魔導師ミアの憂鬱

砂月美乃

文字の大きさ
53 / 104

53・欲しい 上

しおりを挟む
 ◆◇◆

 いつの間にこうなったのか分からない。ウェインの馬に乗っていて、急に身体がおかしくなって……? 途中、カインやグリフとも話したような気もするけど、今はエリスと馬に乗っている、らしい。

 身体は相変わらずというか……さらに悪い。
 身体中が熱い。そして馬が1歩進む度に、全身がざわめいて、下腹がきゅん、と疼く。
 助けて。どうにかして。この身体を鎮めて……。

 抑えきれずに、熱い息が洩れてしまう。
「はぁ……ん、あぁ、エリス……」
「ミア? 気がついたの?」
ああ、やっぱり変だ。エリスの声を聞いただけで、震えるほどの快感が、背中を駆け上がる。そして脚の間から、溢れてくる感覚……。

「あぁ、エリス、もうだめ……」
乳首は固く尖ってローブを持ち上げている。どうして、なんて思いはとうに忘れてしまった。ただもう、欲しい……。

 欲しい。

 私はエリスにすがりついて、ただそれだけを繰り返してしまっていた。



 ◆◇◆

「ん、はぁ……」
ミアが小さく喘いで、薄く目を開けた。
 出発してもうすぐ1時間になる。なるべく揺らして刺激しないようにスピードは抑えているから、到着まではまだ1時間以上かかるだろう。

 腕の中で悩ましげに喘ぎ、吐息を洩らし、時折震えるミアを抱いて馬を進めたこの1時間は、エリスにとっても永遠に続く苦行のようだった。

 すぐ目の前に、エリスのひと触れで今にも達してしまいそうなミアがいるのに、濡れたその肌に、触れることは許されない。
 頬を紅潮させて、甘い香りを放って。自分では知らないとはいえ、どれだけエリスを誘惑しているか。

 既に彼のものは、防具の下で存在を示しはじめ、エリスはいっそう困惑していた。馬の上でそういう状態になるのは具合が悪い。おまけに前にミアが乗っているのだから……。


「はぁ……ん、あぁ、エリス……」
喘ぐばかりだったミアが名前を呼んだ。少し意識が戻ったのだろうか。
「ミア? 気がついたの?」
声をかけると、さらに蕩けるような顔をする。ああ、これはまずい。エリスの額に脂汗が伝う。

 それなのに、ミアはエリスを見上げ、
「あぁ、エリス、もうだめ……」
そう言って力なくすがりつく。そして聞き取れないくらいの声で言った。
「欲しい……」

 エリスは耳を疑った。確かにミアの唇がそう言っていた。
「エリス……、欲しいの……」
一度口にして抵抗がなくなったのか、それとも既にうわごとのような状態なのか。どちらにしても、いつものミアなら言うはずのない言葉を繰り返し囁かれ……、エリスも限界だった。


 辺りを見回す。どこにも人の姿は見えない。
 少し先の小さな木立まで、落とさないよう馬を急がせた。ミアを抱いて馬を飛び降り、震える手で馬を繋ぐ。

 そのまま木立の中へ分け入り、柔らかい土の上にマントに包まれたミアを下ろした。ミアは唇を開き、潤んだ目でエリスを見上げる。
 防具を外しながら、エリスは必死で自分に言い聞かせる。
 ここで、こんなところで夢中になっては駄目だ。あまり時間がたてば、いつ誰かが、カイン達だって通るか分からないし、後で絶対にミアが傷つく。とりあえずミアの、どうしようもない疼きを止めるだけ……。

「ミア、おいで」
エリスは自分も座り、ミアを引き寄せて口づけた。
「っんん━━━━━っ!!」
抱き寄せた肩と腰が、エリスの手の中でガクガクと震え、かくん、と力が抜けた。それだけでもう達してしまったらしい。

「ミア?」
「はぁ……ん、エリス……、もっとして……」
エリスの背中を、言いようのない激しい感覚が駆け上がる。もうこのまま押し倒し、押さえつけて、思うまま……。
 背中を汗が流れるのを自覚しながら、エリスは頭を振って、危険な妄想を払い除ける。


「ミア、だったら、まず僕のお願いきいて?」
「……え?」
とろん、とした目でエリスを見るミア。おそらく意味が分かってはいないだろう。
「もっとして欲しいんでしょ?」
ミアの頬に手を触れると、それだけで震え、そして頷く。
「もっと……、もっとしてほしいの……」

 そんなミアを見ていたら、エリスは自分のほうがイってしまいそうだと思いながら、
「じゃ、まず僕を気持ち良くして?」
自分のものを出す。それを見た瞬間、明らかにミアの目が蕩けて、こく、と生唾をのんだのが分かった。

「教えたでしょ?」
そう言って腰をつき出すと、その通りに掴んで舐め始める。
「うぅ……っ」
今までのミアにすっかり刺激されていたせいで、それほどもたないだろうとは思っていた。
「んん、エリスぅ……、ほしいのぉ……」
もじもじと腰を振っておねだりするミアなんて、もう見られないかも知れない。だが、エリスは必死に耐える。

「まだ駄目だよ。じゃないと、もう止めちゃうよ?」
「いやぁ、やめないで……んん、むぅ……」
ミアは必死で口に含んで吸い上げ、手でも扱きはじめた。
「うぅ、ミア、そんなにしたら……!」
今に限っては、早いほうがいい。そう思っていたエリスだったが、どれだけ自分が切羽つまっていたか……、想像をはるかに超えていた。
「く……うっ、イく……!」
ミアの頭を押さえつけ、放つ。目が眩むほどの快感で震えた。

「んん━━━っ!? ん、くっ、ん」
魔力切れを避けようとする本能なのか、ミアは必死にすべて飲み下し、さらに吸いだそうとする。
「う、駄目だよミア……!」
慌ててミアを引き離すが、エリスのものは完全に立ち上がったままだ。
「あん、エリス……、もっと……」
言いながら手を伸ばしたミアの身体が、ふわっと光った。


「あ……、え……? わた、し……?」
ミアの目に、理性の光が戻る。
 やはりそうだった。思った通り、たとえ少しでもチャージされれば、発情した状態は治まるのだ。

 しかし問題は別だ。
 ミアが今までのことをどのくらい自分で覚えているか、まったく怪しい。どうやって説明したものか。
 ローブは一切乱れていないが、何をしていたか分からない筈はないだろう。

 さすがのエリスも、果てたばかりな上に、いまなお元気な状態では、説明など考えることはできなかった。
 ━━━もういい、かまうものか。
「……!!」
うなじを掴んで噛みつくように口づける。

 唇を離し、未だ呆然としているミアの前で、苦労して形だけでも防具を身に付けると、再びミアを抱き上げて木立を抜ける。
 馬にのせ、自分も飛び乗るとさっきと同じように片手で抱きながら、可能な限りの早さで駆け出した。



 ◆◇◆

 エリスに抱かれて疾走する馬上で、私は必死にエリスにしがみついていた。今までエリスが私を乗せて、こんなに速く走らせたことはない。そっと見上げる顔は怖いくらいで、なにも言うことができない。


 いったいどうしてこうなったのか。
 はっきり気がついたのは、さっきの木に囲まれたあの場所で。私はエリスに、というかエリスのモノに……手を伸ばしていた。
 口のなかに残る感覚で、何をしたのかはわかる。そこで気がついたのも、いくらか魔力が回復しているのもそのためだろう。

 ただ、その前が……。
 すべて頭に霞がかかったような、曖昧な記憶しかなく、しかも切れ切れだ。
 そのわずかな断片の私は、とても自分とは思えない。本当にあれが現実だったのかと疑いたくなる。
 私、本当にあんなことをしたの……? 

 しがみつくエリスの身体から汗の匂いがして、こうして抱かれて移動してきたことを思い出す。ただひたすら身体の疼きに耐え、ただこの身体を宥めてほしくて……。
 思い出すほどに、もう死んでしまいたいくらい恥ずかしい。しがみついて身を縮めると、目尻に涙が滲む。
 気づかれないよう願いながら、私は少しだけ泣いた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...