恋人の望みを叶える方法

藍栖 萌菜香

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11 【ダメ見本】無理強いはいけません。

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 アナルに埋めたままだった三本の指を奥へと押し込むと、飛び出した拒絶の言葉とは裏腹に、その喉奥からは甘く蕩けた嬌声があがった。と同時に、幸成のペニスが口のなかでググッと硬く滾る。

 幸成にフェラの交渉をしているあいだも、日向にフェラの講義をしているあいだも、俺の指は幸成のアナルのなかにあった。熱く濡れたやわい感触に手を引くのが惜しくて、幸成が抜いてと言わないのをいいことに、柔肉に包まれる快感をひっそりと指先で堪能していたんだ。

 おそらく幸成も、俺の指を抜いてしまうのが惜しかったんだろう。姿勢が変わるびにその存在を意識させられていたはずなのに、拒む素振りもなく熱い溜め息を小さくこぼすだけだった。たぶん動かない指に焦れながら、その焦れったさを楽しんでいたんじゃないだろうか。

 それにしても、幸成が素知らぬ顔をしながら、ときおりひくりひくりと指を食んでくるのには悩まされた。触って弄ってと誘われて、指が疼かないわけがない。すぐさま熱い肉を捏ねたくなって堪らなくなったが、もしあのとき、まんまと流されてアナルを愛撫してしまったら、きっとフェラには辿り着けなかっただろう。
 だが、その指もやっと解禁だ。存分に幸成のなかを探索し、柔肉を味わってやる。


 腹側を向けていた手のひらを返し、指先でアナルの壁越しに背骨をなぞりながら引き返す。幸成の一番好きな場所は前立腺だが、この背面の内壁もかなりいい反応を返してくれる場所だった。いつもはぺニスでごりごりと押し込むそこを、指の腹で細かな段差も確認するようにゆうるりと撫でていく。

「ぅあ、あぁぅうぅーっ」
 震えながら尾を引いたその喘ぎには、いまにも泣き出しそうな響きが含まれていた。
 ペニスを咥えたまま幸成の脚のあいだで身を伏せ、顔だけあげて様子をうかがうと、見開いた瞳いっぱいに涙を溜めて、喘ぎの残る唇を戦慄かせながら、幸成がこちらを見つめている。俺の口元へとあてられていた視線がふいとずれて、俺の視線とかち合ったかと思えば、口をきゅっと引き結んでフルフルと首を振った。

「や、いっしょはや、」
 口ではそう言っているが、アナルをぎゅっと引き絞って、浅いところまで戻ってきた俺の指を離さないでいるのは幸成のほうだ。


 やめて、と視線でも訴えてくる幸成と見つめ合ったまま、ゆっくり頭をあげていく。深く咥えられてた幸成のペニスが、俺の窄めた唇に扱かれながら徐々に姿を現した。
 ついで、口のなかに溜まった唾液を掻き混ぜるようにして丸い亀頭を嘗め回すと、幸成が結んでいた唇をふわりと解いて、
「あ、あ、あ、あ、」
 と、緊張を孕んだ短い喘ぎ声をあげる。その喘ぎが甘く掠れるに従って、指を食い締めていたアナルもゆるゆると解けていった。

 カリの括れと裏筋とを舌の腹で大きくぞろりと撫でてやると、「ふぁあっ」と、すっかり力の抜けたような声があがる。アナルに埋めた指もやっと動かせるようになった。
 すかさずペニスを深く咥え直し、同時にぐるりと回した指を前立腺に押しあてた。

「ひ、ああああっ!」
 甲高い艶声が鳴るとともに、肩に強く食い込む指先を感じた。横目で見れば、M字が崩れたほうの幸成の手が、俺の肩先に縋りつている。もう一方の手は、抱えていた自分の脚を抱きしめていた。強く顎を引き、引き寄せた膝頭に頬を押しつけ、込み上げてくる快感を必死に堪えているようだ。


「やっ、だめっ、やっぱりやっ」
 ダメなわけがない。幸成の一番好きな場所だ。さっきもここを弄られたくて、焦れて蕩けてぽやっとなっていたじゃないか。

 もともと溜まっていた唾液に、前立腺を撫でるたびに溢れてくる先走りが加わって、たちまち口のなかがいっぱいになった。幸成のものが少しでも混ざっていると思えば、零してしまうのが惜しくなり、迷わず啜って飲み込んだ。

「いやっしまるっ、ごくんて、やめてっ」
 飲み込んだときに、喉奥で幸成のぺニスを搾ってしまったらしい。放して、飲まないでと、肩から離れた幸成の手が俺の前髪を掴んで引っ張った。

 やめてと言われると、どうしてもしたくなってしまう。あれこれ悩んだが、これはもう、意地悪だとかなんだとかじゃなくて、幸成が可愛いのがいけないと思う。いやだと拒む様も、やめてと縋る様も、もっと見ていたくなるほど可愛くて堪らない。


 当然のように、可愛い姿をもっと見たい欲が勝ち、髪を引かれ痛むのも構わずに、嚥下を繰り返しながら前立腺を撫で続けた。すると、とうとう残っていたM字の片側も崩れてしまい、シーツへと着いた幸成の足がググッと踏ん張った。

「あッ、ああぁぁあっ」
 ひと際高い嬌声に続いて、幸成の腰が高くあがる。つられた俺も幸成の動きに合わせて上体を起こした。位置が変わったせいで、幸成のぺニスが俺の喉を突き、前立腺にあった三本の指先はさらにその向こうへと入り込む。

「いやっだめっだめだめぇッ」
 幸成には何が起こるかわかっていたようだ。必死の様子で俺の頭を押しやろうとしている。
 そうはいくかと幸成のペニスに吸いついていると、幸成の背が撓り、腹が波打った。続け様に指先へコリッとした圧を感じたかと思ったら、ペニスの芯を小さな波がぴゅるるっとあがってくる。

「あぁっやぁあああっ!」
 喉奥を打つ飛沫は、わずかに苦いだけだった。先ほどと同じで、たいした量はない。口のなかに溢れた精液混じりのそれを、俺はなんの抵抗もなく、というか、むしろ喜んで飲みくだした。


 数瞬のあいだ反ったままだった背が、シーツへぱたりと沈み込む。その拍子に咥えていたペニスが口から抜けてしまったが、喉を通りすぎたそれの感触と、口のなかに残る後味とを堪能中だったので、あとは追わないでおいた。

 脱力し、荒い呼吸に胸を上下させている幸成が、俺を睨みながら「うぅー」と唸っている。その声はおおいに不満げだった。
 対して俺は、散々いやだだめだと拒まれてのことだったが、大変満足していた。

 だいたい幸成は、自分ばっかりズルいんだ。いつも俺の精液を嬉しそうにアナルで飲み込むくせに、俺が幸成の腹に散った精液を舐めようとしても、強く拒んで許してもらえた試しがない。

 念願のフェラに、わずかだったが精液飲みまで果たすことができた。だから、
「ばかっ。もぉ、だいごの」
 ばかばかばかっ、と可愛く詰られても、痛くも痒くもない。

 俺が、にやける口元を手で隠しながら、その愛らしい詰りを鑑賞していると、
「もおっ、俺もやるっ!」
 と、幸成が憤った声とともに勢いよく起き上がり、俺の肩を突いて押し倒してきた。そのせいで、アナルに残しておいた俺の指も抜けてしまったが、幸成はそれも気にならないくらい怒ってるみたいだ。


「無理しなくてもいいぞ?」
「無理じゃないっ」
 どうやら意地になっているようだ。唇を尖らせながら俺の上に伸し掛かってきたが、そんな怒気もやはり可愛いとしか思えない。だから宥めることなく、幸成の好きにさせていた。

 そうして、幸成が俺のガウンを左右にひらき、猛った屹立に手をかけようとしたときだった。
「ぅわ、でか……」
 それまで黙っていた日向が、ぼそりとつぶやいた。
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