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第七十四話 救いの手
しおりを挟むアリス「?何でお姉ちゃんは私の名前を知ってるの?」
知らないはずのカリーナから突然名前を呼ばれてしまいアリスは不思議そうな顔で見つめている
カリーナ「そうだったな……カンナお姉ちゃんって言ったら分かるかな?」
アリス「カンナお姉ちゃんなの!? でも全然違うような……」
カリーナ「魔術で融合してるから仕方ないか……それよりもアリスはあの龍の声が聞こえたのか?」
情報が多くアリスは混乱しているようだが1つ1つ整理してからゆっくりと頷く
カンナ(やっぱりあれは空耳なんかじゃなかったんだな)
カリータ(そうね……それに「助けて」と言ってました)
カンナ(はっきり聞こえたよ)
カリータ(でもあの龍を助ける余裕なんてないわ……でも)
カンナ(カリータ……)
カリータ(でも……助けを求める声を聞いたらもしかしてあの龍は自分の意思に反してやってたんじゃないかって思って……)
カンナ(そうだな……ここはアリスに任せてみない?)
カリータ(あのアリスって子は何者なのですか?ただの子供には見えませんが)
カンナ(アリスは私とエナの妹のような存在だよ、おまけに滅茶苦茶強いけど信用して欲しい)
カリータ(……分かった、あなたを信じる)
カリーナも色々と悩んでいたが色々と整理して再びアリスに話しかける
カリーナ「アリスはこの龍を助けたいの?」
アリス「うん……この子は悪い子じゃないと思うの」
カリーナ「そっか……なら暴れないようにこいつを抑えておいてくれ」
シドウ「おいおい、本当に大丈夫なのか?」
カリーナ「大丈夫ですよ、その証拠に大人しくなっているじゃないですか」
アリスはザンギャグロスの持って額を当てると殺気だっていた瞳は落ち着き放出している瘴気の量も大幅に減少したのを感じる
シドウ「そうだな、それに戦いはまだ終わってない……が」
まだジックが残っているのでシドウは立ちあがろうとするが傷が開いてしまいとてつもない痛みが彼を襲う
リナ「先生!! もう無理しないでください」
シドウ「分かっているがレージュがまだ戦っているだろう、それに街の方も心配だ」
アリス「大丈夫、街の方はマールお姉ちゃんとルーゼが守ってくれてるから心配しないで」
シドウ「ル……ルーゼ!? まさか師匠が!?」
カリーナ(知り合いなのかな?)
ルーゼの名前を聞いたシドウは焦っておりその事が気になるカリーナだったが街の方はルーゼとマールに任せる事に決める
カリーナ「とにかく私はエナ達の援護に行きます、残りの人は自分の傷を治す事を優先して余裕があるならジックの方へ」
リナ「分かった、皆魔力の限界がきてるから結界の外に行くよ」
フレイ「その方が良さそうね、リナ 全員にこの事を伝えるわよ」
リナ「うん……カンナ、カリータ、気をつけてね」
リナとフレイはシドウに肩を貸して後ろの方へ引き下がっていきその場にはサブナックとアリスとザンギャグロスだけが残っている
カリーナ「ナックはどうするの?」
サブナック「俺も助けに行きたいが そんなに体力は残ってない……だからここで古龍を監視して何かあったらそれを伝える、それにこの子も心配だ」
カリーナ「分かった、その子はアリスって名前だよ……なら後は任せていいか?」
サブナックが自身満々に返事をしたのをみたカリーナはその場にいたフェンリルに跨ってクラスメイトの勇者とエナ達が戦っている方向へ駆け出していった
――――――――――――――――――――――
そして時間は少し遡って海斗が地上に飛び降りた瞬間にまで戻る、天空城に残った勇者とエナはクシアとジックを止めるために斉藤が指揮をとって戦っていた
アスフェア「エナ!!準備はいい?」
エナ「大丈夫だよ」
アスフェアが目の前に浮かびエナは両手で優しく包み込んで胸に手をあてる
青い光に包まれたエナはアスフェアとの同化に成功し青色の髪となり背中には青く透明で綺麗な羽が生えている
斉藤「寺山君と上野君は学長の相手を、それ以外の人はクシアさんを止めてください!!」
寺山「分かった、上野君いくよ」
上野「うん」
上野と寺山は浮遊して飛び立ちジックに向けて魔法を放つ
ジック「その程度じゃ私は倒せませんよ?」
寺山「牽制だからな」
ジックはクシアの肩から飛び降りて攻撃をかわして攻撃し三人による空中戦が空の上で始まった
斉藤「始まりましたね……エナさんには申し訳ないですが前衛をお願いしてもらいます」
エナ「うん、任せてください」
斉藤「サンドナイトとアクアナイトが一緒に戦ってくれます、私と山下さんと溝上君でジックの魔獣を片付けます」
山下「分かった」
斉藤「そして工藤さんと高田君はエナさんの援護を」
工藤「分かりました、エナさん私がバフをかけます」
エナの横に砂と水でできた騎士の姿をした魔物が一体ずつ並び工藤はエナにバフをかける
エナ「工藤さん、ありがとうございます」
高田「僕が援護するから工藤さんはありったけのバフを」
エナは手に魔力を込めて氷のハンマーを生成して構える
エナ「私がクシアの目を覚まさせるから……待ってて」
工藤(何だろう……王宮の時を思い出すな)
大きなハンマーを持っているエナを海斗と重ねている工藤は少しだけ微笑んでいた
エナはそんな事も気づかずに前へ飛び出していき水と砂の騎士も後を追うようにして前方へと突っ込んでいく
エナを視認したクシアはエナに向かって巨大な手を振り下ろす、それに対してエナは氷のハンマーで叩き返し巨大な手を吹っ飛ばし騎士も隙を見計らって攻撃する
エナ(全く効いてないってわけじゃなさそうだけど……)
攻撃を受けたクシアは少しだけ怯むが対して効いておらずしばらくの間戦闘が続く
山下と斉藤と上野はジックが召喚した魔獣を全て倒してエナ達の加勢にはいり寺山達とジックも激しい空中戦を繰り広げている
ジック(何故だ……あの小娘ごときに天使という特別な肉体を持ち古代兵器にも匹敵する化け物を止められるはずがない)
様子を見て想像とは違う結果にジックは戸惑っている
寺山「あんた、よそ見とは余裕じゃないか」
ジック「減らず口を」
エナ達の方は斉藤の物量とエナの攻撃やその他の援護で戦っているのに加えて倒すのではなく救う事が目的なのでギリギリの戦いとなっている
エナ「クシア!!気付いて!!私だよ」
工藤「クシアさん!!そんな魔法に負けないで」
工藤、山下、エナの三人はそれでもクシアの目を覚まそうと必死に呼びかけてはいるが効果が全くない
溝上「……やっぱり倒すしか」
ジック(馬鹿なやつらめそんな余裕など無いはずなのにな……その甘さに反吐がでるのだよ)
様子を見ていたジックは隙を見て二人で固まっている工藤と山下に向けて炎魔法を放つ
寺山「工藤!!山下!!」
上野「避けてください!!」
二人は大声で呼びかけるが工藤と山下の反応は遅れて火球が二人に直撃し膝をつく
工藤「ううっ……痛い」
山下「こんなに痛かったなんて……」
エナ「工藤さん!!山下さん!!」
クシア「ガアアッ」
クシアはエナが目を離した隙に巨大な手で工藤と山下を巨大な手で鷲掴みにして握り潰そうとする
掴まれた二人は抜け出そうと必死に体を動かすが力では叶うはずもない
クシアが力をいれると二人は空気が裂けるような悲鳴をあげて何とか抜け出そうと必死に手足を動かす
エナ「クシア!!辞めて!!」
悲痛な叫び声を聞いたエナはクシアに向かって訴える、しかしどんなにさけんでもクシアには届いていないのか見向きもされていない
斉藤「二人を離しなさい!!」
斉藤や溝上も全力で攻撃するが対して効いておらず二人の叫び声が響いていた
クシア「……ガァッ グド……ウサ……ン? ヤア……シタサ……ン?」
しかし悲痛な叫び声が聞こえたのかクシアは手の力を緩めて工藤と山下を見つめている
ジック「まさか完全に掌握できていなかったとでもいうのか」
寺山「あんたの相手は俺らだ」
寺山は上野と協力してジックをクシアの方から遠ざけて後は託す事にしてそれを実行する
エナ「クシア!!クシア!! 良かった……」
クシア「エ……ナ ハヤ……クワタシヲ……コオ……シテ」
クシアは掴んでいた二人を優しく地面に降ろすと苦しい声でエナに語りかけている
エナ「クシア……何を言ってるの?」
クシア「ハヤク……ワタシヲ……コロシテクダサイ……オネガイシマス」
エナ「そんな事……できるわけないじゃん」
クシア「ソウシナイト……ミンナガシニマス……コレガカイトヲシナセタワタシノセキニンデス……ワタシノリセイガノコッテルウチに……ハヤク……」
エナ「海斗は生きてる、だから死ぬなんて言わないで!!」
クシア「デモ……」
海斗が生きている事に驚くがそれと同時に悲しそうな表情をしてエナを見つめる
クシア「ワタシハモウオサエラレマセン……ソレナライッソノコト」
「クシア!!私はそんなに弱虫になるように教えた覚えはないわよ」
エナ「ベルさん!?」
聞き覚えのある声に反応するとそこにはメイド服のベルと大妖精と同化したレージュがいる
斉藤「誰なの?(あれってメイド服よね)」
溝上「二人とも知らないな(戦うメイド!?)」
レージュ「エナ!!助けに来たわよ」
エナ「あなたは……もしかしてレージュ先生……ですか?」
レージュ「そうよ、大妖精様と同化してるの、それと……無事で良かったわ」
レージュはエナの頭を撫でて褒めると少し安心して笑顔になる
クシア「ベル……サン」
ベル「マール様に仕えているメイドなら私が責任を持って貴方を救います」
クシア「ソンナコト……デキルノデスカ」
ベル「ちょっと痛いでしょうがそこは我慢しなさい、それで貴方は強く意思を保ちなさい!!」
クシア「ハ……イ」
しかしクシアの限界がきてしまいベルに向かって殺意の拳を振り下ろしてしまう
ベル「……これは帰ったら減給と説教ね、エナ、レージュ私がクシアを救ってみせるから足止めをお願い」
二人はベルを信じて返事をすると息を合わせてクシアに攻撃をして周りを飛び回って翻弄する
そしてベルはすぐに斉藤達勇者の元へと駆け寄っていったのだった
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