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僕はここだよ
しおりを挟むかすかに、遠くからミカエルの声がした。
「っ…ミカエル!!ぼくはここ!!!」
そう叫ぶと声が返ってきた。
「ユキ!!」
下を見るとやっぱりミカエルがいた。
(やっぱり、助けに来てくれた…!)
泣きそうになるけど、いまは泣く時じゃない。
いますぐにも鍵は開いてあいつらが入ってくる。
「ミカエルっ…」
「ユキ!」
ミカエルは窓から乗り出す僕を見つけるとばっと両腕を広げた。
ただそれだけだったけど、それで充分だった。
あんなに怖かったのに、僕はあっさりと窓から飛び降りた。
頭から真っ逆さま。
どんどん地面が近づくけど怖くなかった。
ミカエルが受け止めてくれると分かっていたから。
地面に落ちる前に僕の身体は風魔法でふわっと浮かんで、ミカエルの腕の中に収まった。
「っ…ミカエル!!」
「よかった…無事で」
ぎゅっと僕はミカエルに抱きついた。
ぶわっと涙が込み上げてきて、今度は耐えられなくて瞳から溢れ出た。
「ミカエル、僕お前のこと好き…本当に、愛してるの…」
「ユキっ…」
「感動の再会中悪いが、まだパッピーエンドには早すぎるぞ」
フィリップに言われて顔を上げると周りを何人かの男に囲まれていた。
それを見て、すん、と涙も引っ込んでしまった。
「ミカエル、僕の背中にかけられてる魔法陣解ける?」
「魔法陣?……はい。でも重ねがけされてるので、マリウスの魔法陣も同時に消えてしまいます」
「いいよ、消して」
僕を抱いていたミカエルの手がそのまま背に滑り、魔法陣を解いた。
魔力が身体を巡るのがわかる。
「自分の恨みは自分で晴らすよ」
ユキの家系は天気を操るのに秀でている。
もちろん天気は雪だけとは限らない。
「痛い目あってもらうよ」
ユキは全魔力を使って男たちに雷を落とした。
視界が真っ白になった後、あたりにはまるこげになった男達が転がっていた。
「すげー…」
フィリップが呆然としてそう言った。
「早く逃げよう、まだなかにもあいつらがいるかもしれないから」
ユキとミカエルとフィリップはこうして無事、誘拐犯から逃げ出した。
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