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11.灯りの途絶えぬ一夜
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瑞稀は部屋の奥の、更なる扉に入って行き、トレーを抱えて出てきた。
フワッとコーヒーの香りが漂い、空調の風を揺らす。
「瑞稀の淹れるコーヒーは最高なんだよなあ。
客人なのに、すまないね」
直隆は慎也を来客用の椅子に通すと、自分もその向かいに座った。
瑞稀は慣れたように、アイスコーヒーをそれぞれの前に置いて、トレーを引く。
そして、慎也の隣に腰を下ろした。
慎也は、ジッと目の前に置かれたコーヒーを睨んだ。明らかに他とは色が異なったグラスの中身。
瑞稀の方を、何か言いたげに見る。
「なんだよ。慎也はミルクたっぷりじゃないと飲めないだろ?」
「…そんなこと」
ない とは言えない、が。見透かされていたのが少し悔しくて、口を噤む。
けれど、口にしたコーヒーは爽やかな味わいで、乾いていた喉を潤した。
「仲が良いんだね、君たち。おじさん妬けちゃうな」
ニヤニヤと二人の様子を見ていた直隆は、冗談っぽく冷やかす。
「で、ここに坂口くんを連れて来たって事は、例の…」
「ああ。この前言ってた、信用出来る仲間だ」
対して、瑞稀は恥ずかしげもなく言い切った。
**
「アカネ~、まだ終わらないの?」
薄暗い廊下からひよっこりと部屋に顔を出したのは、いつかヒカリと会話していた アイという少女だった。
「うるさいな、こんな大量に すぐ出来るわけないだろ」
「順調に進んでる? 私も手伝おうか?」
アイはアカネと呼んだ、紅の髪をした少年に近付く。
そこには大量の小さな麻袋が山積みになっていて、アカネはそれをせっせと拵えているようだった。
「アイが手伝ったら、折角の努力が水の泡だ」
「ねえねえ、それってジョーク? 笑っちゃう」
アイはクスクスと笑いながら、両手の間に水の塊を出現させた。
「わっ! マジで辞めろって!」
「ふふ~、それ、パーンっ!」
アカネは本気で焦り、アイに懇願する。
アイの水の魔術がここで繰り広げられると、全てがゼロに戻ってしまう。
だが、アカネの制止も虚しく、アイはその水の塊を上方向に投げた。
弾けるような音が鳴り響き、辺り一面にフワフワと泡玉が浮かぶ。
「えへへ~、しゃぼん玉だよ。
名付けて、“俺の努力が水の泡”! …なんちって」
フワッとコーヒーの香りが漂い、空調の風を揺らす。
「瑞稀の淹れるコーヒーは最高なんだよなあ。
客人なのに、すまないね」
直隆は慎也を来客用の椅子に通すと、自分もその向かいに座った。
瑞稀は慣れたように、アイスコーヒーをそれぞれの前に置いて、トレーを引く。
そして、慎也の隣に腰を下ろした。
慎也は、ジッと目の前に置かれたコーヒーを睨んだ。明らかに他とは色が異なったグラスの中身。
瑞稀の方を、何か言いたげに見る。
「なんだよ。慎也はミルクたっぷりじゃないと飲めないだろ?」
「…そんなこと」
ない とは言えない、が。見透かされていたのが少し悔しくて、口を噤む。
けれど、口にしたコーヒーは爽やかな味わいで、乾いていた喉を潤した。
「仲が良いんだね、君たち。おじさん妬けちゃうな」
ニヤニヤと二人の様子を見ていた直隆は、冗談っぽく冷やかす。
「で、ここに坂口くんを連れて来たって事は、例の…」
「ああ。この前言ってた、信用出来る仲間だ」
対して、瑞稀は恥ずかしげもなく言い切った。
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「アカネ~、まだ終わらないの?」
薄暗い廊下からひよっこりと部屋に顔を出したのは、いつかヒカリと会話していた アイという少女だった。
「うるさいな、こんな大量に すぐ出来るわけないだろ」
「順調に進んでる? 私も手伝おうか?」
アイはアカネと呼んだ、紅の髪をした少年に近付く。
そこには大量の小さな麻袋が山積みになっていて、アカネはそれをせっせと拵えているようだった。
「アイが手伝ったら、折角の努力が水の泡だ」
「ねえねえ、それってジョーク? 笑っちゃう」
アイはクスクスと笑いながら、両手の間に水の塊を出現させた。
「わっ! マジで辞めろって!」
「ふふ~、それ、パーンっ!」
アカネは本気で焦り、アイに懇願する。
アイの水の魔術がここで繰り広げられると、全てがゼロに戻ってしまう。
だが、アカネの制止も虚しく、アイはその水の塊を上方向に投げた。
弾けるような音が鳴り響き、辺り一面にフワフワと泡玉が浮かぶ。
「えへへ~、しゃぼん玉だよ。
名付けて、“俺の努力が水の泡”! …なんちって」
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