悪役令息、皇子殿下(7歳)に転生する

めろ

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「家族がいない?」

「そう」

 イリヤとして目覚めた当初、僕は自分自身のことに精一杯でよく分かっていなかったのだが、皇族の従者というものは慣例として貴族階級出身者が担うことになっているらしい。先の戦の影響や現皇帝の意向もあり、政事においては徐々に平民出身者も登用するようになりつつあるようだが、昔ながらのお貴族サマたちのメンツを守るため皇族周りの慣例は今だに踏襲されているのだとか。実際、僕の身近だとゾラは子爵位を持っていたり、ハインリは侯爵家の次男だったりする。
 だから「ルヴィエも当然どこかの貴族家出身なんだろうな。でも、そういえば知らないな。せっかくだから聞いてみよう」くらいの気持ちで、話を振ったところ思わぬ答えが返ってきた。

 予想外な事実になんと言っていいか分からず、僕がまごついているとルヴィエはなんてことはないように再び口を開いた。

「しいて言えば皇帝」

「え、何が?」

「親」

「えっ!?!?」

 溜め息交じりに「血縁関係はない、たぶん」と付け足されたが、さすがに「あー、なんだ!そうなんだね!」とは反応できなかった。もしかしなくても皇室のスキャンダルというやつなのでは。

「……そういえば、お茶会でルヴィエについて色々と噂があるって聞いたけど」

「はぁ……皇帝の隠し子なんじゃないかって言われてるのは知ってる。でも、それは違うと思う」

「ル、ルヴィエがしゃべった……」

「さっきからずっとしゃべってる」

 経験上、ルヴィエの口数が増えるのは不本意なことがある時だと僕は薄々分かってきていた。内容は全く笑えないが、ルヴィエの生い立ちについて聞く良いチャンスかもしれないと僕は内心ドキドキしていた――のだが、ルヴィエの次のひとことでそれどころではなくなってしまった。

「俺には記憶がない」

 気がついたら皇帝がいて、しばらくしたらあちこちへと連れ回されるようになって、うんざりし始めた時に僕を見掛けて。そして、僕の侍従になろうと思ったのだという。

「えっ、と……僕の侍従になろうと思ったのは、僕も記憶喪失だったから?」

「それもある」

「そっか……そうだったんだ……」

 呆然と僕はそう答えた。もうなんか、この時の僕は驚き疲れていた。
 だからなのだろうか、ルヴィエは少し困ったような顔でこんなことを言った。

「……だから、あまり普通の子供のことが分からない。迷惑をかけて、ごめん」 

 申し訳なさそうにそう呟いたルヴィエのその一言が、今でも脳裏に焼きついている。

――だからこそ僕は子供らしい、くだらないやり取りをもっと増やそうを思ってこうしてルヴィエと砂に絵を書いているのだが……さすがにちょっと幼児退行しすぎな気もしなくはない。
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