41 / 104
41・新たな依頼 上
しおりを挟む「よし、じゃあ行くか」
村長さんと村の人達に見送られ、私たちは王都へ戻るため出発した。
今朝早く、王宮の連絡に使われる大きな白い鳥が村へやってきた。カイン様が陛下に願って使わせてもらったもので、至急戻るよう書いてあった。こちらのほうは、巡回の騎士を増やして注意させるから、と。
見送る人影が遠くなると、私は魔法で追い風を使い、馬のスピードを上げさせた。2頭の馬は行きはまる1日かけた道のりを、文字通り風のように駆け抜け、午後には王都モルシェーンに到着していた。
帰りはグリフ様の馬で戻った私に、町の人はまた騒いでいたけれど、のんびり応えてはいられない。カイン様がわざわざ使いをたてたということは、それ相応の理由があるはずだ。
私たちはそのまま「勇者の館」へ戻った。
館にはエリス様がいた。
「ああ、早かったね」
「ミアの魔法を借りてな……。で、どうした?」
「うん、すぐ次の討伐に出ることになりそうなんだ。……まあ、もうそろそろカインも戻るだろうから、話はそれからでいい。少し休んで?」
ひとまずお茶をいれ、グリフ様達が防具を外したりしているうちに、カイン様が戻ってきた。早速話をきく。
「昨夜、ぎりぎりで陛下にお目にかかることができたんだ……」
◆◇◆
もはや公務の時間は終えていたため、特に願い出て許された2人は、いつものサロンで国王と向かい合っていた。
「そうか、ギガントベアが14頭……」
カインから状況説明をうけた国王は、隅に控えていた男に何かを命じた。
「実はそのような不可解な大量発生が、最近多く報告されていてな……」
「本当ですか?」
すぐに男が戻ってきて、何か書き付けを手渡した。
「これだ。この1年と少しの間に、10件ではきかない報告が来ている。今回の討伐依頼も、わざわざそなたらに行ってもらうほどの内容ではなかったが、一度現状を見てもらいたかったのだ」
2人は頷いて書き付けに目を通した。
特定の魔物の異常発生は、ここ1年3ヵ月ほどの間に、国の至るところで起きていた。その数、17件。魔物の種類もさまざまで、初めのうちは比較的小物が多いが、最近では大がかりな討伐隊が組まれる規模のものもあった。
はっきり原因が分かるものは1件だけで、あとはすべて原因不明。一時的に大量に発生し、ある程度の期間が過ぎると潮が引くように数が減り、もとに戻る。
「町や村から遠いところで起きたものや、さほど害のない魔物の場合などは,報告されていない可能性もある。今回のギガントベアの場合も、もし村から遠ければ分からなかったかもしれない」
「ギガントベアはふつう森から出ませんからね」
「だが、行ってみて分かっただろう? 自然災害も、気候の変化も見られない。餌や天敵の数もとくに変わった様子もない」
「そうですね。……なのにいきなり特定の魔物だけが急増しています」
国王は深刻な顔で頷く。
「その通り。明らかに異常な事態だと言える」
2人も頷き、一礼して同意をしめす。
「そこで頼みたいのだ、カイン」
「はい、陛下」
「この件、そなた達に任せたい」
「任せる、とは……?」
カインは国王の言葉を待つ。エリスも黙ったまま謹聴の姿勢だ。
「この件について調べ、できることなら原因を突き止めて解決してほしい。それに伴って、今後新たにおきる異常発生にも、そなた達にあたってもらう。討伐に必要なら、城の騎士や魔導師を出して構わん。どうだ、受けてくれるか?」
カインはエリスと顔を見合わせて頷く。姿勢をただし、カインが一礼する。
「確かに、承りました。カインと配下4名をもってこの任に当たらせていただきます」
国王は安心したように頷いた。
◆◇◆
「と、まあこういうわけだ」
カイン様は話し終えてお茶を飲んだ。私たちはカイン様が陛下に断って写しをとってきた、例の書き付けを覗き込む。
「シルキーモルモットからブラックサラマンダーまでか。……本当に、魔物の種類もレベルもばらばらだな」
「発生場所も、東西南北すべてに、国内まんべんなく散ってる感じだよね」
それぞれ思ったままを口に出していく。するとウェイン様が聞いた。
「おい、書き付けにはないが、それより前には一件も起きてないのか?」
「昔から、何年かに一度、何らかの原因があっての異常発生はあった。ただ、だいたい原因がはっきりしているものだけだ。今回のようなのが続きだしたのはここからだ」
「……何が起きてるんだ? お前ら、この中のどれか、討伐に加わってないのか?」
「……ああ、オレこれは行ったぜ? ゴーレムキャット。すげえ数だった」
グリフ様が顔をしかめた。
「思い出した。この時は、腕力自慢と魔導師ばかり、かき集めて連れて行ったんだよね」
「それでもあの数は尋常じゃなかったぜ。あの時の剣は使い物にならなくなった」
「ゴーレムキャットって、見たこと無いんですけど……。岩で覆われた、猫というより虎ぐらいの……ですよね?」
「そう! それが、岩山を埋め尽くすようにいるんだ。気持ちわりいの何のって……」
「……ちょっと待って、それ……変じゃない? ゴーレムキャットがそんな密度でいたら、普通はとっくに共食いが始まっていそうなものなのに……」
「あれ……? そういや、そんな様子はなかったよな……」
エリス様が考えこんだ。
「群れないギガントベアが、2頭、3頭で襲ってきた。……共食いすることで知られたゴーレムキャットが、あり得ない密度で共存する……。何かがおかしいんだ」
カイン様がそれを聞いて、もう一度書き付けを見る。
「ゴーレムキャットの出た岩山はそれほど遠くない。明日、調べに行ってみよう」
◆◇◆
王宮の北東側に、王宮専属魔導師の住む一画がある。1人に1戸ずつ与えられる寮のような部屋は、居間に寝室、小さいながら作業部屋つきで流石に待遇が良い。
その奥まった一部屋の寝室で、昼間から男女が絡み合っていた。
「ああ、いい……! ねぇ、もっと激しく……!」
「……こうですか?」
男が腰を叩きつけるように振ると、女は派手に乱れる。
「あああ……! そう、そうよぉ、ああイクぅ!」
「うう! ああそんな、締め付けたら! 僕もイキますっ!」
その瞬間、女の身体がふわっと光った。
カーテンを閉ざした暗い部屋で、しばらく息遣いだけが響いて、やがて静かになった。
女は艶然と笑う。
「とっても良かったわ、可愛い貴方。……また来て下さる?」
男はまだ大人になったばかりのようで、女よりかなり歳下に見える。
「もちろんです! 貴女がそうおっしゃるなら、いつでも参ります、サラ様!」
男が部屋を出ていった後、魔導師サラは一言、
「へたくそ……」
と呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる