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28・「勇者カイン」 下
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「……!?」
予想もしなかったことを言われて、頭の中が真っ白になった。
胸が痛くて、息ができない。まるで、心臓まで止まってしまったみたい……。
「ミア!」
長椅子の上でぐらりと揺れた私を、すかさずグリフ様が隣へきて支えてくれる。グリフ様の大きな手が背中をさすり、私はようやく息を吸い込んだ。
「大丈夫……です」
私がやっと声を出すと、カイン様もエリス様も席を立ってきた。カイン様はいつかのように私の前に跪き、エリス様はグリフ様と反対側に、肘掛けに乗って私の肩を抱く。
いつもの3人と違いすぎる、不思議に張りつめた空気に、私は動くことができない。
「ミア……」
カイン様が私の手を取って、指先に口づけた。
「あ……」
エリス様は左の頬に唇を這わせ、耳に息を吹きかける。
「ひっ……ん……」
グリフ様までが、ローブの襟にそって指を滑らせる。
「やぁ……、だめ……」
その間も3人は私から視線をそらさない。熱に浮かされたように私に触れるのを止めてくれず、私は子供のようにいやいやと首をふる。
カイン様が指を口に含み、エリス様も耳を舐める。
「や、あぁ……! やめ……」
グリフ様がローブの胸元を広げそうになったところで、ついに私は泣き出した。
「ダメ、お願い! こんなの嫌ぁ……」
カイン様が指を放して聞いた。
「何が嫌なんだ、ミア?」
「うぅ……。こ、こんな……3人……」
「なら、1人ずつならいいんだね?」
エリス様が言う。
「返事しないと、止めてあげないよ……?」
そう言ってまた耳に舌を這わせられ、私は悲鳴のような声をあげる。
「はぁっ! やぁ、ダメ!」
「いい子だね、ミア。1人ずつなら……いいよね?」
「や……あぁ……」
「ミア?」
「うぅ……、はい……、も、やめて……」
涙で滲んだ視界のなかで、カイン様とエリス様がちらりと視線を交わして笑った。グリフ様は黙って私の頭を撫でている。
「ミア、ありがとう……」
3人にまた頬を寄せられ、私はもうどうにもいたたまれなくなった。
「あ、あの、もう……部屋に行っても……?」
カイン様は頷く。グリフ様が立ち上がった。
「送ろうか?」
私はあわてて首をふり、本当に逃げるように居間を走り出た。
◆◇◆
「泣かせちゃったね」
「ああ、無理もないけどな」
3人はまた椅子に戻りながら、今までミアの座っていた長椅子を愛しそうに見る。
「おまえに抱かれる覚悟はしてきたんだろうけど。まさか、オレ達にいっぺんに迫られるとは思わねぇよな。……ちょっと可哀想だったけど……」
「いや、でも無理だよ! 半泣きになったミア、可愛すぎる……!」
「あんな顔見せられると、もっと泣かせたくなるな」
「……お前ら最低だよな……」
そして3人は、誰から先にミアの部屋へ行くか、真剣に話し合う。しかし結局決まらず、コインで決めたのだった……。
◆◇◆
私は自室へ駆け込むと内鍵をかけ、そのまま床にへたり込んだ。
「俺達3人のものになってくれ」
まさか、そんなことを言われるなんて。そして、あんな……。3人に触れられたことを思い出して、身体中がかっと熱くなる。恥ずかしさから逃れたい一心で、自分がそれを受けてしまったことも。
また涙が出てしまう。カイン様も言っていた、私が普通の娘なら……と。自分こそが一番それを思っているのに。
駄目だ。
また同じ穴に落ちてしまいそうになる自分を心の中で叱る。ルカ様とのことを決心したあの時、もう思い悩まないと決めた。だからこそ、勇者の専属魔導師という望外の地位と、心から尊敬できる騎士様たちといられる生活を得たのだから。
ひとつ頭をふって私は鏡に向かい、結い上げていた髪をときはじめた。
入浴を済ませてローブを畳んでいると、扉を叩く音がした。
「……はい?」
「ミア」
カイン様だ。私は息をひとつのみ込んでから、扉を開けた。
「入っていいか?」
私は黙って一歩下がる。カイン様はまっすぐ入ってきて、振り返って私がまた内鍵をかけるのを見ていた。
内鍵をかけ、私も振り返ってカイン様を見上げる。不思議なくらい、何も考えられなくて……ただカイン様の、水色の瞳に吸い寄せられていた。
どのくらい見つめあっていたのか。カイン様が私に、手を差しのべた。
近寄って、そっと手を重ねる。するとカイン様がその手をきゅっと握った。
「おまえは、強いな」
「……?」
私が首をかしげると、カイン様が微笑んだ。
「ずいぶん辛い思いもしているはずなのに……いつもそうして、まっすぐに俺を見る。その素直で、無垢な目が好きだ」
「……ほめすぎです、カイン様」
「さっきは悪かった」
「……いいえ。恥ずかしかっただけ……です」
するとカイン様が笑って、私の腰を抱いた。
「真っ赤になって、瞳を潤ませて。さっきのおまえは本当に可愛かった」
「カイン様……!」
咄嗟に身体を引こうとしたけれど、カイン様の腕ががっちりと私を抱えて放さない。もともと力で敵うはずがないのだ。
「あのまま、こうしたかった……」
そう言って、カイン様が唇を奪った。
「ん……!」
爪先が浮きそうなほど強く引き寄せられ、噛みつくように何度も何度も口づけては、カイン様の舌が絡みつく。ほどいた私の髪はカイン様の指でかき回され、今はうなじのあたりで握られている。
「ん、ふ……」
カイン様の激しい口づけに、身体から力が抜けていく。抱き寄せる手がなかったら、もう立っていられないかも知れない。
カイン様が唇を離した。
「は……あぁ……」
「さっきと同じ顔になったな」
「……え?」
「可愛い、ミア。たまらなく……そそられる」
「カイン様……」
頬が熱くて、それ以上何も言えない……。
予想もしなかったことを言われて、頭の中が真っ白になった。
胸が痛くて、息ができない。まるで、心臓まで止まってしまったみたい……。
「ミア!」
長椅子の上でぐらりと揺れた私を、すかさずグリフ様が隣へきて支えてくれる。グリフ様の大きな手が背中をさすり、私はようやく息を吸い込んだ。
「大丈夫……です」
私がやっと声を出すと、カイン様もエリス様も席を立ってきた。カイン様はいつかのように私の前に跪き、エリス様はグリフ様と反対側に、肘掛けに乗って私の肩を抱く。
いつもの3人と違いすぎる、不思議に張りつめた空気に、私は動くことができない。
「ミア……」
カイン様が私の手を取って、指先に口づけた。
「あ……」
エリス様は左の頬に唇を這わせ、耳に息を吹きかける。
「ひっ……ん……」
グリフ様までが、ローブの襟にそって指を滑らせる。
「やぁ……、だめ……」
その間も3人は私から視線をそらさない。熱に浮かされたように私に触れるのを止めてくれず、私は子供のようにいやいやと首をふる。
カイン様が指を口に含み、エリス様も耳を舐める。
「や、あぁ……! やめ……」
グリフ様がローブの胸元を広げそうになったところで、ついに私は泣き出した。
「ダメ、お願い! こんなの嫌ぁ……」
カイン様が指を放して聞いた。
「何が嫌なんだ、ミア?」
「うぅ……。こ、こんな……3人……」
「なら、1人ずつならいいんだね?」
エリス様が言う。
「返事しないと、止めてあげないよ……?」
そう言ってまた耳に舌を這わせられ、私は悲鳴のような声をあげる。
「はぁっ! やぁ、ダメ!」
「いい子だね、ミア。1人ずつなら……いいよね?」
「や……あぁ……」
「ミア?」
「うぅ……、はい……、も、やめて……」
涙で滲んだ視界のなかで、カイン様とエリス様がちらりと視線を交わして笑った。グリフ様は黙って私の頭を撫でている。
「ミア、ありがとう……」
3人にまた頬を寄せられ、私はもうどうにもいたたまれなくなった。
「あ、あの、もう……部屋に行っても……?」
カイン様は頷く。グリフ様が立ち上がった。
「送ろうか?」
私はあわてて首をふり、本当に逃げるように居間を走り出た。
◆◇◆
「泣かせちゃったね」
「ああ、無理もないけどな」
3人はまた椅子に戻りながら、今までミアの座っていた長椅子を愛しそうに見る。
「おまえに抱かれる覚悟はしてきたんだろうけど。まさか、オレ達にいっぺんに迫られるとは思わねぇよな。……ちょっと可哀想だったけど……」
「いや、でも無理だよ! 半泣きになったミア、可愛すぎる……!」
「あんな顔見せられると、もっと泣かせたくなるな」
「……お前ら最低だよな……」
そして3人は、誰から先にミアの部屋へ行くか、真剣に話し合う。しかし結局決まらず、コインで決めたのだった……。
◆◇◆
私は自室へ駆け込むと内鍵をかけ、そのまま床にへたり込んだ。
「俺達3人のものになってくれ」
まさか、そんなことを言われるなんて。そして、あんな……。3人に触れられたことを思い出して、身体中がかっと熱くなる。恥ずかしさから逃れたい一心で、自分がそれを受けてしまったことも。
また涙が出てしまう。カイン様も言っていた、私が普通の娘なら……と。自分こそが一番それを思っているのに。
駄目だ。
また同じ穴に落ちてしまいそうになる自分を心の中で叱る。ルカ様とのことを決心したあの時、もう思い悩まないと決めた。だからこそ、勇者の専属魔導師という望外の地位と、心から尊敬できる騎士様たちといられる生活を得たのだから。
ひとつ頭をふって私は鏡に向かい、結い上げていた髪をときはじめた。
入浴を済ませてローブを畳んでいると、扉を叩く音がした。
「……はい?」
「ミア」
カイン様だ。私は息をひとつのみ込んでから、扉を開けた。
「入っていいか?」
私は黙って一歩下がる。カイン様はまっすぐ入ってきて、振り返って私がまた内鍵をかけるのを見ていた。
内鍵をかけ、私も振り返ってカイン様を見上げる。不思議なくらい、何も考えられなくて……ただカイン様の、水色の瞳に吸い寄せられていた。
どのくらい見つめあっていたのか。カイン様が私に、手を差しのべた。
近寄って、そっと手を重ねる。するとカイン様がその手をきゅっと握った。
「おまえは、強いな」
「……?」
私が首をかしげると、カイン様が微笑んだ。
「ずいぶん辛い思いもしているはずなのに……いつもそうして、まっすぐに俺を見る。その素直で、無垢な目が好きだ」
「……ほめすぎです、カイン様」
「さっきは悪かった」
「……いいえ。恥ずかしかっただけ……です」
するとカイン様が笑って、私の腰を抱いた。
「真っ赤になって、瞳を潤ませて。さっきのおまえは本当に可愛かった」
「カイン様……!」
咄嗟に身体を引こうとしたけれど、カイン様の腕ががっちりと私を抱えて放さない。もともと力で敵うはずがないのだ。
「あのまま、こうしたかった……」
そう言って、カイン様が唇を奪った。
「ん……!」
爪先が浮きそうなほど強く引き寄せられ、噛みつくように何度も何度も口づけては、カイン様の舌が絡みつく。ほどいた私の髪はカイン様の指でかき回され、今はうなじのあたりで握られている。
「ん、ふ……」
カイン様の激しい口づけに、身体から力が抜けていく。抱き寄せる手がなかったら、もう立っていられないかも知れない。
カイン様が唇を離した。
「は……あぁ……」
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「……え?」
「可愛い、ミア。たまらなく……そそられる」
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