* 闇の白虎

慈雨

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10.とある闇の事端

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じめじめとした梅雨が終わり、夏の訪れと共に、二宮の家に新しい命が生まれた。


父親はギルド団員として町を守り、正義感の強く屈強な男だった。

母親は穏やかで笑顔を絶やさない強い女性で、ごく一般的な、普通の家庭であった。


生まれたばかりの赤ん坊は、魔力を持たなかった。このケースは後天的に強大な魔力を授かる事が多いため、期待されつつ見守られるように育てられた。

夏が過ぎ、秋が過ぎる。泣いたり、笑ったり、沢山の新しい物を見ながら季節は巡った。


「みずき、優しい子になってね」

母親は何度も子どもに声を掛けた。
その言葉は父母ともに願っていることだ。

瑞稀は一歳半を過ぎて、ようやく一語を喋るようになった。周りの子どもよりは少し遅いそうだが、母親は気にせず子どもと二人の時間を過ごしていた。

その事を不安に思わなかった訳ではない。
でも不思議と瑞稀の笑った顔を見ると、心配なんてないように思えたのだ。


瑞稀が生まれてから、数えて季節が二回巡った。
誕生日を迎える日は生憎あいにくの戻り梅雨に見舞われた。


そんな雨につられるように、瑞稀の体調も変化した。
これまで何度も赤ちゃん風邪を引いて来たが、今回は様子が違う。

何時間も何日もうなされて、苦しそうにもがいた。解熱剤も、町の病院の薬も効かない。
母親は看病しながら、神に祈りを捧げることしか出来なかった。


父親が大きな仕事を終えて帰って来ると、二人で優れた医者の元へ連れて行った。
その医者はセントラルにおり、魔術にも長けていると地方にも名の届く程。頼りは彼しかいない。


「ウイルス性の風邪でしょう」

その医者の対応は驚くほど簡素で、言わば機械のようだった。
決められた文面を、決められたように述べるだけ。そこに感情なんてないように思える。

夫婦は医者に追求したが、まるで聞く耳を持たなかった。


処方箋を受け取り、薬を処方してもらう。
腑に落ちないが、その薬で回復する事を願うばかりであった。


幸いな事に、薬を飲ませると瑞稀の容態は安定した。診断こそ信憑性に欠けるものだったが、自分たちが心配し過ぎたのかもしれない。

そう思い始めた頃だった。


全ては動き、始まり、終わろうとしていた。
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