ー竜の民ー 

assult

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新兵

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(なんだ、皆練習時間貰えるんじゃん…)
それもそうだ。一発本番で成功させろなんて無理な話だ。

「そのカートリッジ一個分、使いきるまで練習していいぞ。」
「準備が整った者から試験を始める。」

(さぁ練習だ。……うん、なかなか調子がいい。だんだん集中して扱えるようになってきた。)

(ヴィルゴの奴はどうかな…)

(フフフ…難しいみたいだな、さっきは散々言われたが、俺はわりと運動も勉強もできるんだ。
あいつが凄すぎるだけなんだ…)

「魔法に関しては、俺の方が上だな!」

ー40分後ー

「うん、君はやはり筋が良い。」

「ありがとうございます、レプス教官。」

「合格だよ!」

(やったぁぁあ!!)人生最大の喜び‼俺は憧れの兵士になったのだ‼

「君には明日、各種装備を授けよう。おめでとう、レインくん。」

「ありがとうございます‼」

そして俺は家路に向かう。

(おっ、あそこにいるのはヴィルゴだ。)

「よぉ!」
珍しく俺から声をかける。

「試験、どうだった?」 

(聞かない方が良かったか?……ちょっと調子に乗ってしまった…)

「うん、…まぁ、…楽勝だったぜ………。」

(まさか落ちたのか…?)

「ほら、ちゃんと合格証明もあるぜ。」

(あぁ良かった、今回ばかりはヴィルゴの才能に救われた…ギリギリだったっぽいけど…)

「お互い頑張ろうね、ヴィルゴ。」

「おう。」


あ!そうだ…

俺はまた竜を見たんだ…浮かれてて忘れてた…

もしかすると、竜って本当にいるのかもしれない。

(後で、ホラ吹き爺さんに詳しい話を聞いてみよう…)

「ただいま!試験、合格したよ!」

「凄い!おめでとうレイン。」
お母さんが褒めてくれた。

お父さんは仕事か、帰ってきたら報告しよう。
(きっと喜んでくれるぞ!)

「じゃあちょっと出掛けてくるね。」
俺はすぐにでも竜について知りたかった。

「どこにいくの?」

「クラテル爺さんのとこ。」

「気をつけていってらっしゃい。」


コンコン♪ 「クラテルさぁーん」

「どちらさまぁー、おぉ…レインか…いらっしゃい…」

「今日はどうしたのかの……」

「お話を聞かせてください。最近、竜について興味が湧きまして。」

「よかろう…こっちにいらっしゃい…」

クラテル爺さんは外に出ては子供たちに話を聞かせるのが日課だった。
あまりにもブッ飛んだ話をするから、俺たちの間では“ホラ吹き爺さん”と呼ばれていた。

こうして自ら話を聞きにいくのは初めてだったから、クラテルさんも少し嬉しそうだ。

薄暗いけど、不思議な魅力がある、落ち着く感じの居間に通された。

木のイスに座る。

「竜について聞きたいと言ったかの…?」

「はい。」

「この国には…昔から竜の伝説が伝えられてきたのだ…」

「わしらみたいな高齢者は…皆一度は聞いたことがある話なんだ…」

「まぁ、わしらといっても…同年代の奴は皆死んでしもうたがの…ガハハハハ…ゲホッゲボッ…」

(おいおい大丈夫か?)

「竜はな…鳥とは、全く違う姿をしておる…」

「様々な種類がおるのだが、…共通の特徴があるのじゃ…」

「鱗のような硬い皮膚…、三つの目…、大きな翼…、長い首…」

(前見たあの黒い奴に似ている気がする…)

「竜はな、人間の領域にあまり近づかないそうじゃよ…」

「てなづけたら…仲良くできるかもしれんがの…
…ガハハ…グハッ…」

(あまり笑うと体に触りますよ💧)

「竜は雲の下からやってくると…聞いたことがあるぞ…」

「雲の下?」

「そうじゃ…雲の下には何もないと…わしの祖母は言っていた…ただ、竜だけはその“無”の世界からやってくるそうじゃよ…」

(もう何がなんだか…)

「竜は、いるんですか?」

「おる。」
爺さんはきっぱりと言い切った。

「竜の存在を見た者はいない…わし以外には…」

「え!?」

「一度だけ、見たのじゃ…昔兵士をやってた頃にな…」

「わしも、ずっと竜は伝説の存在だと思っとったよ…」

「竜はほとんど姿を見せない…、だからこそ、それは伝説の存在となり、やがて忘れさられようとしておるのじゃよ…」

「実際、わし以外から竜の話を聞いたことはなかろう?」

「はい。」

「わしらが子供の頃はよく聞かされたんじゃがの…こういうの…カルチャー・ショックっていうのかの…」

(ジェネレーション・ギャップです…たぶん。)

「いやぁ、凄いお話ですね…前に聞いた時は嘘だとばかり……」

あ。

「嘘だとばかり?…わしの話、ずっと嘘だと思っておったのかの…!?」

「い、いや!それは、違います!…」

「そうかいそうかい…あぁ…ショックじゃわい…」

「ごめんなさい、本当に違うんです!」

「ハハハハ、無理もない…とうてい信じられない話じゃろうて……ハァ。…」

(アレ?自分の声届いてない?)

「まぁ、わしの話を嘘だと思っとったのは、レイン、お前くらいであろうよ…」少しムキになっている。

(ごめんなさい、街の皆そうです…)

「さて、そろそろわしは疲れたわい…」

「貴重なお話、ありがとうございました!」

「うんうん。またいつでも来るがええ。…」


竜はいる。それは、既に確信に変わっていた。
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