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呼ばれて、沈む
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ごうがおれを呼ぶ。苦しいような、切ないような、すこし切羽詰まった声で。イオ。そう呼ばれるたびに、身体の芯が痺れて、悦びを示すように大きくうねる。
お腹の中を抉るように突かれてもうまともな言葉は紡げないから、ごうと同じように、おれはごうを呼ぶ。ごう、ごう。
「い、く……っ!!イオ……っ」
年子の兄、ごうがおれを呼ぶたび、おれは上等な何かになったような気がする。こんなふうに身体を繋げて呼ばれるようになるなんて、考えてもいなかったけど。イオ。そう呼ばれたら振り返る。目を合わせる。唇を上げる。ごう、と呼ぶ。息を吸って、吐くみたいに。
「ぁあっ……!!あ、ん……おれも、ごぉ……っ」
“好きだよ”とか“あいしてる”の代わりに名前を呼ぶ。そうやって二十数年、生きてきたのだ。
気だるい身体をシーツに投げ打って、枕に顔を突っ伏すことで、隣で力の抜けた顔(なのに余計にくっきりとした二重が目立つというのはどういう仕組みなんだろう)でぼんやりとおれを見つめるごうの視線から逃げる。「なに」「見すぎ、ごう」「だって見たいじゃん、そりゃ」どこか甘い声に、鼓動がこれ以上高鳴らないように枕に向かって深呼吸する。ふだん運動しないおれにとっては、ごうの相手だって結構な運動量なんだ。これ以上やわなハートに負担を強いないでほしい。
「何照れてるの、かわい」
ごうとこうなって結構な年月が経つけど、事後の空気にはいまだに慣れない。意趣返しのつもりはなかったけど、「ごうっておれの名前よく呼ぶよね、……イくとき」見なくてもわかる、ニヤついてるであろう顔にゆるくグーを当ててみる。
「……そりゃあ」
だけど自分で言っといてごうの返事を聞くのが恥ずかしくなって、「そういやさぁ」と思いつくままに口を開く。さっき駆け上っていくときに、不意に思い出した記憶。会話のイニシアチブをカンタンに譲って、ごうが寝っ転がったまま肩肘をつく格好でおれの方に向いた。
「覚えてる?」
モデルを始めた頃、芸名はどうするという話になって、おれは気付いたら事務所の社長に「イオ」と答えていた。庵、って名前をほんのすこし短くした、まだ幼いごうが付けた呼び名。前もって考えていた訳ではなかったし、本当にするりと口をついて出た案、というにはストレートすぎるそれが「いいじゃない」の一言でそのまま採用された。
誌面やショーに出るときは「IO」表記だけど、以来おれは十年弱、この名前でギョーカイを生きている。
そのことを報告したとき、ごうが言った言葉。今でも、その声色とか、ごうの着てたTシャツ(有名なバンドのバンTだった)に記された文字のフォントとか、部屋の匂いとか(ごうがそのころ使ってたワックスと制汗スプレーの混じった匂い)、を鮮明に思い出せる。
「ごうがなんて言ったか」
肘をついたごうは少し眠たげだった目を少し大きくして、「えーおれ何言ったかな?いいじゃん、とかそういう感じ?」と眉を寄せる。「んな薄い返事だったらわざわざ話題に出さないでしょ」ふっと笑うと負けず嫌いに火が着いたようで、「ちょっと待って、思い出すから」と目を閉じて記憶の世界に行ってしまった。ごうの視線から逃れたおれは、何となくさみしくなってゴロゴロ転がってごうの胸元に頭を差し入れる。鍛えられた胸筋に頬を当たると「くすぐったい」やわらかい声で言いながらごうがおれの髪を漉く。その手つきはとうぜんに優しくて、ごうの長くて、関節のしっかりした指が大好きなおれはシたばっかというのもあってぽやんとしてしまう。あーだめだ、ねむい。自分で言い出しておいて、今更こんな話題を出すことに気恥ずかしさとちいさな罪悪感をおぼえたおれは、意識して眠気の糸をたぐりよせる。
「ごめん、思い出せない……」
「んー……」
何分くらい経っただろう。結構な時間粘ったごうはついに根を上げて、おれの顔を覗き込んだ。軽く目を閉じていても感じる、ごうのあったかくて真っ直ぐな視線。
「うわ、放置して寝ないでよ、気になるじゃん」
「きになる……?」
「うん。おれなんか引っかかること言った?だって結構前だよね?それ今思い出すって」
「……」
「イオ?イオさん?おーい庵くーん」
ぺちぺちと頬をやさしく叩きながら、ごうがおれに布団をかける。起こしたいのか寝かしたいのかわからないな、と思ったらおかしくて、おれはちょっと笑った。
ごうとふたりきり。身体を繋いで、離れたあともくっついて。ごうの身体はあったかくて、火照った肌に触れるシーツはやわらかく、ほんのりごうの匂いがする。
しあわせだな、と思った。生ぬるく肌を撫でる波に浸るみたいに、しみじみと。
だから観念して口を開いた。転んだあと、大好きな人にそっと傷口を見せるみたいに。
「ごう、ね。『イオにしたの?』って嬉しそうに笑って、ちょっとだけ黙って。……そんで言ったの」
『俺だけのイオだったのにな~』
冗談っぽく言ったあと、ごうはこうも続けた。これからは、皆のイオになるんだね。でも楽しみだね、世界中の人が、イオのことみて「かっこいい!」って言うの。
興奮したようなごうの言葉は、パンパンになったおれの胸には入りきらなかった。“俺だけのイオだったのに”そんな微かな、子どもが拗ねるような些細な独占欲。ずっと、物心ついたときからずっとごうのことを、まともな人が家族以外の相手に抱くような感情をもって想っていたおれには、その一言の破壊力はすさまじくて。
『ごう専用じゃありません』
動揺を悟られないように、クールなふりをするので精いっぱいだった。
『えーそうなの?でも名付け親?は俺だよ!?』
熱くなる耳を伸びかけの髪をさりげなく引っ張って隠すのに必死だったおれは、誇らしげなごうの顔を、直視できなくて。ごうが何の気なしに言ったであろう一言が、うれしくて、苦しくて、でもやっぱりうれしかった。油断したら泣きそうで、水気がたまってく鼻じゃなくて口で短く呼吸して。そんな自分がばかみたいで。
『将来おれが有名になったら取材が来るかもね』
『ホントだ!イオ、という名前はお兄さんがつけたんですよね?とか言われるのかな』
『かもね。コメント考えといてね~』
軽口を叩いて部屋を出て、会話を終わらせた。そんな記憶。
今、ベッドの中で、ごうにこの名前を呼ばれることを奇跡だと思う。こうやって、裸で身を寄せ合っていることを、奇跡だと思う。
「イオ……?」
揺れたごうの瞳、こんなキレイなレンズの中に、自分が映っていることを、奇跡だと。
「ごう、おれはね」
ごうがたまに見せてくれる、子どもみたいな独占欲。無邪気で、透き通った、ごうの“弟”として一年十ヶ月遅れて生まれたおれだけの特権。
「……それだけで、きっとおれは百年でも千年でも片想いができた。」
それはちっとも大袈裟なんかじゃない、おれの人生でいちばんの誇りで、罪だ。
「……片想いじゃないじゃん」
穴の開きまくったおれの言葉をきちんと掬って、ごうが拗ねたようにちょっと低い声を出す。
「いまは、ね」
そんなごうが愛しくて、おれは笑う。今は、違う。昔と違って、ごうはおれが自分に向けた恋愛感情も欲も知っているし、同じだけのものを返してくれる。今は。
「やっぱり奇跡だなぁ……」
独り言みたいに呟くと、ぐい、と肩を引き寄せられた。真剣なごうの顔が近づいて来て、目を閉じないまま唇が触れる。ふに、むに、と角度を変えて何かを確かめるように触れたあと、どちらかともなくはぁ、と息を吐いたら、それが合図みたいに舌が這入ってくる。性急な舌の動きについていけずに、おれは簡単に呼吸の仕方を忘れる。
「ご……ぉ……っ」
溺れる。
どんどん浅くなる呼吸に硬い胸を押しても、ごうは離れない。「は……ぁ……っごぉ……」息継ぎを放棄して縋るように名前を呼んだら、ごうは夜、ほんの短い時間眠りにつく前の、昼間は獰猛な獣のような目をしておれを見た。
「奇跡なんかじゃ、ないよ」
そのまま伸し掛かって、まだ柔らかいおれの身体を一気に貫く。
「うぁああっ……!!」
「そんなキレイな……儚いもんじゃないでしょ、こんな欲望」
「く、ぁ……っ!ま、くるし、ごぉ……んぁあっ……!!」
最初から最奥を叩く激しい律動に、胎内が鈍い音を立てる。それでも身体はごうを受け入れたがって、急速に蕩けていく。ごうのカタチに、熱に、ぴたりと沿うように、勝手に粘膜がうねり始める。
「俺だけの“イオ”ならいいのに、なんて今でも……いつでも思ってる」
歪んだ唇、吐き捨てるような声、逃がさないと腰を掴む強い力。昼間の、すべてを照らす明るい光のようなごうにはそぐわない全てが、おれにとってはそのまま、あの頃のおれが喉がカラカラに乾いて血を吐くほど欲しかった、掛け値なしの愛でしかなくて。
何も着けていないごうの分身が、激しい律動と濡れた摩擦におれのナカで膨らむ。
「うぁっ、あぁっ、い……っ!!は、んぁっ」
いとも簡単に言葉を手放したおれは、ただ必死に手を伸ばして、どこか乾いた目をしたごうを抱き寄せる。尽きることのない欲望に、きっとおれも同じ目をしている、と思いながら。“好きだよ”とか“あいしてる”とか、言えない代わりに名前を呼ぶ。
“ごう”。
きっとおれはこの世界に産み落とされた瞬間、産声とともにそう叫んだんじゃないのかなと思いながら。
罪の証でもある命の源を身体の奥に注いで、ごうの、兄の唇がおれを象る瞬間を、目の裏に焼き付ける。
お腹の中を抉るように突かれてもうまともな言葉は紡げないから、ごうと同じように、おれはごうを呼ぶ。ごう、ごう。
「い、く……っ!!イオ……っ」
年子の兄、ごうがおれを呼ぶたび、おれは上等な何かになったような気がする。こんなふうに身体を繋げて呼ばれるようになるなんて、考えてもいなかったけど。イオ。そう呼ばれたら振り返る。目を合わせる。唇を上げる。ごう、と呼ぶ。息を吸って、吐くみたいに。
「ぁあっ……!!あ、ん……おれも、ごぉ……っ」
“好きだよ”とか“あいしてる”の代わりに名前を呼ぶ。そうやって二十数年、生きてきたのだ。
気だるい身体をシーツに投げ打って、枕に顔を突っ伏すことで、隣で力の抜けた顔(なのに余計にくっきりとした二重が目立つというのはどういう仕組みなんだろう)でぼんやりとおれを見つめるごうの視線から逃げる。「なに」「見すぎ、ごう」「だって見たいじゃん、そりゃ」どこか甘い声に、鼓動がこれ以上高鳴らないように枕に向かって深呼吸する。ふだん運動しないおれにとっては、ごうの相手だって結構な運動量なんだ。これ以上やわなハートに負担を強いないでほしい。
「何照れてるの、かわい」
ごうとこうなって結構な年月が経つけど、事後の空気にはいまだに慣れない。意趣返しのつもりはなかったけど、「ごうっておれの名前よく呼ぶよね、……イくとき」見なくてもわかる、ニヤついてるであろう顔にゆるくグーを当ててみる。
「……そりゃあ」
だけど自分で言っといてごうの返事を聞くのが恥ずかしくなって、「そういやさぁ」と思いつくままに口を開く。さっき駆け上っていくときに、不意に思い出した記憶。会話のイニシアチブをカンタンに譲って、ごうが寝っ転がったまま肩肘をつく格好でおれの方に向いた。
「覚えてる?」
モデルを始めた頃、芸名はどうするという話になって、おれは気付いたら事務所の社長に「イオ」と答えていた。庵、って名前をほんのすこし短くした、まだ幼いごうが付けた呼び名。前もって考えていた訳ではなかったし、本当にするりと口をついて出た案、というにはストレートすぎるそれが「いいじゃない」の一言でそのまま採用された。
誌面やショーに出るときは「IO」表記だけど、以来おれは十年弱、この名前でギョーカイを生きている。
そのことを報告したとき、ごうが言った言葉。今でも、その声色とか、ごうの着てたTシャツ(有名なバンドのバンTだった)に記された文字のフォントとか、部屋の匂いとか(ごうがそのころ使ってたワックスと制汗スプレーの混じった匂い)、を鮮明に思い出せる。
「ごうがなんて言ったか」
肘をついたごうは少し眠たげだった目を少し大きくして、「えーおれ何言ったかな?いいじゃん、とかそういう感じ?」と眉を寄せる。「んな薄い返事だったらわざわざ話題に出さないでしょ」ふっと笑うと負けず嫌いに火が着いたようで、「ちょっと待って、思い出すから」と目を閉じて記憶の世界に行ってしまった。ごうの視線から逃れたおれは、何となくさみしくなってゴロゴロ転がってごうの胸元に頭を差し入れる。鍛えられた胸筋に頬を当たると「くすぐったい」やわらかい声で言いながらごうがおれの髪を漉く。その手つきはとうぜんに優しくて、ごうの長くて、関節のしっかりした指が大好きなおれはシたばっかというのもあってぽやんとしてしまう。あーだめだ、ねむい。自分で言い出しておいて、今更こんな話題を出すことに気恥ずかしさとちいさな罪悪感をおぼえたおれは、意識して眠気の糸をたぐりよせる。
「ごめん、思い出せない……」
「んー……」
何分くらい経っただろう。結構な時間粘ったごうはついに根を上げて、おれの顔を覗き込んだ。軽く目を閉じていても感じる、ごうのあったかくて真っ直ぐな視線。
「うわ、放置して寝ないでよ、気になるじゃん」
「きになる……?」
「うん。おれなんか引っかかること言った?だって結構前だよね?それ今思い出すって」
「……」
「イオ?イオさん?おーい庵くーん」
ぺちぺちと頬をやさしく叩きながら、ごうがおれに布団をかける。起こしたいのか寝かしたいのかわからないな、と思ったらおかしくて、おれはちょっと笑った。
ごうとふたりきり。身体を繋いで、離れたあともくっついて。ごうの身体はあったかくて、火照った肌に触れるシーツはやわらかく、ほんのりごうの匂いがする。
しあわせだな、と思った。生ぬるく肌を撫でる波に浸るみたいに、しみじみと。
だから観念して口を開いた。転んだあと、大好きな人にそっと傷口を見せるみたいに。
「ごう、ね。『イオにしたの?』って嬉しそうに笑って、ちょっとだけ黙って。……そんで言ったの」
『俺だけのイオだったのにな~』
冗談っぽく言ったあと、ごうはこうも続けた。これからは、皆のイオになるんだね。でも楽しみだね、世界中の人が、イオのことみて「かっこいい!」って言うの。
興奮したようなごうの言葉は、パンパンになったおれの胸には入りきらなかった。“俺だけのイオだったのに”そんな微かな、子どもが拗ねるような些細な独占欲。ずっと、物心ついたときからずっとごうのことを、まともな人が家族以外の相手に抱くような感情をもって想っていたおれには、その一言の破壊力はすさまじくて。
『ごう専用じゃありません』
動揺を悟られないように、クールなふりをするので精いっぱいだった。
『えーそうなの?でも名付け親?は俺だよ!?』
熱くなる耳を伸びかけの髪をさりげなく引っ張って隠すのに必死だったおれは、誇らしげなごうの顔を、直視できなくて。ごうが何の気なしに言ったであろう一言が、うれしくて、苦しくて、でもやっぱりうれしかった。油断したら泣きそうで、水気がたまってく鼻じゃなくて口で短く呼吸して。そんな自分がばかみたいで。
『将来おれが有名になったら取材が来るかもね』
『ホントだ!イオ、という名前はお兄さんがつけたんですよね?とか言われるのかな』
『かもね。コメント考えといてね~』
軽口を叩いて部屋を出て、会話を終わらせた。そんな記憶。
今、ベッドの中で、ごうにこの名前を呼ばれることを奇跡だと思う。こうやって、裸で身を寄せ合っていることを、奇跡だと思う。
「イオ……?」
揺れたごうの瞳、こんなキレイなレンズの中に、自分が映っていることを、奇跡だと。
「ごう、おれはね」
ごうがたまに見せてくれる、子どもみたいな独占欲。無邪気で、透き通った、ごうの“弟”として一年十ヶ月遅れて生まれたおれだけの特権。
「……それだけで、きっとおれは百年でも千年でも片想いができた。」
それはちっとも大袈裟なんかじゃない、おれの人生でいちばんの誇りで、罪だ。
「……片想いじゃないじゃん」
穴の開きまくったおれの言葉をきちんと掬って、ごうが拗ねたようにちょっと低い声を出す。
「いまは、ね」
そんなごうが愛しくて、おれは笑う。今は、違う。昔と違って、ごうはおれが自分に向けた恋愛感情も欲も知っているし、同じだけのものを返してくれる。今は。
「やっぱり奇跡だなぁ……」
独り言みたいに呟くと、ぐい、と肩を引き寄せられた。真剣なごうの顔が近づいて来て、目を閉じないまま唇が触れる。ふに、むに、と角度を変えて何かを確かめるように触れたあと、どちらかともなくはぁ、と息を吐いたら、それが合図みたいに舌が這入ってくる。性急な舌の動きについていけずに、おれは簡単に呼吸の仕方を忘れる。
「ご……ぉ……っ」
溺れる。
どんどん浅くなる呼吸に硬い胸を押しても、ごうは離れない。「は……ぁ……っごぉ……」息継ぎを放棄して縋るように名前を呼んだら、ごうは夜、ほんの短い時間眠りにつく前の、昼間は獰猛な獣のような目をしておれを見た。
「奇跡なんかじゃ、ないよ」
そのまま伸し掛かって、まだ柔らかいおれの身体を一気に貫く。
「うぁああっ……!!」
「そんなキレイな……儚いもんじゃないでしょ、こんな欲望」
「く、ぁ……っ!ま、くるし、ごぉ……んぁあっ……!!」
最初から最奥を叩く激しい律動に、胎内が鈍い音を立てる。それでも身体はごうを受け入れたがって、急速に蕩けていく。ごうのカタチに、熱に、ぴたりと沿うように、勝手に粘膜がうねり始める。
「俺だけの“イオ”ならいいのに、なんて今でも……いつでも思ってる」
歪んだ唇、吐き捨てるような声、逃がさないと腰を掴む強い力。昼間の、すべてを照らす明るい光のようなごうにはそぐわない全てが、おれにとってはそのまま、あの頃のおれが喉がカラカラに乾いて血を吐くほど欲しかった、掛け値なしの愛でしかなくて。
何も着けていないごうの分身が、激しい律動と濡れた摩擦におれのナカで膨らむ。
「うぁっ、あぁっ、い……っ!!は、んぁっ」
いとも簡単に言葉を手放したおれは、ただ必死に手を伸ばして、どこか乾いた目をしたごうを抱き寄せる。尽きることのない欲望に、きっとおれも同じ目をしている、と思いながら。“好きだよ”とか“あいしてる”とか、言えない代わりに名前を呼ぶ。
“ごう”。
きっとおれはこの世界に産み落とされた瞬間、産声とともにそう叫んだんじゃないのかなと思いながら。
罪の証でもある命の源を身体の奥に注いで、ごうの、兄の唇がおれを象る瞬間を、目の裏に焼き付ける。
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