占い師は自分の未来は占えない!

マハラメリノ

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〇〇五 占い師、オレオレ詐欺に遭う!

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メンズ・コレクション初日の朝、先陣を切るブランドの特設会場のバックステージに設けられた朝食のケータリング・サービスで朝ご飯を食べていたら、日本人のメンズモデルさんと目が合って、更にその相手に名前を呼ばれるってどういう状況!?

「ノゾミ? ノゾミだよな? オレだよオレ!」

オレって誰!?
何このオレオレ詐欺!?

「ノゾミちゃん、ユーゴと知り合いなの?」
「そうなの? だったら後でオフショット数枚頼めないかしら?」
「ええと……!?」

ユーゴ!?
誰それ知らない!

「ノゾミの知り合いならいいですよ」

火村さんと水瀬さんはそのままモデルさんと仕事の話を始めてしまったけれど、私にはこのユーゴというモデルさんに皆目心当たりがない。
私が目を白黒させながら思い出そうと脳をフル回転させたけどやっぱり駄目。
そもそもこんな一八〇センチ超えのイケメン、私の人生で一度でも出会ってたら絶対忘れない。

「オレだよオレ、朝日アサヒ日向ヒュウガ! 保育園から中学までずっと一緒だっただろうが!? こんなイケメンの幼馴染、忘れてんじゃねーぞ!?」

朝日日向!
それで私は漸く思い出した。

「ヒュウガ!? って、女子を含めてもクラスで一番チビッコだったあのヒュウガ!?」

私が一息に行った直後、水瀬さんがぶはっと噴出して、ヒュウガは耳まで真っ赤になる。

「ちょっ!? 余計なことまで思い出してんじゃねえよ! 今は一八九センチあるぞ!」

私には、保育園から中学卒業までずっと一緒だった朝日日向という男の子の幼馴染がいた。
当時から顔は綺麗だったんだけど、確か三月生まれで同学年でも四月生まれの子とはほぼ一年違うわけで、幼少期の一年の体格差は何をどうやっても埋められない。
男子の間で彼はいつも馬鹿にされ揶揄われてパシリのような扱いを受けていた。
最初から腕力で到底敵わない相手の中で育つのってどういう気分なのか私には想像もつかないけれど、その頃既に占いの能力に目覚めていた私は、クラスの男子たちの彼の扱いに少なからず憤り、とても見ていられなくて何度か彼の未来を占っては助けていた。

あのちんちくりんだったヒュウガが今や、身長一八九センチのスーパーモデル様。
それに筋肉が適度についていてとても綺麗だ。
フランスはBMIが低すぎるとモデルとして活動を禁止する法律があり、海外のハイブランドも一様に痩せ過ぎモデルは起用しないという声明を出しているので、ショーの前には健康診断書を提出するよう義務付けている。
これが本当にあのヒュウガなの!?

「クラス一のチビッコがスーパーモデルに劇的ビフォーアフターって、伸びるにしても限度って物があるでしょうに!」
「身長は高校入ったら急激に伸びたんだよ!」

それより何よりこんなイケメンに育つなんて聞いてない!
酷いオレオレ詐欺に遭った気分だわ!

「でも『ユーゴ』っていうのは?」
「ああ、フランス語にはハ行の発音がないだろ? ユーガとかユーゴって間違えられやすくて一々訂正すんのも面倒だからもういっそ芸名にしちゃおうってことで仕事の時は『ユーゴ』って名乗ってんだよ」

なるほど。こっちだと「HONDA」も「オンダ」になっちゃうものね。

「それにしてもヒュウガがモデルやってたなんて知らなかったわ」
「オレはノゾミが占い師やってること知ってるぜ」
「えっ!? なんで!?」
「何でってオレだってモデルなんだからファッション情報サイトのチェックくらいはするし、『星園望のフォーチュン・フォーチュン』結構当たるって評判なんだぜ?」
「ヒュウガ、占いなんて見るの?」
「見ないよ。ノゾミの占いだから見てるだけ」

しかし私は次のヒュウガの言葉に息を呑むことになる。

「お前さ、ガキの頃、占いでオレのこと助けてくれてただろ?」
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