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第三章 黎明と黄昏

〇〇五 君の理性と限界②

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俺が何とも言えない感情の籠ったじっとりした目でエリアスを見詰めている中、ヴェイラは改めて俺に向き直ると、何の予備動作もなく突然その手の中に金色に輝く杖を出して見せた。

「聖者君、お誕生日おめでとう。これ、プレゼントね」

それは、恐らくエリアスの身長ほどはあると思われる長さの杖で、聖扇リピタ権杖ジェズルというより寧ろ聖体顕示台オステンソリウムに似た形をしていた。

聖体顕示台っていうのは、聖人の血なんかを納めておく硝子製の密閉容器を顕示するための台座なんだけど、天辺にゴシックなウニフラッシュみたいな飾りが付いた物凄いゴテゴテした金色のトロフィーみたいな形の物をイメージして貰えれば大体合ってる。

これはその台をなくして柄をもっと長くして杖に魔改造したようなフォルムをしていて、天辺のウニフラッシュの中央には聖体を入れた硝子製の密閉容器ではなく、拳大の黒い珠が填められていた。
全体が鈍い金色でぶっちゃけ無茶苦茶格好良い!
異世界で聖者ロープレやってるからには、こういう装備が欲しかったんだよって俺の中二病が騒ぐ!

「え、これ、俺が貰っていいんですか……?」
「もちろん。さあどうぞ♡」

ヴェイラは笑顔で頷く。
マジか!
激アツかよ!

「……あっ、ありがとうございますっ……!」

逸る心を抑えて恭しく受け取ってみれば、見た目と大きさの割に意外と軽い。

「うわぁっ! これ、すっげーかっこいいですね!? すげぇっ! マジかよ! かっけー!」

白騎士隊の俺の制服着てこれ持ったら完璧じゃん!
すんげー聖者様っぽい!
俺の聖者ロールプレイングが捗るぜ!

「そんなに喜んで貰えると嬉しくなっちゃう♡」
「俺の方こそめちゃめちゃ嬉しいです! 大事にします!」
「……聖者君、あなた本当に良い子ね。四大精霊たちが、ざわついている理由がわかるわあ」

俺、精霊にざわつかれてたのか……。
だから力を貸して貰えないとかそういうやつ?

「俺、四大精霊には嫌われてっから……」

四大精霊とは火・水・風・土を司る精霊のことで、気に入られれば精霊を使役して該当属性の魔法が使えるようになるのだ。
因みにエリアスは四大精霊全種に贔屓にされている。

「四大精霊が聖者君を嫌ってる? ないわ~それはないわ~!」
「けど、俺、四大属性の魔法が全く使えないんです」

その手のことを自分の口から言うのはやっぱりつらくて、しょんぼりして答えると、ヴェイラは困ったように教えてくれた。

「それは聖者君がこの世界の精霊たちのとは異なる、異世界の精霊と契約を結んじゃってるから、この世界の四大精霊はどんなに力を貸したくても貸すことが出来ないのよ」

ファッ!?
俺、何時の間に精霊と契約なんかしたんだよ!?
身に覚えがない!

「多分だけど、金属か鉱物の精霊じゃないかしら? 心当たりはない?」

金属!? 鉱物!? 精霊!?
そう言われても、俺には心当たりがまるでなかった。
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