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7・勇者の進撃 上
しおりを挟む残念ながらドルムス将軍の隊は、こてんぱんにされた。
巨人たちの力技は通じなかった。というか、大きな身体が格好の的にされ、片端から真っ二つにされていったというのが正しい。
「……まことに申し訳ございません」
ドルムスは大きな身体を可能な限り縮めて詫びたが、実のところ、私はあまり気を悪くしていなかった。将軍に落ち度があれば宰相のアードンが言うだろうし、そもそも命令したのは私なのだ。
「傷ついた者の回復を優先してやりなさい」
そう言って、あとはアードンに任せた。
ドルムスには悪いけれど、正直言って、今回は分が悪かったと思う。何しろ今までの雑魚勇者とは、本人の技量も、チームとしての動きも段違いなのだ。あの様子では、通常4日から5日かかる魔の森を、3日くらいで抜けてしまうかもしれない。
「だとすると、何階層くらいまで来るか……」
私は私室の魔鏡を眺めて、独り呟いた。過去に第5階層まで来た勇者の様子を見ていたけれど、その時の勇者とは比べ物にならないほど、ケントは強い。おそらく10階層までは、軽くクリアしてくるだろう。
でもその先は、魔物も段違いにレベルアップする。さらに20階層を超えると、各将軍が自らラスボスを務める。いくら召喚勇者ケントといえども、流石にサシで魔界の将軍たちに敵うとは思えないのだけど……。
ちなみに私は魔王だから、過去の勇者たちが魔物に敗れて倒れるのを見ても、別に何とも思わなかった。元・人間としては悪いけど、人間だって家に入り込んできた虫を潰すのに、躊躇しないでしょ? そんな感覚に近いのだ。
それでも、今度の相手は謙斗だ。今までの勇者たちと違って、顔も知らない相手ではない。別に会いたいわけじゃないけれど、向こうの世界から来た知人には違いない。
―――どうするかな。とどめを刺さずに私の前に連れて来させるか、それとも下手に顔なんか見ないほうがいいか。
本当はどうしたいのか、自分でもまだ決めかねている。でも、焦ることはない。最低でも一階層に半日から1日はかかるのだ。ケントたちがある程度進んで来れば、自然に私の心も決まるだろう。
再び魔鏡の画面を見ると、もう日が落ちてきていた。彼らも野営をすることにしたらしく、火をおこしてテントを用意しているようだ。魔の森でテントを張るなんて、怖いもの知らずなのか無謀なのか?
すると、急に画面が曇った。どうやら聖女が何か魔よけのような、かなり強力な術を施したらしい。なるほど、これならテントも張れるわけだわね。だったら1日そのままで進んでくればいいものを、さすがにそうはいかないらしい。
「へえ、やるじゃないの聖女様」
私はほくそ笑んだ。このあたりの感覚も、すっかり魔王になっている。当然このくらいの術には負けやしない。私の唱えた呪文で、画面は再び澄み渡った。
つい聖女の術に対抗してみたけど、この時は別に深い意味はなかった。彼らだって、あとは食事を摂って休むだけだろうと思っていたから。
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