大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。

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Another story カイトside

二話

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 やってしまった。

 僕は絶望した。

 僕が誰よりも愛しているその人はベッドの上で気絶している。

「僕は、なんてことを…」

 正気に戻ると、大変なことをしてしまった思う。

 唐突に別れを告げられて、何も考えられなくなってしまった。
 そして、怒りや悲しみ、やるせなさばかりが溢れて来てあんなことをしてしまった。

「ノアさん…」

 ノアさんの頬は涙に濡れている。
 ノアさんがこんなに泣いているところは見たことがなかった。

 とりあえず中に出したものをきれいにしないとと思って後処理をした。



 処理を終えてノアさんをベッドに寝かせて布団をかけたとき、部屋に誰かが入ってきた。
 誰か、といってもこの塔にいるのは僕とノアさんとあと一人だ。

「ついに手ぇ出しちゃった感じ?」
「ユリさん…」
「合意…じゃないよね」

 ユリさんは僕にずかずかと近づいてきて、僕の頬を張った。

「やって良いことと悪いことがあるでしょうが」
「……すみません」

 じんじん頬が痛むけど、それ以上に胸の痛みの方が辛かった。

「…ノアに言われたの?出てけって…」
「はい」
「そっか…」

 ユリさんは無表情で僕を見つめた。

「お前はどうすんの?」
「え…?」
「出てくの?ここに居座るの?」
「そ、れは…」

 そんなの、ここにいたいに決まっている。でも…

「僕は、ノアさんを傷つけてしまいました…」
「うん」
「もうここにいる資格はないと思います」
「じゃあ」
「はい、出てきます。ここから…」

 ノアさんともユリさんともずっと一緒に居たい。
 二人は僕にとって親であり、そして愛する人だ。
 でもそんな関係を壊したのは他ならぬ自分。

「そんな顔するなよ…」

 ユリさんが顔を歪めて、僕の頭を乱暴に撫でた。

「……いつか、帰ってこいよ」
「え?」
「ノアはさ、お前をここに縛りつけるのが嫌なんだって言ってた。だから…もし、お前が外に出て、外の世界を見て、それでもここに居ることを、ノアといることを選んだら……そのときは、ノアもお前の気持ちを受け入れてくれるかもしれないから」

 はぁ…とユリさんは深いため息をついた。

「俺もさ、お前に情が移っちゃったんだよ…もう二度と会えないのは、寂しい…」

 ユリさんはいつも飄々としてる人だから、こうして感情的になっているところは見たことがなかった。

 この人もこんなに僕のことを大事に思ってくれていたんだと、胸が熱くなった。

「ユリさん…僕、絶対戻ってきます。戻ってきて、しっかりあの人を大切に愛します」
「うん…」

 ノアが起きちゃうから、俺はもう行く、
 そう言ってノアさんは部屋から出て行った。

 僕は荷造りをして、それからずっと焼き付けるようにノアさんの寝顔を見ていた。
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