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第三章 黎明と黄昏
〇三八 頼んでないピザが来た② 【完】
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エリアスの方が準備に手間取っているらしく、俺の支度を終えたメイドたちがこぞって手伝いに行ってしまったので今は控室に俺一人だ。
準備が出来たらエリアスが俺を迎えに来るだろう。
ヴェイラ王国には式の前の花嫁に会ってはいけないという風習はないので、二人揃って会場へ行くらしい。
そういえば魔王城から救出されてから俺が一人になることってあんまりなかったな。
覚えている限り、エリアスが首実検に出向いていてあしながおじさんが会いに来た時と、エリアスが騎士団の用事にかこつけて婚約指輪を送るアルビオンの習慣について情報を仕入れてきた時と、俺の誕生日の前にエリアスがヒューと何かコソコソしてた時と、誕生日直前にエリアスが準備するために引っ込んだ時と、後はロスの創造都市ゴルゴヌーザの風呂で溺れかけた時くらいだ。
ヤベエな。俺たちどんだけべったりしてるんだよ。
それに自分でも気付かないうちに緊張してたみたいで、だんだん気分が悪くなってきた。
うう、吐きそう。
駄目だ、マジで駄目だこれ。
どうしよう。俺の治癒で治せるタイプのやつかな。
無理だよなあ。病気や怪我ならともかく原因が「極度の緊張」じゃあな。
それに今治癒すると式の前にエリアスに子種を貰わなくちゃいけないし、そういうお約束的な感じのベタなシチュエーションのプレイには正直に言うと興味がないことはないが、俺としては避けたい。
この場合、俺の一番の癒しはエリアスだ。
間違いない。あの胸に抱き着いてあの良い匂いをハスハスしたら治る。
兎に角、エリアスのところへ行かないと。
だが、立ち上がろうとして一歩足を出しかけると、ツルツルに磨き上げられた大理石の床石がぐにゃりと歪んだ。
俺はその場に思いっきりべしゃりと倒れたが、予想したほど痛くない。
それもそのはずだ。見れば大理石の床はサラサラと崩れて今や砂になっている。
砂は倒れ込んでいる俺を中心に砂時計の砂のようにサラサラと下へ落ちて行っているようだ。
その砂の中に飲み込まれたら抜け出せないということは本能的に察知した。
こういうのはもがけばもがくほど飲み込まれてしまうが、じっとしていても助けが来なければ結局は飲み込まれてしまうだろう。
頼んでないピザが来たら玄関の扉開けちゃいけないってことは知ってるけど、床が砂になったときはどうすればいいんだよ!?
身体はもうほとんど砂に埋まっていて、腕を踏ん張って精一杯顔を上げるが、腕が砂の中にズブズブと埋まっていく。
顔が埋まる前に思いっきり息を吸い込んで目を瞑った。
心臓が耳のすぐ近くにあるかと思うほどドクドクいってるのが分かる。
え……なんかこれヤバくないか!?
これってどう考えても普通じゃない。
でも魔法だったら誕生日にエリアスに貰った婚約指輪に付与されてる魔法抵抗に弾かれるはずだ。
魔法じゃないとすれば他に考えられるのは――。
――呪い。
怖いよ、エリアス!
だが、助けを呼ぼうにも俺はもう完全に砂の中に埋まり切ってしまっていた。
俺死ぬのこれ!?
てか、俺のピンチってことはイコール、エリアスの活躍フラグだろ!?
エリアス無双のフラグが立ったってことだよな!?
信じてるからな、エリアス!
格好良く俺を救出して何度でも俺を惚れさせてみろよ!
「異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが」第三章 黎明と黄昏 完
※次回からは「最終章 砂漠の薔薇」が始まります。第三章の登場人物紹介を先に投稿しているのでご注意ください。
準備が出来たらエリアスが俺を迎えに来るだろう。
ヴェイラ王国には式の前の花嫁に会ってはいけないという風習はないので、二人揃って会場へ行くらしい。
そういえば魔王城から救出されてから俺が一人になることってあんまりなかったな。
覚えている限り、エリアスが首実検に出向いていてあしながおじさんが会いに来た時と、エリアスが騎士団の用事にかこつけて婚約指輪を送るアルビオンの習慣について情報を仕入れてきた時と、俺の誕生日の前にエリアスがヒューと何かコソコソしてた時と、誕生日直前にエリアスが準備するために引っ込んだ時と、後はロスの創造都市ゴルゴヌーザの風呂で溺れかけた時くらいだ。
ヤベエな。俺たちどんだけべったりしてるんだよ。
それに自分でも気付かないうちに緊張してたみたいで、だんだん気分が悪くなってきた。
うう、吐きそう。
駄目だ、マジで駄目だこれ。
どうしよう。俺の治癒で治せるタイプのやつかな。
無理だよなあ。病気や怪我ならともかく原因が「極度の緊張」じゃあな。
それに今治癒すると式の前にエリアスに子種を貰わなくちゃいけないし、そういうお約束的な感じのベタなシチュエーションのプレイには正直に言うと興味がないことはないが、俺としては避けたい。
この場合、俺の一番の癒しはエリアスだ。
間違いない。あの胸に抱き着いてあの良い匂いをハスハスしたら治る。
兎に角、エリアスのところへ行かないと。
だが、立ち上がろうとして一歩足を出しかけると、ツルツルに磨き上げられた大理石の床石がぐにゃりと歪んだ。
俺はその場に思いっきりべしゃりと倒れたが、予想したほど痛くない。
それもそのはずだ。見れば大理石の床はサラサラと崩れて今や砂になっている。
砂は倒れ込んでいる俺を中心に砂時計の砂のようにサラサラと下へ落ちて行っているようだ。
その砂の中に飲み込まれたら抜け出せないということは本能的に察知した。
こういうのはもがけばもがくほど飲み込まれてしまうが、じっとしていても助けが来なければ結局は飲み込まれてしまうだろう。
頼んでないピザが来たら玄関の扉開けちゃいけないってことは知ってるけど、床が砂になったときはどうすればいいんだよ!?
身体はもうほとんど砂に埋まっていて、腕を踏ん張って精一杯顔を上げるが、腕が砂の中にズブズブと埋まっていく。
顔が埋まる前に思いっきり息を吸い込んで目を瞑った。
心臓が耳のすぐ近くにあるかと思うほどドクドクいってるのが分かる。
え……なんかこれヤバくないか!?
これってどう考えても普通じゃない。
でも魔法だったら誕生日にエリアスに貰った婚約指輪に付与されてる魔法抵抗に弾かれるはずだ。
魔法じゃないとすれば他に考えられるのは――。
――呪い。
怖いよ、エリアス!
だが、助けを呼ぼうにも俺はもう完全に砂の中に埋まり切ってしまっていた。
俺死ぬのこれ!?
てか、俺のピンチってことはイコール、エリアスの活躍フラグだろ!?
エリアス無双のフラグが立ったってことだよな!?
信じてるからな、エリアス!
格好良く俺を救出して何度でも俺を惚れさせてみろよ!
「異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが」第三章 黎明と黄昏 完
※次回からは「最終章 砂漠の薔薇」が始まります。第三章の登場人物紹介を先に投稿しているのでご注意ください。
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