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〇一二 急展開、良い夢を!
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結局、ヒュウガが私とまだ見ぬ運命の相手と懸け橋になって縁を繋いでくれる的なことないまま食事を終えて、ホテルまでヒュウガに車で送って貰った。
車がホテルの前に停車して、今度は自分で助手席のドアを開けようせずに大人しく待っていると、ヒュウガは両腕をハンドルの上に乗せ、そこに額を押し付けながらひとつ溜息を吐く。
「帰したくないけど、送り届けるって約束したからな……」
ヒュウガはそう言いながらハンドルの上に置いた腕に頭を乗せたまま、物憂げに首を捻ってこちらを向いた。
その酷く色っぽい視線と仕草と意味深な言葉に私は内心盛大に戸惑う。
な、なにこれ。どういうこと。
だけど私が何か言う前に、ヒュウガはふっと視線を外して車を降りてしまった。
そうして、車を半周して助手席側のドアを開けたときにはもうさっきの物憂げな雰囲気は綺麗さっぱり消え失せていた。
今のは一体なんだったんだろうとドキドキしながら、差し伸べられた手を取り、車から降りてホテルのエントランス前までエスコートされたとき、不意にヒュウガが立ち止まる。
でもヒュウガはそこで立ち止まったきり一向にエントランスのドアを開けてくれる気配がない。
まさか、車のドアは開けるけど、建物のドアは自分で開けろとか言わないわよね。
不審に思って見上げれば、通常ならもう少し高い位置にあるはずのヒュウガの顔が思ったより近くにある。
驚く間もなく掬い上げるように腰を抱き寄せられて、気が付けばヒュウガの唇が私の唇に重ねられていた。
触れたのは一瞬。
それは夢かと思うほどにすぐに離れていった。
けれど、抱き寄せられた腰はそのままで、さっきまで私の唇に重ねられていたヒュウガの唇が今度は私の耳元に寄せられる。
「オレの秘密を教えてやるよ」
このとき私はもう処理落ち寸前で、ヒュウガが何を言っているのか理解できていなかった。
「俺の初恋の相手はお前だったんだぜ」
それだけ言うとヒュウガはエントランスのドアを開けて私の背中をホテルの中へそっと押し遣る。
「おやすみ。良い夢を」
背中を押し遣られた私が後ろを振り返れたのはエントランスをよろよろと数歩進んでからことだ。
その頃にはヒュウガはもう車に乗り込むところで表情までは見えなくなっていた。
今の、キス、されたんだよね私?
それに、は、初恋って――。
咄嗟のことで思考停止していたけど、漸くさっきの出来事が何だったのか把握出来るようになると、じわじわと顔が熱くなってくる。
ヒュウガが私を?
嘘でしょう?
あの占いはヒュウガのことだったの?
初恋だったというのは過去形じゃないの?
キスしたってことは今も好きだってこと?
その辺のことをもっと詳しく知りたいと思うのに、残念ながら占い師は自分の未来は占えない。
もしも占えたとしても私のささやかな能力では大したことは分からないだろう。
そういえば、今夜の食事はその占いの能力について問い質されるのだとばかり思っていた。
でも蓋を開けて見れば、ヒュウガは私の占い能力について何一つ訊かなかったことに気が付く。
本当にただ食事して喋っただけだった。
私は未だ夢から覚めない足取りでふらふらとフロントへ辿り着くと、部屋の鍵と一緒にメモを預かった。
メモは火村さんからで、一階のバーで水瀬さんと二人で飲んでいるから戻ったら一緒に飲まないかという内容だ。
ヒュウガと今後どう接するか考えなくちゃいけないのに、私の脳は今使い物にならない。
火村さんと水瀬さんに相談しよう。
私は部屋に戻らずバーへ直行した。
車がホテルの前に停車して、今度は自分で助手席のドアを開けようせずに大人しく待っていると、ヒュウガは両腕をハンドルの上に乗せ、そこに額を押し付けながらひとつ溜息を吐く。
「帰したくないけど、送り届けるって約束したからな……」
ヒュウガはそう言いながらハンドルの上に置いた腕に頭を乗せたまま、物憂げに首を捻ってこちらを向いた。
その酷く色っぽい視線と仕草と意味深な言葉に私は内心盛大に戸惑う。
な、なにこれ。どういうこと。
だけど私が何か言う前に、ヒュウガはふっと視線を外して車を降りてしまった。
そうして、車を半周して助手席側のドアを開けたときにはもうさっきの物憂げな雰囲気は綺麗さっぱり消え失せていた。
今のは一体なんだったんだろうとドキドキしながら、差し伸べられた手を取り、車から降りてホテルのエントランス前までエスコートされたとき、不意にヒュウガが立ち止まる。
でもヒュウガはそこで立ち止まったきり一向にエントランスのドアを開けてくれる気配がない。
まさか、車のドアは開けるけど、建物のドアは自分で開けろとか言わないわよね。
不審に思って見上げれば、通常ならもう少し高い位置にあるはずのヒュウガの顔が思ったより近くにある。
驚く間もなく掬い上げるように腰を抱き寄せられて、気が付けばヒュウガの唇が私の唇に重ねられていた。
触れたのは一瞬。
それは夢かと思うほどにすぐに離れていった。
けれど、抱き寄せられた腰はそのままで、さっきまで私の唇に重ねられていたヒュウガの唇が今度は私の耳元に寄せられる。
「オレの秘密を教えてやるよ」
このとき私はもう処理落ち寸前で、ヒュウガが何を言っているのか理解できていなかった。
「俺の初恋の相手はお前だったんだぜ」
それだけ言うとヒュウガはエントランスのドアを開けて私の背中をホテルの中へそっと押し遣る。
「おやすみ。良い夢を」
背中を押し遣られた私が後ろを振り返れたのはエントランスをよろよろと数歩進んでからことだ。
その頃にはヒュウガはもう車に乗り込むところで表情までは見えなくなっていた。
今の、キス、されたんだよね私?
それに、は、初恋って――。
咄嗟のことで思考停止していたけど、漸くさっきの出来事が何だったのか把握出来るようになると、じわじわと顔が熱くなってくる。
ヒュウガが私を?
嘘でしょう?
あの占いはヒュウガのことだったの?
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もしも占えたとしても私のささやかな能力では大したことは分からないだろう。
そういえば、今夜の食事はその占いの能力について問い質されるのだとばかり思っていた。
でも蓋を開けて見れば、ヒュウガは私の占い能力について何一つ訊かなかったことに気が付く。
本当にただ食事して喋っただけだった。
私は未だ夢から覚めない足取りでふらふらとフロントへ辿り着くと、部屋の鍵と一緒にメモを預かった。
メモは火村さんからで、一階のバーで水瀬さんと二人で飲んでいるから戻ったら一緒に飲まないかという内容だ。
ヒュウガと今後どう接するか考えなくちゃいけないのに、私の脳は今使い物にならない。
火村さんと水瀬さんに相談しよう。
私は部屋に戻らずバーへ直行した。
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