魔導師ミアの憂鬱

砂月美乃

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「……さあ、着いたよ」
エリスの静かな声で、はっと顔を上げると、そこは昨夜過ごしたあの小さな洞窟だった。
「……どうして?」
訳がわからない私を洞窟の奥に下ろして一度出ていき、おそらく馬を繋いだのだろう、すぐに戻ってきた。


「ごめん、ミア」
気がついてからずっと混乱していた私に、エリスが言った言葉がそれだった。
 どうしてエリスが謝るのか分からないでいる私をそっと引き寄せて、包み込むように抱きしめる。 

「ミアに言わないで、勝手にここまで連れてきてごめんね。それから、さっきのことも……。ミアは悪くないから。全部僕が勝手にしたことだからね」
そして額に唇をつける。

「ミアが泣く必要はないよ。悪いのは僕だから」
ああ、やっぱり気づかれてたんだ……、と思った時、ふと理解した。エリスは先手を打って「僕が悪い」と謝ることで、私が自分自身を責めることのないようにしてくれているんだ、と。

「ありがとう、エリス……。大丈夫、自分を責めたりしません。だから、謝らないで?」
「ミア……?」
エリスが私の顔を覗き込む。
「ただ、分からないのは……嫌。教えて。ウェインの馬に乗せてもらった途中から、私……、どうしちゃったんですか?」

たぶん、恥ずかしい話を聞かなくてはならないんだろう、と覚悟した私を、エリスはもう一度抱いた。
「座ろうか。少し長い話になるから」


 そしてエリスは話してくれた。洞窟の岩壁によりかかり、私を膝に抱いて。
 言われてみれば、私はいつも魔力が1000を切ったくらいで止めていて、あそこまで使ったことはなかったし、魔力切れ寸前であんな反応が起きるなんてことも知らなかった。

 それにしても、騎士や魔導師でいっぱいの中でそんな状態にならないで本当に良かった、とはいえ……。
「どうしよう、もう皆の顔見られない……」
やっぱり夢じゃなかったんだ、記憶の中の私は……。
 あまりにも恥ずかしくて、もう泣くしかなかった。エリスが私の頭を撫でてくれる。

「さっき言ったよ、ミアが泣く必要ないって」
「だって、私あんな……、みんな呆れたでしょう? エリスだって……」
「なんで、呆れる訳ないよ? あんなに可愛くて色っぽくて……」
いやいやをするように首をふる私の肩を抱いてエリスは笑い、私のうなじに口づけた。
「や、エリス……」
思わず身を捩った私の唇をとらえて口づけを落とし、エリスが言った。

「どんなミアだって、僕らは呆れたり、嫌いになったりしないよ」
そしてそのまま、唇が触れるほどの近さで話し続ける。
「まだ本当の意味では好きじゃない僕らなのに、こっちの都合で、僕ら3人のものになってくれてるミアに、余計なプレッシャーをかけたくなかった。だから言わなかったけど」

 それを言われると、私の胸が小さく痛む。こんなに大切にされ、求められているのに。
 初めて身体を重ねた時より、今のほうが何倍も好きで、心から大切な3人になった。けれど、そうしたら。今度は1人だけを好きになってしまうのが怖い。他の2人を失うのが怖い。
 時々考えてしまう。こんな身勝手な私は、3人の傍にいる資格などないのかもしれない、と。


 もうほとんど日が暮れてしまい、洞窟の奥にいる私達はお互いの顔もよく見えないけれど、それでもエリスには、私が顔を歪めたのが分かったらしい。

「ミアが悪いんじゃない。頼むから気に病んだりしないで? そのままでいいんだ 別に僕らの誰かを選ばなくてもいい。……それでも、愛してるんだ」
エリスはもう一度口づけて、私の肩に顔をふせる。
「愛してる。悔しいけど、カインもグリフも同じ気持ちだよ。今のままの、そのままのミアが好きなんだ」

「…………」
「ミア、愛してる」
何も言えず、私の頬をただ静かに涙が流れ落ちた。
 同じ「愛してる」を返せない私だけど、それでも、そのままでも、いいの……?


 涙が胸元にポタリと落ちた音で、エリスは顔を上げた。頬に口づけて、涙を吸いとってくれる。
「もう泣かないで、ミア……」
「エリス……」
しがみついた私をそっとマントの上に倒して、エリスが覆い被さった。





「ひっ!? あぁっ、ん」
もはやほとんど暗闇となった洞窟の中で、エリスがローブの前を開け、私の胸に手を触れた。それだけで私の身体は震え、はしたない声をあげてしまう。
「や、ああ、どうして?」
さっきの状態は治まっているはずなのに、変わらず私の肌は敏感過ぎるままだ。

「一度も触れてなかったからじゃない? さっきは口づけだけでイっちゃったんだからね。うん、僕もそうとうミアに刺激されてるから……同じかな?」
そう言って、エリスの唇が私の乳首を啄む。
「ああああぁ!」
それだけで身体中がぶるぶる震えて、もうイってしまいそうだ。するとエリスも本当に同じだったらしく、余裕のない声がした。

「ごめん、こんな敏感なミア……、もう駄目、優しくできそうにない……」
耳許で囁かれ、下腹が、きゅんと締め付けられる。
「ああ……ん」
頬に当てられた手にさえ感じてしまう、今の私。優しくなんかされたら、かえっておかしくなってしまうかもしれない……。
 それに、チャージされたとはいえ、半日近く火がついたまま耐え続けていた私の身体は、もう今さら抑えることはできない。それに……。


「優しくなくていいの……」
「ミア?」
「エリスの、したいようにして……? 今日、いっぱい……我慢してくれたんでしょ?」
一瞬、エリスの動きが止まった。それから、激しく口づけられ……唇を放してエリスが言った。

「なら……言って、ミア。さっきみたいに。僕が欲しい、って」
ローブを捲り上げ、いきなり下着が剥ぎ取られ、エリスの指が秘所をなでる。

「ああ、すごいよミア……こんなに……」
「ひぁああっ!」
触れられただけで蜜が溢れ出し、腰が疼く。
「ああ、あ、……はぁ……!」
「もう欲しいでしょ? 言ってごらん?」
「!?」
濡れた花びらを撫でているのは、エリスの手ではなくて━━━。

「ほら、これが欲しいでしょ? ミア……?」
「あ、あああ……」
もうだめ、何も考えられない。ただもう、それだけしか……。
「ミア?」
「ああぁ……、欲しい……。エリス、欲しいの……」

 言った瞬間に、エリスが呻き、私を一気に貫いた。
「━━━あああああぁぁぁ!」
そのまま全身を震わせて絶頂し、エリスが突く度に新たに痙攣する。瞼の裏が真っ白になり、ちかちかと星が瞬いて……。

「く、うぁぁぁっ! う……!!」
エリスが果てるのと同時に、私は意識を手放した。

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