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11.灯りの途絶えぬ一夜
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暑い暑い夏が始まった。
蝉が生を謳歌し、太陽が日差しを惜しみなく浴びせる夏。
柳緑学園が夏休みに入ったが、補習もなく、チーム対抗鬼ごっこの特典で課題免除の瑞稀たちは、その休暇を存分に堪能していた。
「おー、出来てきたな、巨大提灯」
「納涼祭、もうすぐだもんね」
瑞稀、慎也、彰に澪梨の四人は、町の図書館で涼を取るついでに、出来上がりが見えてきた巨大提灯を見物に来たのだ。
トンカチで木材や鉄筋を叩く音がそこかしこから聞こえてくる。
町はイベントに向かって、盛り上がりを見せていた。
「瑞稀はセントラルの納涼祭、初めてなんやろ?」
「ああ、うん。随分規模が大きいみたいだな」
瑞稀は物珍しそうに、辺りをぐるりと一望した。
とても広範囲に小さな提灯が紐に括られて、吊るされている。
「お祭りの最後に、巨大提灯のバックに花火が上がるんだよ」
「へえ…澪梨もそういうの、好きなんだ?」
「うん、綺麗なものは好きかな」
澪梨は巨大提灯を指差す。
広場で飛び出すように聳え立つその提灯は、でんと大きく身構えて誇らしげに見えた。
(いつも通りなんだよな…瑞稀)
慎也は澪梨と楽しそうに話す瑞稀を見ていた。
慎也が瑞稀の過去を知ったからといって、その過去が変わるわけではない。
瑞稀はたくさんのものを抱えながら、今までも 何でもないように振る舞っていたのだ。
変わったのは、慎也の見え方だった。
瑞稀と澪梨をよそ目に、ちょいちょいと彰が慎也を呼び寄せる。
「慎也もみおりん狙い?」
「は? いや、そういうのじゃないけど」
「ふうん。でも、最近慣れてきて なんや可愛ない?」
彰はハートマークを浮かべて澪梨に視線を送っている。
慎也はその様子を見ながら、ここまで気持ちを晒け出せる事に、素直に関心を抱いていた。
「慎也が候補から外れるっちゅうことは…ライバルは瑞稀か。こりゃ手強いなあ」
「…選ぶのは椎名だからな」
「辛辣!」
的を射た意見なだけに、その言葉は余計に彰の心にグサッと刺さった。
「…瑞稀のそういうの、聞いたことないけどな」
「そうなん? みおりんの私物 紛失騒動があった時、結構必死やったから、てっきり気があるんやと思うとったけど」
「あの時のは、そんなんじゃないと思うぞ」
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トンカチで木材や鉄筋を叩く音がそこかしこから聞こえてくる。
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とても広範囲に小さな提灯が紐に括られて、吊るされている。
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「へえ…澪梨もそういうの、好きなんだ?」
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澪梨は巨大提灯を指差す。
広場で飛び出すように聳え立つその提灯は、でんと大きく身構えて誇らしげに見えた。
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「は? いや、そういうのじゃないけど」
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「…瑞稀のそういうの、聞いたことないけどな」
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