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異世界編
決死の覚悟!
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凄まじい戦闘が瞬く間に展開され、火花が飛び散り、その勢いは城を揺さぶるほどだった。
左右からソフィアとシリウスが剣撃を仕掛け、サポート役二人が敵の攻撃をかわしつつ、それを支える、というのがこれまでの基本的な戦闘スタイルだった。
だが、今回ばかりはそうはいかなかった。
意外なことに初めに膝を地面についたのはシリウスだった。
「だめ!シリウス!もうこれ以上ダメージを負うのは.....!」
それはシリウスに隙があったから、ではない。彼が仲間が避けきれなかった魔王の攻撃を庇っているからである。
「誰も死なせる訳にはいかないんだ....!」
この魔王、単に四人の相手をしているというわけではない。むしろ同時に四人と戦えていることが不思議にすら思えるような状況で、有利に戦いを進めている。
「なんという強さか....!」
バルバロスは拍手を送ることを躊躇わなかった。
「まあ、我の方が強いけど」
これ以上シリウスが傷を負うのは得策ではない。だが、どうやって状況を打破するというのか.....。
「みんな、これ以上戦いが長引くのは有利じゃない。だから、あれをやろうと思う」
「で、でもシリウス......。まだあれは一度も成功したことが無いはずじゃ......」
また例の『あれ』か、と言いたいところだが、今回ばかりは俺も内容を知っている。
「もし失敗したら......死んじゃうかもしれ......」
シリウスは食い気味につぶやいた。
「大丈夫だよナーニア。もし僕がいなくなったって、3人はうまくやって行けるさ」
死を覚悟した顔というのはこういうものなのだろうか。
視線ははるか遠く、天井に塞がれた空へと向いていた。
三人は何も追及せず、涙すら流さなかった。まあ、半分泣いてたけど。
ここに来て、俺も初めて口を開く気になった。
「いいのかシリウス。お前、まだあれ使えないだろ。いくら覚悟があったって、そのさ......」
「資格が無い、ですか。分かりかねます、ただ僕は挑むだけです」
簡単に説明すると、一生懸命練習してた奥義は強い怒りの感情を原動力とするもの。それも、一生に一度あるか無いかくらいの。
要するにめったに怒らないこいつじゃ、優しすぎて無理ってこと。
「魔王、覚悟しろおおおおお!」
シリウスは走った。全力で駆け出し、その身にありったけの防御魔法を纏わせながら。
「ナーニア、アイリーン......お願い、シリウスを死なせ、ない、でぇ......」
ソフィアは剣士だ、魔法が使えるわけじゃない。シリウスの最終奥義において、半径3メートル内に入ることは出来ない。
彼女にはただ座り込んで涙を流すことしか出来ないのだ。
「二人ともっ!何か言ってよ!!」
語尾が力足りず、かすれた音になって響く。
「全力はっ、尽くして、る......けど......ひっく、シリウスは助からないかも、しれっ、ない......」
今までの恩情に答えるように、涙や鼻水を拭う暇も無く、杖を振り、魔法陣を書き続ける。
けれども魔法の光りも途切れ途切れで、もはや支援も十分には出来ない。それでも、彼女らはできること全てを行うしかない。
シリウスは青白い光を放つ剣を振るい、縦横無尽に駆けずり回り、これでもかというほど魔王の大剣を切り叩いた。
「ここに来て連打とは、覚悟を決めたな勇者よ。身体疲労、失血過多、酸素不足での死も恐れないと言うのか」
「いいや、違うね。僕はそんなことで死んだりはしない」
「何?」
「【雷光召起】!!」
剣先から放たれる熱を持った閃光。
当たったかのように見えたが、魔王は間一髪のところで避けていた。
「見て!シリウスの剣が!」
赤いオーラが見え隠れする。奥義の準備が整ったということだ。
「お、やるなあいつ」
「だが、アキヒサ。お主もわかっておるだろう?いくら発動が出来ようとも、覚醒しなければ彼は死ぬぞ」
それは仕方のないことだ。あれを使うと決めた以上、避けられない。
「避けたか......。だが、これで......!」
「ふははははは、勇者よ、よくここまで耐えた」
「何!?」
「だが、これならどうかな?」
「!?」
不意に魔王の大剣から放たれる紫の衝撃波。背丈の敵わぬシリウスは振り飛ばされて、地面に叩きつけられる。
壁の一部が崩れ、彼の体に向かって崩れ落ちる。
そして血が、その口元から吐き出された。
指先が軽く痙攣した、数十秒の後の沈黙。四肢の不動。
「シリウスっ!シリウス!」
アイリーンの呼びかけに、しかし、彼は答えられなかった。
「そんな......せっかく準備まで整ったっていうのに......」
「死んだか......」
魔王が剣を収めようとしたその瞬間、瓦礫の間から、声がした。
「なあ、魔王。その剣、僕の父の物だろう?僕はずっと気づいてたよ。やはり、仇はお前で間違い無いみたいだ。それを返してもらおうか......!!」
左右からソフィアとシリウスが剣撃を仕掛け、サポート役二人が敵の攻撃をかわしつつ、それを支える、というのがこれまでの基本的な戦闘スタイルだった。
だが、今回ばかりはそうはいかなかった。
意外なことに初めに膝を地面についたのはシリウスだった。
「だめ!シリウス!もうこれ以上ダメージを負うのは.....!」
それはシリウスに隙があったから、ではない。彼が仲間が避けきれなかった魔王の攻撃を庇っているからである。
「誰も死なせる訳にはいかないんだ....!」
この魔王、単に四人の相手をしているというわけではない。むしろ同時に四人と戦えていることが不思議にすら思えるような状況で、有利に戦いを進めている。
「なんという強さか....!」
バルバロスは拍手を送ることを躊躇わなかった。
「まあ、我の方が強いけど」
これ以上シリウスが傷を負うのは得策ではない。だが、どうやって状況を打破するというのか.....。
「みんな、これ以上戦いが長引くのは有利じゃない。だから、あれをやろうと思う」
「で、でもシリウス......。まだあれは一度も成功したことが無いはずじゃ......」
また例の『あれ』か、と言いたいところだが、今回ばかりは俺も内容を知っている。
「もし失敗したら......死んじゃうかもしれ......」
シリウスは食い気味につぶやいた。
「大丈夫だよナーニア。もし僕がいなくなったって、3人はうまくやって行けるさ」
死を覚悟した顔というのはこういうものなのだろうか。
視線ははるか遠く、天井に塞がれた空へと向いていた。
三人は何も追及せず、涙すら流さなかった。まあ、半分泣いてたけど。
ここに来て、俺も初めて口を開く気になった。
「いいのかシリウス。お前、まだあれ使えないだろ。いくら覚悟があったって、そのさ......」
「資格が無い、ですか。分かりかねます、ただ僕は挑むだけです」
簡単に説明すると、一生懸命練習してた奥義は強い怒りの感情を原動力とするもの。それも、一生に一度あるか無いかくらいの。
要するにめったに怒らないこいつじゃ、優しすぎて無理ってこと。
「魔王、覚悟しろおおおおお!」
シリウスは走った。全力で駆け出し、その身にありったけの防御魔法を纏わせながら。
「ナーニア、アイリーン......お願い、シリウスを死なせ、ない、でぇ......」
ソフィアは剣士だ、魔法が使えるわけじゃない。シリウスの最終奥義において、半径3メートル内に入ることは出来ない。
彼女にはただ座り込んで涙を流すことしか出来ないのだ。
「二人ともっ!何か言ってよ!!」
語尾が力足りず、かすれた音になって響く。
「全力はっ、尽くして、る......けど......ひっく、シリウスは助からないかも、しれっ、ない......」
今までの恩情に答えるように、涙や鼻水を拭う暇も無く、杖を振り、魔法陣を書き続ける。
けれども魔法の光りも途切れ途切れで、もはや支援も十分には出来ない。それでも、彼女らはできること全てを行うしかない。
シリウスは青白い光を放つ剣を振るい、縦横無尽に駆けずり回り、これでもかというほど魔王の大剣を切り叩いた。
「ここに来て連打とは、覚悟を決めたな勇者よ。身体疲労、失血過多、酸素不足での死も恐れないと言うのか」
「いいや、違うね。僕はそんなことで死んだりはしない」
「何?」
「【雷光召起】!!」
剣先から放たれる熱を持った閃光。
当たったかのように見えたが、魔王は間一髪のところで避けていた。
「見て!シリウスの剣が!」
赤いオーラが見え隠れする。奥義の準備が整ったということだ。
「お、やるなあいつ」
「だが、アキヒサ。お主もわかっておるだろう?いくら発動が出来ようとも、覚醒しなければ彼は死ぬぞ」
それは仕方のないことだ。あれを使うと決めた以上、避けられない。
「避けたか......。だが、これで......!」
「ふははははは、勇者よ、よくここまで耐えた」
「何!?」
「だが、これならどうかな?」
「!?」
不意に魔王の大剣から放たれる紫の衝撃波。背丈の敵わぬシリウスは振り飛ばされて、地面に叩きつけられる。
壁の一部が崩れ、彼の体に向かって崩れ落ちる。
そして血が、その口元から吐き出された。
指先が軽く痙攣した、数十秒の後の沈黙。四肢の不動。
「シリウスっ!シリウス!」
アイリーンの呼びかけに、しかし、彼は答えられなかった。
「そんな......せっかく準備まで整ったっていうのに......」
「死んだか......」
魔王が剣を収めようとしたその瞬間、瓦礫の間から、声がした。
「なあ、魔王。その剣、僕の父の物だろう?僕はずっと気づいてたよ。やはり、仇はお前で間違い無いみたいだ。それを返してもらおうか......!!」
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