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06.夜の帳が下りる町 1
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「その様子じゃ、WGも情報は掴めていないみたいだな」
「ああ。微かに残っていた魔力も、糸が細くて辿れない。内部犯か、外部からの攻撃なのかも今のところ分かっていない」
慎也の言うところ、WGでも何も掴めないほど、後を残さずに騒ぎ立てて行ったということだった。
「誰かを狙ったものなのか…ただ無差別に狩るのが目的の愉快犯か」
「お前を狙った犯行だったりしてな」
「……それもひとつの可能性として視野に含めてるよ」
慎也は冗談のつもりだったが、瑞稀にとっては有り得ない話ではなかった。
腕を上方に伸ばしながら、真面目に肯定する。
「今回は防げたから良かったものの、手掛かりなし。したがって具体的な対策も難しい。
これで終わるといいけど、まだ可能性がある限りは鈍ってられないからな」
一通り関節を動かし、手首を鳴らした瑞稀はそこでやっと慎也と向き合った。
「慎也はどうして俺を構うんだ?」
「どうしてって…」
一瞬、言い淀んで、考える素振りをする。言葉を選んでいるようだと言った方が近いかもしれない。
「お前は強い。…だけど、なんて言うか、弱くも見えるから…かな」
きっと悪い意味ではないということは、慎也の声色や表情で瑞稀にも伝わった。
夕暮れ時に瑞稀の部屋で、二人で会話した時と同じ表情だ、と不意に思い出した。
「前に俺に強いのかって聞いてきたよな?」
「ああ、確かに聞いたな」
唐突で慎也は目を丸くしたが、思い出したように頷いた。
「あの時慎也が言った言葉、覚えてるよ。俺も、目の前の人たちを失いたくない。全ての人を救いたいなんて、大きい事は言わないけど…だから、強く有りたいと思ってる」
一瞬、緊張を解いて笑う瑞稀だったが、やはり弱々しい面も拭えない姿だった。
「だからこうして鍛錬を?」
「まあ、充分過ぎるくらい寝たしな」
悪戯な表情で、揶揄うように言う。
観察したところで本質は分からない人物だ。喜んでいるのか哀しんでいるのか、徐々に触れる機会が増えてきた慎也でも分からない。
「今日は金曜日だったな。そろそろ学校にも顔を出すかな」
呟いた一言は、慎也の耳を通り抜けた。
「ああ。微かに残っていた魔力も、糸が細くて辿れない。内部犯か、外部からの攻撃なのかも今のところ分かっていない」
慎也の言うところ、WGでも何も掴めないほど、後を残さずに騒ぎ立てて行ったということだった。
「誰かを狙ったものなのか…ただ無差別に狩るのが目的の愉快犯か」
「お前を狙った犯行だったりしてな」
「……それもひとつの可能性として視野に含めてるよ」
慎也は冗談のつもりだったが、瑞稀にとっては有り得ない話ではなかった。
腕を上方に伸ばしながら、真面目に肯定する。
「今回は防げたから良かったものの、手掛かりなし。したがって具体的な対策も難しい。
これで終わるといいけど、まだ可能性がある限りは鈍ってられないからな」
一通り関節を動かし、手首を鳴らした瑞稀はそこでやっと慎也と向き合った。
「慎也はどうして俺を構うんだ?」
「どうしてって…」
一瞬、言い淀んで、考える素振りをする。言葉を選んでいるようだと言った方が近いかもしれない。
「お前は強い。…だけど、なんて言うか、弱くも見えるから…かな」
きっと悪い意味ではないということは、慎也の声色や表情で瑞稀にも伝わった。
夕暮れ時に瑞稀の部屋で、二人で会話した時と同じ表情だ、と不意に思い出した。
「前に俺に強いのかって聞いてきたよな?」
「ああ、確かに聞いたな」
唐突で慎也は目を丸くしたが、思い出したように頷いた。
「あの時慎也が言った言葉、覚えてるよ。俺も、目の前の人たちを失いたくない。全ての人を救いたいなんて、大きい事は言わないけど…だから、強く有りたいと思ってる」
一瞬、緊張を解いて笑う瑞稀だったが、やはり弱々しい面も拭えない姿だった。
「だからこうして鍛錬を?」
「まあ、充分過ぎるくらい寝たしな」
悪戯な表情で、揶揄うように言う。
観察したところで本質は分からない人物だ。喜んでいるのか哀しんでいるのか、徐々に触れる機会が増えてきた慎也でも分からない。
「今日は金曜日だったな。そろそろ学校にも顔を出すかな」
呟いた一言は、慎也の耳を通り抜けた。
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