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11.灯りの途絶えぬ一夜
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慎也はまた瑞稀の方を見た。
先日話して実感したが、瑞稀の罪の意識は よほどの事がなければ、消えたり小さくなることはないだろう。
あまり言葉にはしないけれど、瑞稀は思ったよりももっと深くまで考えていて、自分のことは優先順位の最も下の方に位置付けている。
慎也はそれを否定するつもりはないが、少し哀しい気持ちになるのは事実だった。
「なあ、慎也も賛成やろ?」
「え? あっ、ごめん。何だっけ?」
そう考えているうちに、いつの間にか会話に入っていた彰が慎也に賛同を求めた。
当然聞いていなかった慎也は、慌てて三人の元へ歩み寄る。
彰は呆れ気味にだが、また説明してくれた。
「せっかくやから、今年の納涼祭はみんなで浴衣着いひん? って話してたとこや」
「僕、浴衣の着付けわからないんだけど」
彰が提案者で、澪梨がどうやら反対派のようだった。
「着付けなら俺 出来るけど。
…って、これはアウトな発言か」
瑞稀が着付けを名乗り出たところで、みんなの注目が集まった。
すかさず予防線を張り、冗談っぽくやり過ごそうとする。
(…着付けが出来るとか、絢音さんの指導か?)
慎也が予想を立てたが、ほぼその通りである。
澪梨がじっと瑞稀を見る。
瑞稀は少し気まずそうに、笑いながら視線を逸らした。
「…じゃあ、瑞稀にお願いしようかな」
「えっ?」
「みおりん!?」
瑞稀も驚いて声を上げるが、それ以上に彰が悲鳴のような絶叫を発した。
澪梨の浴衣姿を見たいという期待はあるが、それを瑞稀が着せるとなると別問題だ。
「みおりん、ええのん…?」
笑顔が引きつりながらも、紳士的に振る舞おうと努める彰は少し痛ましい。
「瑞稀なら、上手に着せてくれそうだし。当日はよろしくね」
「あ、うん…。澪梨が大丈夫なら、喜んで引き受けるよ」
商談成立。だが、恨めしそうな視線を察知して、瑞稀は少しばかり後悔した。
一部始終を傍観した慎也も、こればかりは彰を気の毒に思うのだった。
結局、全員が浴衣を着て納涼祭に行くことになり、イベントに対するワクワク感が増す。
『無事に開催されるといいね』
瑞稀は慎也に精神感応を送る。
二人はWGでの活動で、納涼祭を巡回する事になっていた。
ただ、異常が起こらない限りは、自由な服装で 覆面パトロールで良いとの通達なので、何もないことを願うばかりである。
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「なあ、慎也も賛成やろ?」
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そう考えているうちに、いつの間にか会話に入っていた彰が慎也に賛同を求めた。
当然聞いていなかった慎也は、慌てて三人の元へ歩み寄る。
彰は呆れ気味にだが、また説明してくれた。
「せっかくやから、今年の納涼祭はみんなで浴衣着いひん? って話してたとこや」
「僕、浴衣の着付けわからないんだけど」
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「着付けなら俺 出来るけど。
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すかさず予防線を張り、冗談っぽくやり過ごそうとする。
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「…じゃあ、瑞稀にお願いしようかな」
「えっ?」
「みおりん!?」
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「みおりん、ええのん…?」
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「瑞稀なら、上手に着せてくれそうだし。当日はよろしくね」
「あ、うん…。澪梨が大丈夫なら、喜んで引き受けるよ」
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結局、全員が浴衣を着て納涼祭に行くことになり、イベントに対するワクワク感が増す。
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