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11.灯りの途絶えぬ一夜
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夕方になってもまだ日は高く、夏の日の長さを感じる。
瑞稀と慎也は、学園の校舎の中を歩いていた。
私服で学園を歩くのは、少し違和感があってソワソワする。
「急にごめんな。直隆さんに呼ばれたんだけど、慎也にも聞いて欲しい話だから」
「直隆さんって…学園長か?」
「そう。佐倉直隆…絢音さんの弟だよ」
二人の足は学園長室に向かっている。
慎也も学園長に個人的に会った事はなくて、どういう人物なのかは分かっていない。
だけど、集会でのあっさりした短い挨拶は、全校生徒に好印象を持たれていた。
「初めに言っておくけど…直隆さん、公の場では かなり猫かぶってるから」
さらりと発言した瑞稀の言葉は、簡単に慎也の考えを覆す。
絢音といい、直隆といい、裏の顔があるのは血筋なのかも知れない。
「直隆さんは情報通で、今までも調べ物を頼んだりしててね。
それに、廃墟マニアなんだ。今回は、ある場所の調査を依頼してた」
「ちなみに、どこを?」
「うん、慎也も行った事がある場所だよ」
そうしているうちに、学園長室の前にたどり着いた。瑞稀は深呼吸をして、控えめに扉をノックした。
「失礼します…」
ゆっくりとした動作で扉を開ける。
一歩、部屋に踏み込んだ瞬間、直隆の顔が目の前に見えた。
瑞稀はすかさず右手を差し出して、それ以上近付かないようにガードする。
「…いい加減、暑苦しく出迎えるの やめてくんない?」
その右手をグッと前に突き出して、直隆を後方に押し飛ばす。
だが直隆はうまい具合に宙返りし、綺麗に着地した。
「やるな、瑞稀。流石 姉貴が仕込んだだけある」
「…ここは涼しくて快適だな。直隆さんが居なかったら、入り浸ってるところだ」
ポーズを決めた直隆を、瑞稀は華麗にすり抜ける。
その対応も直隆は慣れていて、気にも留めていないようだった。かなり強靭な心の持ち主である。
「…おや、君は」
瑞稀が部屋に入り、漸くその後ろに茫然と立ち尽くす慎也を確認した直隆は、にこやかに彼を迎えた。
「坂口 慎也くんだったかな」
「あ、はい。…えっと」
「自分で言うのもなんだけど、私は少々過保護でね。瑞稀と仲の良いクラスメイトは把握しているんだ」
名前を認知されていた事に驚いたが、その理由はとても心の暖かくなるものだった。
夕方になってもまだ日は高く、夏の日の長さを感じる。
瑞稀と慎也は、学園の校舎の中を歩いていた。
私服で学園を歩くのは、少し違和感があってソワソワする。
「急にごめんな。直隆さんに呼ばれたんだけど、慎也にも聞いて欲しい話だから」
「直隆さんって…学園長か?」
「そう。佐倉直隆…絢音さんの弟だよ」
二人の足は学園長室に向かっている。
慎也も学園長に個人的に会った事はなくて、どういう人物なのかは分かっていない。
だけど、集会でのあっさりした短い挨拶は、全校生徒に好印象を持たれていた。
「初めに言っておくけど…直隆さん、公の場では かなり猫かぶってるから」
さらりと発言した瑞稀の言葉は、簡単に慎也の考えを覆す。
絢音といい、直隆といい、裏の顔があるのは血筋なのかも知れない。
「直隆さんは情報通で、今までも調べ物を頼んだりしててね。
それに、廃墟マニアなんだ。今回は、ある場所の調査を依頼してた」
「ちなみに、どこを?」
「うん、慎也も行った事がある場所だよ」
そうしているうちに、学園長室の前にたどり着いた。瑞稀は深呼吸をして、控えめに扉をノックした。
「失礼します…」
ゆっくりとした動作で扉を開ける。
一歩、部屋に踏み込んだ瞬間、直隆の顔が目の前に見えた。
瑞稀はすかさず右手を差し出して、それ以上近付かないようにガードする。
「…いい加減、暑苦しく出迎えるの やめてくんない?」
その右手をグッと前に突き出して、直隆を後方に押し飛ばす。
だが直隆はうまい具合に宙返りし、綺麗に着地した。
「やるな、瑞稀。流石 姉貴が仕込んだだけある」
「…ここは涼しくて快適だな。直隆さんが居なかったら、入り浸ってるところだ」
ポーズを決めた直隆を、瑞稀は華麗にすり抜ける。
その対応も直隆は慣れていて、気にも留めていないようだった。かなり強靭な心の持ち主である。
「…おや、君は」
瑞稀が部屋に入り、漸くその後ろに茫然と立ち尽くす慎也を確認した直隆は、にこやかに彼を迎えた。
「坂口 慎也くんだったかな」
「あ、はい。…えっと」
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