* 闇の白虎

慈雨

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08.タチの悪い悪戯

12

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「予想以上に懐いちゃって、澪梨の物が欲しくなったんだろ」

その瑞稀の言葉を聞いた澪梨はしゃがみ込んで、グラナートと目を合わせる。
喋りはしないが、許しを乞うような目だった。

澪梨は長い長いため息を吐いた。
安堵なのか、どういう意味なのかは本人にしか分からないが。


「グラナート、これ あげるから」

首の後ろに両手を持っていき、一連のネックレスを首から外した。
そして、二重にしてグラナートに着ける。


「もう、こんなことしないで」

ふわっと笑った澪梨を見たのは、初めてだった。


「だから、澪梨。ただのタチの悪い悪戯いたずら、だよ。
俺らと近付いたからとか、関係ないんだ」

瑞稀は自身の机の上に座り、足を組み両手を机に着いて体重を支える体制をとっている。


「…その顔が嫌いだって何回も言ってる」

喧嘩を買うようなセリフだが、表情は以前のものより柔らかかった。


「…椎名さん、今日までのノート…写す?」

背後から近付いて来たのは、同じクラスの女生徒だった。不安そうに自分のノートを胸に抱き、首を傾げた。


「瑞稀も、教科書くらい見せてやれば良かっただろー!」

他の男子生徒も茶化すように叫ぶ。


「こいつ、椎名に教科書見せようとして、フラれてんだよ。そっとしといてやろうぜ」

悪ノリのように、慎也まで口を挟んだ。
瑞稀を揶揄からかう機会はなかなかないため、ここぞとばかりに悪い顔をしている。


「うるせえな! 慎也、ささくれ全部剥いてやろうか?」

「それ地味にめっちゃ痛いやつ!」

いつになく賑やかな放課後の中に澪梨はいた。

肩肘を張る必要は、とっくになかったのだ。


澪梨は長い間俯いていた。
喧騒を聴きながら、肩を少し震わせて。


「…りがとう」

「えっ?」

消え入りそうな、小さな声を瑞稀が拾った。
すると、澪梨は顔を上げて、しっかり瑞稀の方を見た。


「ありがとう、瑞稀」

「…!」

少し涙が滲んだ目で、澪梨はまた笑う。
瑞稀も少し目を見開いて、そしてその目を細めた。


「どういたしまして。…初めて名前、呼んでくれた」

瑞稀もまた、満足したように笑った。
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