ー竜の民ー 

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野望2

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(ヴィルゴが…協力者だって…!?)

「ヴィルゴは金で簡単に仲間になったぞ。」

(嘘だ……)

俺は辺りを見回してみる。ヴィルゴの姿がない。

「彼には色々と裏工作をしてもらった。兵士として潜んでもらい、ここの施設に寄り付かせないようにしてもらった。」

(雲下調査の時、単騎行動を取ったのはここに兵士を寄り付かせない為…自分が見てきたと言って他の兵士を行かせなかった…)

「そして、君たちが雲下調査に来たことをヴィルゴに報告して貰った。お陰で君たちの帰り道に竜を配置できた。」

「そして、今だって彼は動いているよ。」

「どういうことだ?」

「君たちの鳥はもうこの世にはいない。君たちは死ぬまでこの暗闇の中さ!」

「なんだって…」

「彼はよく働いてくれたよ。」

「そうかい。クラウド、君にもう用はない。」

ズシャッ…

ランサーさんは躊躇せずクラウドさんの首をはねた。

隣にいたレティが震えながら泣いていた。

「レティ、君は立派な兵士だと思ってたよ。剣竜に殺されたと知ったときには本当に悲しかった。だがな…」

「今はもう敵だ。君が生きていくには仕方なかったとはいえ、君たちのせいで多くの人が死んだ。悪いが君に聞きたかったことはクラウドが全部喋ってくれたのでね。すまない。」

ランサーさんは軍刀を振り上げる。

「ゴメン…ナサイ……」

レティの首がとんだ。

仲間だった子が、こうして目の前で殺されるのはなんとも虚しく、悲しかった。

「俺も殺したくなかった…しかし、これは規則だ。裏切り者は殺せ。残酷な世界だな…」
ランサーさんは血のついた軍刀を鞘に納めた。

その後、施設内を隅々まで調査した。
研究に使っていたであろう資料が沢山出てきた。
実験途中の竜もいたし、傷ついた“地を這う竜”も手当ての途中だった。

「ヴィルゴ…本当にあいつは…」

「きっと何かの間違いだよ…」
サニーも受け入れられない様子だ。

そして、俺たちは地下施設の入口へ戻り、扉を開けた。するとそこに、

ヴィルゴが立っていた。

俺はとっさに声をかける。

「お前…本当に…」

「チッ…あいつらバラしやがったか…」

「お前、何考えてんだよ!?」

「すまねぇな。騙してて。」

「金で買収されたらしいな。」

「それは兵団学校時代の話だ。偶然声かけられてな。思わず了承しちまった。」

「でも、兵士になってから、ずっと後悔してたよ…お前たちが、大事に思えるようになっちまったんだよ…」

辺りを見回すと、幾つかの鳥の死骸が転がっていた。一部は逃げ帰ったようだが。

「これ、お前がやったのか。」

「あぁ。」

「てめぇ‼」
俺は思わず掴みにかかる。

「あ、そうだ。ちなみにトリアンは俺が殺した。」

「なんだって…」

「うっかりな、竜の動きが計画的なのは、そういうプログラムになってたからだって言っちまってな。なんとか誤魔化そうとしたが、トリアンはアレ以来、俺をずっと疑ってたようでな。『僕はヴィルゴが犯人だったらショックだな』とか言われてな。すげぇうざかったよ。このまま疑われ続けるのはあぶねぇと思ってな、竜の民との戦いの時に後ろから刺して殺した。」

「俺は絶対お前を許さない…」

「俺はこうなった以上、あとは死を待つだけだな。レイン、俺と戦え。」

「お前の手で、俺を殺してみろ。」

「男なら、魔法なんて卑怯なもん使うなよ…刀で勝負しろ。」

(俺は…また人を殺さないといけないのか?)

「正義の為に、俺を殺してみせろよ。」

「あぁ…分かったよ…」
俺は他の兵士に手出しをしないよう求めた。

「いくぞ…」

スッ…
ヴィルゴの刀が脇をかすめる

(速い‼)

俺も刀を振り下ろすがかわされる。

ヴィルゴの素早い突きが襲ってくるが、なんとか刀で軌道をそらせる。

(さすがヴィルゴ…凄まじい身体能力だ…)

カキッ、キーン!
金属音が響く。俺は受けるのに精一杯だ。

(この技なら、ヴィルゴ。お前だからこそこれには引っかかるだろう。一瞬の隙をついてくるお前だからこそ!)

俺は刀を地面と平行になるよう倒し、全力で左へ振った。

ヴィルゴが斬り終わりを狙って距離を詰めてくる。

(今だ‼)
俺は刃を右へ向け、返す刃で斬り払った。

ヴィルゴの胴体を切り裂く。

ヴィルゴの動きを予測したことで攻撃が決まった。

「くそっ…やるなレイン。」
まるで効いてない。

そりゃそうだ。軍服には鎖帷子が織り込まれているからな…

ヴィルゴがまた接近してくる。

シュババ…
片手で突きを連発してくる。なんて速さだ。

ピシュッ

「ぐっ…」
俺の頬をかすめた。痛ぇ。
以前受けた右肩の傷も再び痛み始める。

「動きが落ちてるぜ、レイン‼」

(仕方ない、先に斬られてやる。)
俺は左腕で頭を守り、抵抗を止めた。

ズシャッ
ヴィルゴの刀が縦に俺を斬るが、軍服のお陰で傷は浅い。

そして、俺は動き出す。

ヴィルゴの刀が下に抜けていくと同時にヴィルゴの刀を上から叩きつけた。

ピキッ…カラン、カラン…

ヴィルゴの刀は真っ二つに斬れた。

俺はすぐに間合いを詰め、ヴィルゴの手足を斬りつけた。

バサッ
ヴィルゴが崩れ落ちる。

俺はヴィルゴの顔面に刀を突きつけた。

「早く、殺してくれ…」
「俺はお前たちを騙した。最低なことをした。だから…お前の手で、仲間の手で殺されたい…」
「仲間、なんて…俺に言える資格はねぇか…」

「なぁヴィルゴ…俺はお前を殺さないといけない…でも、やっぱり俺は、どうしてもお前を、今でも仲間だと思っちまうんだよ…」
涙が溢れてくる。

俺はもうやるしかないと思った。俺の手で殺してあげたいと思った。

俺は泣きながら、ゆっくりと刀を振り上げる。

「すまなかったな…」

「ヴィルゴ、お前は俺たちの大事な仲間だよ。今でも。」

ヴィルゴは微笑んだ。

俺は刀を振り下ろした。

ヴィルゴは最期にかすかな声で「ありがとう」って、そう言った気がした。





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