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急成長
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でも馬車は健在だった。私はほっと息を吐き、続けて馬車の前方へ転移しようとした次の瞬間、ぽっ、と白い馬車に赤い色が散った。
「え?」
それは、一瞬で大輪の花のように広がり馬車を包む。赤い色は炎の色だった。
私は慌てて近くに転移するが、馬車は大きな炎を上げながら馬と共に倒れ込む。
御者が森の中に投げ出されるのが見えたが、そちらは木々がクッションになり、気を失っている以外に問題はなさそうだ。
「ジョン!」
馬車に駆け寄りながら魔法を展開する。一瞬で炎を氷で押さえ込み、私はドアを蹴破った。
その先で額から血を流したジョンの姿を見つけ、魔法で浮かせなんとか外へ引っ張り出す。
「……ユリア様、いけません、早く逃げてください」
「いいから黙ってなさい!」
一刻も早く城へ戻り治療をしなくては、そう焦る私の首筋に、ひたりと冷たい物が押し付けられた。
「あなたが、やったの?」
私は怒りを押し殺して問いかける。
「そうさ。思い知ったかよ。あの後、俺はこの領地から追い出された。それからは何をやっても上手くいかない。全部あんたのせいだ……!」
ちくりと首筋に痛み。刃が私の首に少しだけ傷をつけたようだ。でも、そんな事どうでも良かった。
「せっかく見逃してあげたのに……!」
目だけで相手を確認する。声からそうだとわかっていたけど、そこにはダビッドが立っていた。立派だった髭は縺れ、目は落ち窪み、ボロを纏うその姿はまるで山賊のようだった。
「あの時は酔ってたからやられたが、今日はそうはいかない。あんたが苦手な火の魔石をたっぷり買い込んできたからな」
ダビッドはそう言うと、私の目の前でじゃらりと赤く透き通った石を鳴らす。石は擦れあうだけでパチパチと火花を散らしている。
強い衝撃を与えると火の魔法を炸裂させる火の魔石。先ほどは、それを矢に結えつけて馬車に放ったのだろう。
「随分と奮発したわね」
私は話しながらダビッドの隙を窺う。自分だけならなんとでもなるんだけど、誰かを連れて転移するのも、自分以外の誰かを転移させるのも、一瞬どうしても無防備になる。
距離が取れていれば何の心配も要らないんだけど、さすがに刃を突きつけられ、火の魔石で牽制されているこの状態では慎重にならないといけない。
ちらりと支えているジョンに目をやるが、ぐったりとして既に意識は無いように見える。
早く城に戻らないと、一瞬、ほんの一瞬でいいからダビッドの気を逸らせれば……。
そう必死に考えていた私の傍から、急にダビッドが吹っ飛んだ。
「ぎゃあっ!」
悲鳴を上げるダビッドに影が駆け寄り、蹴りを放つ。さらに吹っ飛んで転がる所を、最後に止めとばかりに踏みつけて、その影は振り返った。
「ご無事ですか、ユリア様」
森に差し込む微かな陽の光を受ける金の髪を揺らして、青年がそこに立っていた。
「え?」
それは、一瞬で大輪の花のように広がり馬車を包む。赤い色は炎の色だった。
私は慌てて近くに転移するが、馬車は大きな炎を上げながら馬と共に倒れ込む。
御者が森の中に投げ出されるのが見えたが、そちらは木々がクッションになり、気を失っている以外に問題はなさそうだ。
「ジョン!」
馬車に駆け寄りながら魔法を展開する。一瞬で炎を氷で押さえ込み、私はドアを蹴破った。
その先で額から血を流したジョンの姿を見つけ、魔法で浮かせなんとか外へ引っ張り出す。
「……ユリア様、いけません、早く逃げてください」
「いいから黙ってなさい!」
一刻も早く城へ戻り治療をしなくては、そう焦る私の首筋に、ひたりと冷たい物が押し付けられた。
「あなたが、やったの?」
私は怒りを押し殺して問いかける。
「そうさ。思い知ったかよ。あの後、俺はこの領地から追い出された。それからは何をやっても上手くいかない。全部あんたのせいだ……!」
ちくりと首筋に痛み。刃が私の首に少しだけ傷をつけたようだ。でも、そんな事どうでも良かった。
「せっかく見逃してあげたのに……!」
目だけで相手を確認する。声からそうだとわかっていたけど、そこにはダビッドが立っていた。立派だった髭は縺れ、目は落ち窪み、ボロを纏うその姿はまるで山賊のようだった。
「あの時は酔ってたからやられたが、今日はそうはいかない。あんたが苦手な火の魔石をたっぷり買い込んできたからな」
ダビッドはそう言うと、私の目の前でじゃらりと赤く透き通った石を鳴らす。石は擦れあうだけでパチパチと火花を散らしている。
強い衝撃を与えると火の魔法を炸裂させる火の魔石。先ほどは、それを矢に結えつけて馬車に放ったのだろう。
「随分と奮発したわね」
私は話しながらダビッドの隙を窺う。自分だけならなんとでもなるんだけど、誰かを連れて転移するのも、自分以外の誰かを転移させるのも、一瞬どうしても無防備になる。
距離が取れていれば何の心配も要らないんだけど、さすがに刃を突きつけられ、火の魔石で牽制されているこの状態では慎重にならないといけない。
ちらりと支えているジョンに目をやるが、ぐったりとして既に意識は無いように見える。
早く城に戻らないと、一瞬、ほんの一瞬でいいからダビッドの気を逸らせれば……。
そう必死に考えていた私の傍から、急にダビッドが吹っ飛んだ。
「ぎゃあっ!」
悲鳴を上げるダビッドに影が駆け寄り、蹴りを放つ。さらに吹っ飛んで転がる所を、最後に止めとばかりに踏みつけて、その影は振り返った。
「ご無事ですか、ユリア様」
森に差し込む微かな陽の光を受ける金の髪を揺らして、青年がそこに立っていた。
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