異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

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第二章 魔王復活

〇一〇 グレイ④

思い返すのも恥ずかしい。
魔王を宇宙人だと思い込んでいたときのことを思い出す。
あのとき俺は魔王のことを「グレイ」と呼んでしまって、魔王もその名前をどういう訳か気に入ってしまい何度も呟いていた。

「は……? それは魔王に名を授けたという意味ですか!?」

副隊長のヒルデブラントが深刻な表情をして椅子から立ち上がった。

「いや、俺が勘違いしてただけで、そんなつもりはなかったんだけど、向こうは勝手にそう受け取っていたというか、『礼を言おう』とかなんとか言われた気がする」

俺は宇宙人にアブダクションされたんだと勘違いしていて、キャトられると思って必死だったんだよ。
しかし、俺の説明を聞いたヒルデブラントは一層深刻な顔になり、身を乗り出した。

「それで、どんな名を授けたんですか? 意味は?」
「えと、『グレイ』って。意味は『灰色』」

宇宙人の肌が灰色なところから由来する通称だから、実際その程度の意味しかない。

「白でも黒でもない灰色……」
「それで弱体化したか……」

ヒルデブラントが溜息を吐いて脱力したように着席すると、隊員たちの間にも一様に微妙な空気が漂う。

「名前を授けるって、そんなに重要なことなのか?」

白騎士隊の隊員たちは当然知っている常識のようだが、そんなこと私塾でも教えられていない情報だ。
俺の疑問にはエリアスが答えてくれた。

「名は、良くも悪くも魔力に大きな影響を齎す。魔力量の少ない者には関係ない話だが、魔力量の多い者が新しい名を授かり、その名が馴染み始めると本質や精神にまで徐々に影響を及ぼし、最終的には魂が変質すると言われている」
「それじゃあ魔族に片っ端から弱っちい名前つけて、弱体化させまくればいいじゃん」
「そこが難しい。高位の魔族は、下等生物だと蔑んでいる人族に勝手に付けられた名など普通は受け入れないし、滅多な名前を付けると相手の受け取り方次第で逆に強化されてしまうことがある」

それはまずいな。
名前を付けるってことが、そんな重要なことだったなんて知らなかった。
前に俺、エリアスの聖剣に名前付けてくれって言われて引き受けちゃったけど、下手すると聖剣が弱体化されちゃうってことじゃないか。
まだ考え中ってことで先延ばしにしているけど、ハードル上がり過ぎだ。
まあ、そういうことも今のエリアスは俺の記憶ごと忘れてしまっているらしいんだが。

「しかし、魔王が人間に対して礼を言うなんて、聖者様に名を授けられたのが余程嬉しかったんでしょうな……」
「魔王も隊長への復讐など考えず、世界征服でもしていればもう少し長生き出来たかも知れないのに、選りに選って聖者様を誘拐なんてするから隊長の逆鱗に触れちゃったんすよねえ……」
「それな」
「魔王、一体何がしたかったんだよ」
「そういえば何のために出て来たんだ魔王って?」
「魔王の存在意義とは」
「魔王の小物感……」

隊員たちは、いつものノリで口々に好き放題言っていた。
けれど、そんな俺たちの思惑とは裏腹に、魔王が最期に投じた一石は、予想以上の波紋を広げていくことになる。
これは、そこに至るまでのただの序章に過ぎなかったのだ。
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