* 闇の白虎

慈雨

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10.とある闇の事端

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静かな夜に、呼び鈴がやけに響いた。
その日も瑞稀は薬を飲み、寝静まったところだった。

父の正親がゆっくり扉を開ける。
何事か、そこには軍服を着た兵隊がずらりと並んでいた。


「二宮様のご自宅ですね。WGから参りました」

代表一人が言う。正親は余計に怪訝な顔を見せた。


「政府がどのような要件で?」

「瑞稀さんを研究対象として引き取りに」

宣戦布告のようだった。
ズカズカと何人かが扉から押し入るのを、正親は止めきれない。


「申し訳ないが、政府の決定事項です。拒否権はありません」

瑞稀の眠る部屋は2階にあった。
そこにはまだ母親の明日美がいる筈だ。


『…明日美、瑞稀が危ない』

正親は祈るように目を瞑る。

家に侵入した兵士は一部屋ずつ確認していき、とうとう瑞稀の部屋を開けた。

ベッド脇の椅子に腰掛けた明日美に近寄る。

ベッドにはーー瑞稀はいなかった。


「奥様、お子さんはどこへ?」

「あら、今日は私の実家にお泊まりよ」

ふわりと、優しく明日美は微笑んだ。


「ーーチッ」

兵士は舌打ちをする。
明日美の元へ歩み寄り、肩を押して身体を思い切り後ろに投げ飛ばす。

明日美は床に身体を打ち付けた。


「無駄な抵抗を…」

「やめて!」

兵士がベッドへ手をかざし、何か唱える。
声が小さすぎて届かなかったが、それでも明日美を絶望させるのに十分だった。


ベッド上が少し光を帯びて、それが収まると、眠る瑞稀が姿を現した。


「ーー瑞稀に触るな!」

そこへ、正親が入って来た。手には拳銃を構え、兵士に照準を定めている。
そう広い部屋ではない。この距離だと どう打っても外すことはないだろう。


「何の研究だ? 瑞稀を連れて行ってどうする」

明日美も隠し持っていた銃を構えた。
その兵士は やれやれといった風に、両手を上げた。


「極秘事項なので、お教え出来ないんですが…」

「俺たちの子どもだ!」

「子どもさんは、もういないものと思っていい。
幸い、お二人はお若い。まだ子作りのチャンスはあります…」


パァンと銃声が響いた。
威嚇の為に、正親が打ったものだ。
兵士の横を通り抜け、壁に当たってそれは止まったが、その一発の弾丸は兵士の言葉を差し止めた。
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