12 / 49
成長
4
しおりを挟む
ジョンがカップを片づけている間にも、私はじっとアレクの姿を見つめていた。
怖がっている様に見える、でも私を怖がっていると言うより何かが私にバレるのが怖いと言うような顔に見える。
……そう気づいてから改めてアレクを見てみると、なんだか立ち方がおかしい。
片足を庇っているような?
「ジョン、ちょっと」
手招いて耳打ちをひとつ。ジョンは息を呑むとアレクに目をやり、すっと彼の傍へ。
「アレク、ちょっとじっとしていてください」
ジョンの言葉にアレクは逃げ出したいというような目をしたが、肩に手を添えられ諦めたようにされるがままになる。
するりとジョンがアレクのズボンの裾を少し捲った。次いで上着も少しだけ。
二人で目を見張る。そこにあったのは大きな打撲の跡。さらに調べてみると背中にも、脇腹にも、太ももにもあった。巧妙に服で見えない部分に残っているそれに、私は怒りで目の前が赤くなった。
訓練でついた物とは到底思えなかった。
「ごめんなさい! 違うんです! 俺、俺が、あんまりちゃんと出来ないから、だから、ダビッド先生が俺のために、教えたことを忘れないようにって」
すぐに服を戻し、アレクはその傷を隠す。私は込み上げてくる怒りを抑え込み、口を開いた。
「アレク、そこに座りなさい」
長椅子を手で示すが、アレクは震えながら謝るばかり。
「ご、ごめんなさい、ユリア様」
「謝る事はないわ、なんにも謝ることなんてないのよ」
謝るのはこっちのほうだ。もっと早く気づかないといけなかった……。
ずっと隠していたんだろうに。
「ジョン、傷薬を」
「こちらにお持ちしております」
魔法では直接傷を癒すことは出来ない。こんな時こそ、魔法でパッと痛みをなくしてあげたかったのに。せめて特製の傷薬が効いてくれる事を祈るしかない。
「アレクの治療をお願いするわ。私はちょっと出てくるから」
私の思いとユリアの思いは、今日この時に限っていえば完全に一つだった。
「すぐに戻るわ」
「お戻りをお待ちしております」
ジョンの声も、今日は少しだけ震えていた。
怖がっている様に見える、でも私を怖がっていると言うより何かが私にバレるのが怖いと言うような顔に見える。
……そう気づいてから改めてアレクを見てみると、なんだか立ち方がおかしい。
片足を庇っているような?
「ジョン、ちょっと」
手招いて耳打ちをひとつ。ジョンは息を呑むとアレクに目をやり、すっと彼の傍へ。
「アレク、ちょっとじっとしていてください」
ジョンの言葉にアレクは逃げ出したいというような目をしたが、肩に手を添えられ諦めたようにされるがままになる。
するりとジョンがアレクのズボンの裾を少し捲った。次いで上着も少しだけ。
二人で目を見張る。そこにあったのは大きな打撲の跡。さらに調べてみると背中にも、脇腹にも、太ももにもあった。巧妙に服で見えない部分に残っているそれに、私は怒りで目の前が赤くなった。
訓練でついた物とは到底思えなかった。
「ごめんなさい! 違うんです! 俺、俺が、あんまりちゃんと出来ないから、だから、ダビッド先生が俺のために、教えたことを忘れないようにって」
すぐに服を戻し、アレクはその傷を隠す。私は込み上げてくる怒りを抑え込み、口を開いた。
「アレク、そこに座りなさい」
長椅子を手で示すが、アレクは震えながら謝るばかり。
「ご、ごめんなさい、ユリア様」
「謝る事はないわ、なんにも謝ることなんてないのよ」
謝るのはこっちのほうだ。もっと早く気づかないといけなかった……。
ずっと隠していたんだろうに。
「ジョン、傷薬を」
「こちらにお持ちしております」
魔法では直接傷を癒すことは出来ない。こんな時こそ、魔法でパッと痛みをなくしてあげたかったのに。せめて特製の傷薬が効いてくれる事を祈るしかない。
「アレクの治療をお願いするわ。私はちょっと出てくるから」
私の思いとユリアの思いは、今日この時に限っていえば完全に一つだった。
「すぐに戻るわ」
「お戻りをお待ちしております」
ジョンの声も、今日は少しだけ震えていた。
0
あなたにおすすめの小説
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~
ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。
彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。
――死んだはずの彼女が、生きている?
同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。
「今さら、逃げ道があると思うなよ」
瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。
秘された皇子と、選び直した愛。
三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?
* * *
後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる