悪役令息、皇子殿下(7歳)に転生する

めろ

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◇◇◇

 皇宮、それは皇城のみならずアスティリオン帝国において最も重要な施設だ。
 代々受け継がれし荘厳たる宮は皇帝の住処にして、政治の中心。皇帝への正式な謁見が許された唯一の場でもある。

 そんな皇宮があわや破壊されかけた。どういう訳だか突然皇城内に現れた北方の巨鹿・ムルクと、皇帝お気に入りの小さな魔術師によって。

 そして小さな魔術師ことルヴィエの主人たる第一王子イリヤはというと、本日皇命により皇宮へ正式に招聘された……のだが。

「それで、コイツは暗いところだと光るから夜戦にはもってこいだと陛下が仰ってな!あの時は大層重宝したもんだ!」

 ゲラゲラ笑いながらそう言い放ったのは、老いてなお強健を誇る軍部の最重要人物・スヴェン将軍だ。

「うるさい」

 相手は高官だというのにルヴィエはというと、不快そうに顔を歪めてばっさりそう言い切った。ゾラから従者としての立ち振る舞いを叩き込まれているはずだが、顔馴染みである将軍に対して今更取り繕う気はないらしい。とはいえ、見ているこちらとしては心臓に悪い。

 皇宮への正式な招聘なんてこれまで一度もなかった。だからかなり緊張していたのだが意外にもこじんまりとした部屋に通され、現れたのは皇帝ではなく将軍。そして、将軍相手に全く臆することなく接する侍従。何より二人の口から語られるとんでもない思い出話の数々。

(てっきり何か怒られるか、重要な話をされるのかと思ってたのに……一体今日って何しに来たんだっけ……)

 将軍にいじられて不服そうな顔をしたルヴィエを眺めながら、僕は紅茶に口をつけた。ついでに焼き菓子も口に運ぶ。香ばしいバターとナッツの風味が堪らない。なんとも悠長なことだ。
 室内に将軍とルヴィエと僕の三人しかいないこともあって、僕はすっかり気が緩んでしまった。

「まぁー、でもお前は非力だからなぁ。今回も結局陛下のところにムルクを誘導したんだろ?陛下が気づいたからよかったものの、あと一歩で皇宮まで鹿野郎にブッ壊されてるとこだったなんて笑えねぇな!」

「皇帝が外にいるのは分かってた」

「それにしたってやりすぎだろうが!おかげで城はめちゃくちゃだぜ?」

「それは俺じゃなくてムルクのせいだ」

「いーや、半分はおまえのせいだよ。軍部だけでも目撃情報、相当上がってきてるぞ?光るガキがムルクを弾き飛ばすもんだから城のあっちこっちが穴だらけになっちまったってな」

 そう言い終えると、将軍は見て見ろと言わんばかりに窓の方へ顎をしゃくった。うん、庭園は見事に特大の穴だらけ。庭木職人が見たら号泣するレベルの有様だ。

 隣に座るルヴィエが「はぁ」と溜め息を零した。

「イリヤからもらった本が破れた」

「は?」

「せっかく読み終わったのに……」

 物憂げな雰囲気を醸し出されても、意味が分からない。いきなり何の話だ。

「ほーーん?城が穴ぼこだらけになったことより、本が破れたことがショックだってか?おいおい、言いたいことは色々あるが魔術師ってのはどいつもこいつもほんと独特だな」
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