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異世界編
魔王討伐!
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埃が巻き上がり、よたよたと立ち上がるシリウス。
魔王がハッとしたように剣を振り上げるが、シリウスは動かず、じっと好機を待ち続ける。
「来いよ。とどめを刺しにこい」
魔王はその言動を怪しんでか、近寄ることをためらう。
「見事な執念だな」
見るのも痛々しい出血に、吸って吐くだけで精一杯の呼吸。
綺麗な白髪が汚れのせいで、泥水に晒されたボロ雑巾のようになっている。
しかし、俺は妙に思った。
シリウスの剣がどこにも見当たらないからだ。
「一体どこに隠した......?」
そう思った瞬間、シリウスは突然しゃがんだかと思うと一目散に魔王目掛けて走り出した。
「うああああああああ!!」
なにも装備しない、素手のままで。
「くっ!この馬鹿者が!」
期待外れだと、言わずとも魔王の口調が真意をそのまま伝える。
ただのがむしゃらだと魔王は判断したように見える。
そうして揺らめく紫のオーラを発する大剣を振り上げ......。
「何!?上....だとッ....!?」
だがしかし、不意に振り上げた腕を止めると、首を上げる。
なぜこのタイミングで気づくことが出来たのだろう。歴戦の経験故なのだろうか。
けれども、魔王が上を見上げた時、もう全ては終わっていた。
魔王の頭上、宙に浮くシリウスの剣に刻まれた文字が神々しい光を放って浮かび上がる。
その光は間も無くして拡散し、まるで無数の曲線を描くかのように美しく回転する。
それこそが、絶対死亡魔法の最強の利点にして、最も優れた使用法だと、かつてバルバロスは語った。
武器に圧縮した呪文を書き込むという手法。
「【絶対死亡白光舞廻】!!」
シリウスの一声とともに剣が落下し魔王の胸を貫く。
それは一瞬の出来事であった。
程なくして轟音と振動が発生する。
魔王とシリウスの両方を巻き込む半径3メートルの円型魔法陣。
全てが目を瞑りたくなるほどの恐ろしい光量が円筒状になって城の天井を空に向かって一直線に貫く。
天井を貫いた光は、そのまま地域一帯を覆っていた黒雲を霧散させ、数千年間の間、降り注ぐことのなかった太陽の光を呼ぶ。
「光、光だわ......。これまで決してこの城に注ぐことのなかった光が......」
ソフィアが一言一言を噛みしめるようにして呟いた。
「でも、シリウスは......」
急に俺の肩を叩くバルバロスに驚いて振り向く。
「何だよ」
「よく聞けアキヒサ。あの魔法陣内の声が聞こえるだろう」
「は?聞こえるわけな.....」
あり得ないはずなのに、耳を傾けるとなぜか確かに聞こえた。
「そうか.....」
初めに聞こえて来たのは魔王の声だった。
「シリウス、よくぞここまで辿り着いた....」
「何?」
少しこもった音だが、かすかに聞き取ることが出来る。
「強くなったな息子よ」
俺たちにしか聞こえていないかと思ったが、3人にも聞こえていたらしく、驚いたように目を丸くしている。
「すまなかったな、家族を騙して家を出て.....。全てはこのためだったのだ。お前がこの座を引き継げシリウス.....」
段々と光が消えていく。
魔王は膝をつき、突き刺さった剣がその体をどうにか支えているように見えた。
「そんな....馬鹿な.....」
シリウスが恐る恐る外した兜の奥、それは彼にとって驚愕すべき事実だったのかもしれない。
魔王の大剣から輝きが失われていく。
「間も無くお前の剣に刻印が引き継がれる。この世界にその刻印を持つことが出来るものはただ一人。お前は俺を超えた。間も無くこの世界に危機が訪れる。そうしたら......」
数秒の沈黙が流れ、そのまま魔王は動かなくなった。何もかも成し終えたと言わんばかりの笑みをたたえて。
「と、父さん.....?父さん!!」
ここで俺が気になったのは絶対死亡魔法を浴びてるのに死なないシリウスのことである。
てっきり死ぬかと思っていたが、自死無効化の覚醒に成功したようだ。
バルバロスが『自らをも含む命ある全てを殺したくなるほどの憎悪が必要』だと言っていたので、こんなヘナヘナなハーレムメイカーみたいなやつには不可能だと思ってた。
っていうか絶対死亡魔法を自分にかけた場合、俺でも無限復活出来ないって言うのは驚きだった。
「まさか......父さん....待ってくれ....まだ......」
3人はなにもすることが出来ず固まりつくし、シリウスは絶望の淵に立たされている。
『テレレレ テッテッテー』
【1900000000の経験値を手に入れた】
【シリウス、ソフィア、ナーニア、アイリーンはこれ以上レベルが上がりません】
『システムメッセージ。シリウスは【魔王】の称号を獲得しました。現在、獣王、剣聖、魔導王......etc....竜王を除く最高位十二称号全てを獲得しています』
「うるさい!!」
シリウスはこれまでに無い激しい口調で叫んだ。
「うるさい、うるさい!!」
重苦しい空気が漂う。凍りついたような強固さを持って時間が流れることを拒むかのように。
「シリウス、お前大丈夫か?」
「大丈夫なわけないじゃないですか.....」
彼は顔をあげなかった。泣いていたから。
「こんなのあんまりだ.....」
いつの間にか城に降り注いでいた光は消えていた。
ポツポツと降り始めた雨は、全てを洗い流すかのように、やがて激しい豪雨へと変わっていった。
魔王がハッとしたように剣を振り上げるが、シリウスは動かず、じっと好機を待ち続ける。
「来いよ。とどめを刺しにこい」
魔王はその言動を怪しんでか、近寄ることをためらう。
「見事な執念だな」
見るのも痛々しい出血に、吸って吐くだけで精一杯の呼吸。
綺麗な白髪が汚れのせいで、泥水に晒されたボロ雑巾のようになっている。
しかし、俺は妙に思った。
シリウスの剣がどこにも見当たらないからだ。
「一体どこに隠した......?」
そう思った瞬間、シリウスは突然しゃがんだかと思うと一目散に魔王目掛けて走り出した。
「うああああああああ!!」
なにも装備しない、素手のままで。
「くっ!この馬鹿者が!」
期待外れだと、言わずとも魔王の口調が真意をそのまま伝える。
ただのがむしゃらだと魔王は判断したように見える。
そうして揺らめく紫のオーラを発する大剣を振り上げ......。
「何!?上....だとッ....!?」
だがしかし、不意に振り上げた腕を止めると、首を上げる。
なぜこのタイミングで気づくことが出来たのだろう。歴戦の経験故なのだろうか。
けれども、魔王が上を見上げた時、もう全ては終わっていた。
魔王の頭上、宙に浮くシリウスの剣に刻まれた文字が神々しい光を放って浮かび上がる。
その光は間も無くして拡散し、まるで無数の曲線を描くかのように美しく回転する。
それこそが、絶対死亡魔法の最強の利点にして、最も優れた使用法だと、かつてバルバロスは語った。
武器に圧縮した呪文を書き込むという手法。
「【絶対死亡白光舞廻】!!」
シリウスの一声とともに剣が落下し魔王の胸を貫く。
それは一瞬の出来事であった。
程なくして轟音と振動が発生する。
魔王とシリウスの両方を巻き込む半径3メートルの円型魔法陣。
全てが目を瞑りたくなるほどの恐ろしい光量が円筒状になって城の天井を空に向かって一直線に貫く。
天井を貫いた光は、そのまま地域一帯を覆っていた黒雲を霧散させ、数千年間の間、降り注ぐことのなかった太陽の光を呼ぶ。
「光、光だわ......。これまで決してこの城に注ぐことのなかった光が......」
ソフィアが一言一言を噛みしめるようにして呟いた。
「でも、シリウスは......」
急に俺の肩を叩くバルバロスに驚いて振り向く。
「何だよ」
「よく聞けアキヒサ。あの魔法陣内の声が聞こえるだろう」
「は?聞こえるわけな.....」
あり得ないはずなのに、耳を傾けるとなぜか確かに聞こえた。
「そうか.....」
初めに聞こえて来たのは魔王の声だった。
「シリウス、よくぞここまで辿り着いた....」
「何?」
少しこもった音だが、かすかに聞き取ることが出来る。
「強くなったな息子よ」
俺たちにしか聞こえていないかと思ったが、3人にも聞こえていたらしく、驚いたように目を丸くしている。
「すまなかったな、家族を騙して家を出て.....。全てはこのためだったのだ。お前がこの座を引き継げシリウス.....」
段々と光が消えていく。
魔王は膝をつき、突き刺さった剣がその体をどうにか支えているように見えた。
「そんな....馬鹿な.....」
シリウスが恐る恐る外した兜の奥、それは彼にとって驚愕すべき事実だったのかもしれない。
魔王の大剣から輝きが失われていく。
「間も無くお前の剣に刻印が引き継がれる。この世界にその刻印を持つことが出来るものはただ一人。お前は俺を超えた。間も無くこの世界に危機が訪れる。そうしたら......」
数秒の沈黙が流れ、そのまま魔王は動かなくなった。何もかも成し終えたと言わんばかりの笑みをたたえて。
「と、父さん.....?父さん!!」
ここで俺が気になったのは絶対死亡魔法を浴びてるのに死なないシリウスのことである。
てっきり死ぬかと思っていたが、自死無効化の覚醒に成功したようだ。
バルバロスが『自らをも含む命ある全てを殺したくなるほどの憎悪が必要』だと言っていたので、こんなヘナヘナなハーレムメイカーみたいなやつには不可能だと思ってた。
っていうか絶対死亡魔法を自分にかけた場合、俺でも無限復活出来ないって言うのは驚きだった。
「まさか......父さん....待ってくれ....まだ......」
3人はなにもすることが出来ず固まりつくし、シリウスは絶望の淵に立たされている。
『テレレレ テッテッテー』
【1900000000の経験値を手に入れた】
【シリウス、ソフィア、ナーニア、アイリーンはこれ以上レベルが上がりません】
『システムメッセージ。シリウスは【魔王】の称号を獲得しました。現在、獣王、剣聖、魔導王......etc....竜王を除く最高位十二称号全てを獲得しています』
「うるさい!!」
シリウスはこれまでに無い激しい口調で叫んだ。
「うるさい、うるさい!!」
重苦しい空気が漂う。凍りついたような強固さを持って時間が流れることを拒むかのように。
「シリウス、お前大丈夫か?」
「大丈夫なわけないじゃないですか.....」
彼は顔をあげなかった。泣いていたから。
「こんなのあんまりだ.....」
いつの間にか城に降り注いでいた光は消えていた。
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