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六話 のんびりとした日々
しおりを挟むユリは行くとこもないといってちゃっかり塔に住み着いた。
まぁ、一人は寂しいし許してやる。
ゲームの世界観的に大魔法使いは恐怖の的らしく、人々から恐れられていた。
そんな僕は気軽に村に降りることもできず、森のなかに引きこもっていた。
「ノアー、今日は鴨肉が食べたいんだけど」
「わがままなスライムだなぁ…じゃあ狩りに行く?」
森の生活は基本自給自足だ。
しかし、ユリもいるし、魔法も使えるので不便なことはあまりない。
大魔法使いはあまり食事しなくても生きていけるらしいのも幸いだった。
「そーいや、あの勇者が魔王倒したらしいよ」
森で鴨いるスポットに向かう道中、ユリがそんなことを言い出した。
「え、そうなの?どこ情報それ?」
「スライムのコミュニティ情報」
スライムにはコミュニティがあったらしい。
ならそっちのコミュニティに混ざれよ。
「ちなみに倒されたの6年前って」
「6年前!?ちょ待って…勇者来たの何年前…?」
「ぴったり10年前だよ。まったく…おじいちゃんになると歳の流れが早いって本当だったんだね」
いや、僕は前世の年齢足してもまだ二十代なんですが…
体の年齢に心の年齢は引っ張られてしまうのか。
いやでも、大魔法使いがうん百年生きてるとはいえ、身体はぴちぴちの美青年だからな…
大魔法使いの体は老けないらしく、また、ユリも身体は擬態してるだけなのでもちろん老けないので、時間感覚が失せて10年もあっという間に過ぎてしまった。てへ。
「魔王がいなくなって、魔物の統率が取れなくて大変みたい。この森は聖域だから魔物は入ってこれないけど…人間界は大変かもね」
「へぇ…ここって聖域なんだ」
「……お前が結界張ってるから聖域になったんだけど…?」
じとーっとした目でユリがこちらを見る。
「あー…そうだったっけ?ほら、僕もうおじいちゃんだからさっ…昔のことは忘れちまったわい。ははは…」
「はぁあ…俺が介護してあげてるんだから感謝してよねぇ」
「誰が介護じゃい」
魔王を倒すとそんな悪影響があったなんて…
ゲームじゃ城に戻ってお姫様と結婚して終わりだったからな。
「あ、おいノア、いたぞ」
ユリが僕の服の裾を引いた。
ユリの指差す方を見ると、そこには鴨がいた。
こちらに気づかれないうちに仕留めなくては。
僕は杖を構えた。
いつも通り杖を振る。
すると鴨の真上に網が現れて、鴨を覆った。
「おぉ…ほんとに上手くなったな」
「10年練習すれば上手くなりますよ」
「…10年、ねぇ…」
鴨は網の下でジタバタとするが抜けられない。
可哀想だが生きていくには仕方ないのだ。すまん。
僕は鴨を持ってきていた袋に詰めた。
「一匹でいいよね?」
「うん」
森の中とはいえ、ごく稀に勇者みたいに人間が入ってくることもあるので長居はしたくない。
僕たちはさっさと塔に戻ることにした。
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