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42-お仕置きプレイも試しましょう。
指先から顔をあげ、大悟の瞳を覗き込みながら言葉を続ける。
「浅はかだった昔の俺を、簡単に許してもらえるとは思ってない。でも、大悟がつらそうなのは嫌だし……俺は、大悟の隣で笑っていたいよ」
そのためには、大悟に、あの痛くて激しい感情とどうにかして折り合いをつけてもらうしかないんだ。
「なんでもする。大悟が俺の過去を受け入れられるように、俺にも手伝わせてくれ」
そうして改めて「大悟はどうしたい?」と尋ねた。
「なんでも?」
大悟がこつんとおでこを合わせてきて、囁くような頼りなげな声で訊いてくる。
「うん、なんでも」
ハッキリきっぱり請け負った。必ず大悟の苦痛を取り除いてやる。
「俺、ゆきなりの全部が欲しい」
「ぜんぶ?」
「ゆきなりの過去も、いまも、これから先の未来も全部」
いつの間にか、両手で包み温めていた大悟の手は、俺と変わらない温度になっていた。その手で手首をがしりと掴まれる。
いまと未来はもちろんいいとして。
「俺の過去って」
どうやって……。
「ゆきなりの昔のこと、全部知りたい。ほかのやつらとしたこと全部、俺ともしてほしい」
掴まれた手首を引きあげられて、大悟の脚の間に膝立ちにさせられた。もう一方の手がするりと背中へとまわってくる。お互いのペニスがすっかり静かになり寂しく感じてたところへ、抱き寄せてもらえたのがうれしかった。
「したこと全部って、セックスのことだよな?」
両手を大悟の肩に置くよう導かれながら見あげてくる大悟に問いかけると、きつい視線で『そうだ』と肯定された。触れ合った場所から大悟の気持ちが伝わってくるみたいで、なんだか痛い。
大悟の願いを叶えたい。そのことに嘘はないけど……。
「困ったな」
「なにがだ?」
「それが、あまりよく覚えてないんだよね。大悟とのセックスが濃厚すぎて。なんか、いままでのセックスが霞んじゃったみたいでさ」
いまの俺の頭のなかにあるセックスイメージは、大悟としたものばかりだ。えっちしたいと思い浮かべる相手が大悟だけなんだから、当然といえば当然の話だけど。
「したこと全部と言われても、ごく普通のセックスだったような……うーん、どうだったかな」
ぶつぶつとつぶやきながら考え込んでたら、
「ストップ」
と言われて両耳を塞がれた。
「わかった。もういいから」
耳を塞いだ手をそのままに大悟が俺の頭を抱き寄せるようにするから、姿勢が真下へと崩れてその場にぺたりと座り込んでしまった。
「え、いいの?」
「ああ、もういい。そのまま思い出さないでいてくれ」
『いい』というわりに口調は苦めだ。俺を射抜いてくる真剣な眼差しから察すると、本当はいいわけじゃなさそうなんだけど。
まあ、俺もそのほうが助かるから深追いはしないでおこう。もしいま過去のセックスを思い出してしまったら、大悟でいっぱいの頭のなかに不純物が混ざるような気がして、本当は嫌だったんだよな。
「じゃあ、どうする?」
「『なんでも』って言ったよな?」
大悟が低い声で確認をしてくる。その声にほんのりと意地悪さを感じたのは、気のせいだと思いたい。
「ゆきなりの、オナニーが見たい」
「な、なにっ」
なに言いだしてんだ、この人っ。
「ときどきやってるだろ?」
『知ってるぞ』って口調で、大きな手で固定されたままの顔を覗き込まれる。
「ときどきって、まさか」
また『見てればわかる』なんて言うつもりじゃ……。
「先週はほぼ毎日やってたな」
「な、なんでっ」
なんでそんなことまで知ってんのっ!?
じわりと熱をあげ始めた頬を、大悟の親指にそろりとなぞられる。
「ゆきなりはわかりやすいんだよ。溜まってくるとそわそわするし、オナニーした翌日にはしっとりと色気づく。そわそわにイライラが加わって、塗り重ねたみたいに色気が濃くなってくると、ある日突然スカッと晴れるから」
不本意だとでも言いたげな調子で明かされたそれは、たぶん事実なんだと思う。自覚はまるでなかったけど、その流れには確かに身覚えがあった。
大悟にそこまでバレバレだったなんて。
「ずっと想像してたんだ。ゆきなりは何をしたらこんなに色っぽくなるんだろうって。なあ、ゆきなりは、どんなふうにオナニーするんだ?」
思いのほかショックを受けてる俺をよそに、大悟が今度は少しうれしそうに訊いてくる。
「ど、どんなふうって、そんなこと」
して見せるのか? 俺が、いまここで?
うっかり大悟の見てる前でひとり身悶える自分を想像してしまう。あまりの羞恥に、ぼんって音がしそうな勢いで顔に血がのぼりきった。
「あ、あのっ大悟っ」
できることなら別のことに変更してもらいたい。そう思って大悟に声をかけたら、
「『なんでも』なんだろ?」
と、希望を伝える前に釘を刺されてしまった。
いや、そうだよ。俺は大悟の望みを叶えなきゃ……。
大悟に『ゆきなりはわかりやすい』と教えられたときには、正直ゾッとした。
ずっと好きだった人から『触らないで』と言われておとなしく見守っていたら、ほかの男と性欲解消してきたのを見せつけられるだなんて……そんなの、俺ならきっと耐えられない。大悟がこの歳になるまで男同士のセックスを調べずにいたのは、そんな現実から少しでも離れていたかったからだと、いまならわかる。
大悟が言うには、先週の俺は毎日濃密な色気を垂れ流してたってことだ。そうして男漁りに行ける日を虎視眈々と狙っていた俺を、男同士のセックスについて知ってしまった大悟はどんな思いで見てたんだろう。
しかも、何年もそんな苦行に耐えてきたのに、いきなり襲われたかと思ったら『触られて困るのは気持ちよくなるからだ』と気づかされるなんて……。病室で聞いた『黙ってて後悔するのはもう嫌だから』という大悟の言葉が、胸の奥で重たく響いた。
ああ、しまった。ついさっきも、ずっと無自覚に恋してた的なことを言ってしまった。
言いなりのまま我慢してきた努力がどれだけ無駄なことだったか、好きな人に触れる権利をみすみすほかの男たちに譲ってしまっていたのだと、大悟はきっと思い知っただろう。
俺は俺なりに、そのときそのときを精一杯生きてきたつもりでいたけど、その裏では大悟をひどく傷つけてしまったんだとやっと自覚した。
つぐないたい。大悟を癒したい。心の底からそう思う。
でも……でも、オナニーをして見せるなんて。
「ほら、ゆきなり。おちんちん、さわってみせて」
「浅はかだった昔の俺を、簡単に許してもらえるとは思ってない。でも、大悟がつらそうなのは嫌だし……俺は、大悟の隣で笑っていたいよ」
そのためには、大悟に、あの痛くて激しい感情とどうにかして折り合いをつけてもらうしかないんだ。
「なんでもする。大悟が俺の過去を受け入れられるように、俺にも手伝わせてくれ」
そうして改めて「大悟はどうしたい?」と尋ねた。
「なんでも?」
大悟がこつんとおでこを合わせてきて、囁くような頼りなげな声で訊いてくる。
「うん、なんでも」
ハッキリきっぱり請け負った。必ず大悟の苦痛を取り除いてやる。
「俺、ゆきなりの全部が欲しい」
「ぜんぶ?」
「ゆきなりの過去も、いまも、これから先の未来も全部」
いつの間にか、両手で包み温めていた大悟の手は、俺と変わらない温度になっていた。その手で手首をがしりと掴まれる。
いまと未来はもちろんいいとして。
「俺の過去って」
どうやって……。
「ゆきなりの昔のこと、全部知りたい。ほかのやつらとしたこと全部、俺ともしてほしい」
掴まれた手首を引きあげられて、大悟の脚の間に膝立ちにさせられた。もう一方の手がするりと背中へとまわってくる。お互いのペニスがすっかり静かになり寂しく感じてたところへ、抱き寄せてもらえたのがうれしかった。
「したこと全部って、セックスのことだよな?」
両手を大悟の肩に置くよう導かれながら見あげてくる大悟に問いかけると、きつい視線で『そうだ』と肯定された。触れ合った場所から大悟の気持ちが伝わってくるみたいで、なんだか痛い。
大悟の願いを叶えたい。そのことに嘘はないけど……。
「困ったな」
「なにがだ?」
「それが、あまりよく覚えてないんだよね。大悟とのセックスが濃厚すぎて。なんか、いままでのセックスが霞んじゃったみたいでさ」
いまの俺の頭のなかにあるセックスイメージは、大悟としたものばかりだ。えっちしたいと思い浮かべる相手が大悟だけなんだから、当然といえば当然の話だけど。
「したこと全部と言われても、ごく普通のセックスだったような……うーん、どうだったかな」
ぶつぶつとつぶやきながら考え込んでたら、
「ストップ」
と言われて両耳を塞がれた。
「わかった。もういいから」
耳を塞いだ手をそのままに大悟が俺の頭を抱き寄せるようにするから、姿勢が真下へと崩れてその場にぺたりと座り込んでしまった。
「え、いいの?」
「ああ、もういい。そのまま思い出さないでいてくれ」
『いい』というわりに口調は苦めだ。俺を射抜いてくる真剣な眼差しから察すると、本当はいいわけじゃなさそうなんだけど。
まあ、俺もそのほうが助かるから深追いはしないでおこう。もしいま過去のセックスを思い出してしまったら、大悟でいっぱいの頭のなかに不純物が混ざるような気がして、本当は嫌だったんだよな。
「じゃあ、どうする?」
「『なんでも』って言ったよな?」
大悟が低い声で確認をしてくる。その声にほんのりと意地悪さを感じたのは、気のせいだと思いたい。
「ゆきなりの、オナニーが見たい」
「な、なにっ」
なに言いだしてんだ、この人っ。
「ときどきやってるだろ?」
『知ってるぞ』って口調で、大きな手で固定されたままの顔を覗き込まれる。
「ときどきって、まさか」
また『見てればわかる』なんて言うつもりじゃ……。
「先週はほぼ毎日やってたな」
「な、なんでっ」
なんでそんなことまで知ってんのっ!?
じわりと熱をあげ始めた頬を、大悟の親指にそろりとなぞられる。
「ゆきなりはわかりやすいんだよ。溜まってくるとそわそわするし、オナニーした翌日にはしっとりと色気づく。そわそわにイライラが加わって、塗り重ねたみたいに色気が濃くなってくると、ある日突然スカッと晴れるから」
不本意だとでも言いたげな調子で明かされたそれは、たぶん事実なんだと思う。自覚はまるでなかったけど、その流れには確かに身覚えがあった。
大悟にそこまでバレバレだったなんて。
「ずっと想像してたんだ。ゆきなりは何をしたらこんなに色っぽくなるんだろうって。なあ、ゆきなりは、どんなふうにオナニーするんだ?」
思いのほかショックを受けてる俺をよそに、大悟が今度は少しうれしそうに訊いてくる。
「ど、どんなふうって、そんなこと」
して見せるのか? 俺が、いまここで?
うっかり大悟の見てる前でひとり身悶える自分を想像してしまう。あまりの羞恥に、ぼんって音がしそうな勢いで顔に血がのぼりきった。
「あ、あのっ大悟っ」
できることなら別のことに変更してもらいたい。そう思って大悟に声をかけたら、
「『なんでも』なんだろ?」
と、希望を伝える前に釘を刺されてしまった。
いや、そうだよ。俺は大悟の望みを叶えなきゃ……。
大悟に『ゆきなりはわかりやすい』と教えられたときには、正直ゾッとした。
ずっと好きだった人から『触らないで』と言われておとなしく見守っていたら、ほかの男と性欲解消してきたのを見せつけられるだなんて……そんなの、俺ならきっと耐えられない。大悟がこの歳になるまで男同士のセックスを調べずにいたのは、そんな現実から少しでも離れていたかったからだと、いまならわかる。
大悟が言うには、先週の俺は毎日濃密な色気を垂れ流してたってことだ。そうして男漁りに行ける日を虎視眈々と狙っていた俺を、男同士のセックスについて知ってしまった大悟はどんな思いで見てたんだろう。
しかも、何年もそんな苦行に耐えてきたのに、いきなり襲われたかと思ったら『触られて困るのは気持ちよくなるからだ』と気づかされるなんて……。病室で聞いた『黙ってて後悔するのはもう嫌だから』という大悟の言葉が、胸の奥で重たく響いた。
ああ、しまった。ついさっきも、ずっと無自覚に恋してた的なことを言ってしまった。
言いなりのまま我慢してきた努力がどれだけ無駄なことだったか、好きな人に触れる権利をみすみすほかの男たちに譲ってしまっていたのだと、大悟はきっと思い知っただろう。
俺は俺なりに、そのときそのときを精一杯生きてきたつもりでいたけど、その裏では大悟をひどく傷つけてしまったんだとやっと自覚した。
つぐないたい。大悟を癒したい。心の底からそう思う。
でも……でも、オナニーをして見せるなんて。
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