かったの?」
「なんすかね?なんとなく疎遠になるパターンが多くて。うーん、何考えてるかわかんない、はよく言われたかな」
わかる……。俺彼女じゃないけど。
「あとデリカシーないとか返事短すぎとかですかね」
全部わかる!
「く……くくっ」
「エンマくんが爆笑してる!エンマくん、クオンくんが来てから随分明るくなったんだよお。前はちっともしゃべらなかったんだから!」
「……そっすか…」
「……笑いすぎじゃね?」
「だって……」
二人で駅に向かって歩いていた。店長と佐藤さんは飲める者同士で二次会に行った。
「なんかスゲーわかっちゃってさ。返事短いとかさ」
「用件さえわかりゃいいだろ」
「用件すらない時あんじゃん。ちゃんとした彼女にもああなんだなーって」
「そりゃそうだろ」
久々に来る街中は、クリスマスのイルミネーションでそこらじゅうがピカピカ光っていた。
「バイトギリギリまで入るんだっけ」
「うん、でも佐藤さんがもう入ってくれるんで……えーと、二十九が最後かな」
「水曜日、来いよ」
「ん?」
「バイト終わっても水曜日うちに来いよ」
「うん」
四か月に一回の棚卸しだった。この日は店長とくおんとエンマの3人でやる。今回は海外ドラマとOVAの棚。エンマが通常業務で、店長とくおんが棚卸し。
「付き合ってる人とかいるのー?」
店長が女子高生みたいなノリで聞く。
「いますよ」
「やっぱりいるんだー。どんな子ー?」
「普通ですよ。まあ、カワイイ系すかね」
「芸能人で誰に似てるとか?」
「俺芸能人あんまり知らないんで。あー、強いて言うなら白根れんかすかね」
「えー!最高じゃん!いいねー」
……そうなんだよな。
くおんは高校からの彼女と遠恋している。俺にはどうしようもない。俺がどんなにくおんに引かれていても、俺にはくおんを引き付けることができない。
彼女さんが俺のことを知ったら傷つくんだろうか?
このあたりのことを考えると頭がごちゃごちゃしてくるから、普段はあまり考えないようにしている。今日は勝手に耳に入ってくるのでつらい。
「二人で出かけたりとかするの?」
「いや、そういえば滅多にしないすね。こないだちょっと出かけたくらいで。なかなか都合合わないですしね」
「土日とかは?あ、クオンくんがバイト出てるかあ。たまに休んでいいんだよー。ね、エンマくん」
「……そっすねー」
「あーでも、エンマくん今年いっぱいで辞めちゃうんだよね。新しい人募集してるから、その人に土日入ってもらおう!」
二人は二十二時に店長だけを残して帰る。自転車の鍵を探しているとくおんが声をかけてきた。
「辞めんの?」
「言ってなかったっけ」
「なんで?」
「受験生なるから」
「そっか。そうだよな」
「……」
「おいどうした?なんかしょげてる?」
大丈夫と言いかけて、くおんのスマホのバイブが鳴る。ぜんぜん大丈夫じゃない。
くおんが画面を確認している間に手を振って自転車に乗る。話してるところを見たくない。どうしてこんなことで落ち込むんだ。自分でもわからない。
家に着くと、スマホにメッセージが来ていた。くおんからだった。
「今度遊びに行くべ。受験生なる前に」
六文字以上のメッセージ珍しい。俺がしょげてたからかなー……。
単純に嬉しくなってしまう。ほんとバカだ。
自分がくおんのことばかり考えていると自覚してから、あまりセックスが楽しめなくなった。
やればやったで気持ちいいし、くおんもそれは好きらしい。何よりしてる最中はすごく満たされた気分になれる。
でも終わった後の虚しさが倍増するようになった。これはどういう意味の行為なんだろうなって。
性欲の発散?友情の延長?前から漠然と考えていたことが、最近耐え難いレベルで俺を落ち込ませる。でもそんなことを、面と向かってくおんに言う勇気はない。じゃあやめるかってなるのが怖い。
「えー、それでは、宮内エンマくんの送別会と佐藤トモヒロさんの歓迎会と忘年会を兼ねましてー」
十二月二週目の水曜日だった。店長がもろもろの会を兼ねて飲み会を開いてくれた。とはいうものの、くおんとエンマは未成年なので食べるだけ。
新しく入った佐藤さんは二十五歳で、レンタルショップでも働いた経験のある人だった。ノリの良い人で、引き継ぎも簡単で楽だった。
「エンマくんは来年受験なんだよね。がんばってな」
「ありがとうございます。ほんとお世話になりました」
「えー、若いなあ」
こういうのって慣れない。店長には感謝してるし気持ちは嬉しいけど、仕事から離れると何を話したらいいのかわからない。
「クオンくんもエンマくんがいなくなったら大変だと思うけどがんばってな」
「がんばりまーす」
「クオンくんには白根れんか似の彼女がいるんだよ!うらやましいよねー」
「えぇー!うらやましいなあー!よっ!イケメン!どこで出会うの?友達紹介して!」
「いや……」
くおんがちらっとエンマを見た。なんだよ。今更気ぃ使うなよ。エンマは少しくおんをいじめてやりたくなった。
「苫渕さんて、今まで何人くらい彼女いたんすか?すげー泣かせてそう」
「お。気になるナァー!」
「……え。俺かなり回転早いんで覚えてないんすよね。中二くらいから年二人くらいで十人くらいじゃないすか」
「……」
エンマは聞いたことを後悔した。自分で傷ついてどうする。
「すごいねー、一番長くてどれくらい?」
「それは今付き合ってるやつかも。半年以上行ったから俺の中では新記録すね」
ぐりぐり傷口が抉られる。完全に墓穴。
「これまでなんでそんなに回転早かったの?」
「なんすかね?なんとなく疎遠になるパターンが多くて。うーん、何考えてるかわかんない、はよく言われたかな」
わかる……。俺彼女じゃないけど。
「あとデリカシーないとか返事短すぎとかですかね」
全部わかる!
「く……くくっ」
「エンマくんが爆笑してる!エンマくん、クオンくんが来てから随分明るくなったんだよお。前はちっともしゃべらなかったんだから!」
「……そっすか…」
「……笑いすぎじゃね?」
「だって……」
二人で駅に向かって歩いていた。店長と佐藤さんは飲める者同士で二次会に行った。
「なんかスゲーわかっちゃってさ。返事短いとかさ」
「用件さえわかりゃいいだろ」
「用件すらない時あんじゃん。ちゃんとした彼女にもああなんだなーって」
「そりゃそうだろ」
久々に来る街中は、クリスマスのイルミネーションでそこらじゅうがピカピカ光っていた。
「バイトギリギリまで入るんだっけ」
「うん、でも佐藤さんがもう入ってくれるんで……えーと、二十九が最後かな」
「水曜日、来いよ」
「ん?」
「バイト終わっても水曜日うちに来いよ」
「うん」
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