異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

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最終章 砂漠の薔薇

〇〇八 薔薇の名前②

それにしても、ペルシャ語の「野薔薇ナズーリン」に「紅薔薇スーリ」ときて、ヘブライ語の「薔薇の花ショシャンナ」か。
この源氏名から推察すると、皆さま漏れなくアナルローズを咲かせていらっしゃる可能性が高い。
しかもショシャンナはスザンナの語源でもあり、元々は薔薇の花だけでなく百合の花のことも指す。
百合? ケツの穴?

――美しい花瓶?

うっ……! また頭がっ……!
どうして何かを思い出しそうになると頭痛がするんだよ。
まだ顔合わせの途中だったが再び例の頭痛に襲われ頭を押さえていると、横から声が掛けられる。

「お前、日本人か?」

それは間違いなく日本語だった。

「日本語!? えっ!? あんた日本語喋れんのか!?」

頭痛も吹き飛ぶ勢いで吃驚して俺も日本語で訊き返すと、今度は公用語で返される。

「ギデオンだ。ここの調理場を担当してる。日本語はもうほとんど忘れちまった。若い頃にちょっと日本にいたことあるんだよ」

ギデオンと名乗った調理場担当の男は、ギャレットより更に背が高く褐色肌で身体つきは引き締まっていて筋肉質、短い黒髪に琥珀色アンバーの瞳といった色彩なので、暗色の中に目だけが金色にギラギラ光って見えて、調理師というより傭兵か殺し屋っていわれた方がしっくりくる風貌をしていた。

だがこれは新情報!
行き来が可能なタイプの異世界なのか!
俺は日本に帰れる!?
日本に帰れば俺のことを知ってる人が見つかるかも知れない!
俺は突然目の前が開けた気がした。

「マジか! じゃあ帰り方分かったりする!?」
「お前、自分の立場わかってんのかよ。日本までの旅費なんざ、真っ当に働いてたら稼げねえよ。それにお前は男娼だが身分は性奴隷だ。諦めな」

ダウト!
その理屈はおかしい。
だってギデオンは若い頃に日本にいたことがあるって、さっき自分で言ってたじゃん。
真っ当に働いて稼げないほどの旅費を、娼館の調理場担当がどうやって稼いだって言うんだよ。
つまり金がなくても行き来出来る方法があるってことだろ?
まあ、娼館の従業員であるギデオンが男娼の俺を唆すようなことは、立場上言えないだろうから俺も今ここでは諦めた風を装っておくが。

「こいつはまだ名前がない。日本では名前がないヤツのことを何と呼ぶ?」

ギャレットがいっぱい喋った!
それにこの反応を見るにギャレットは俺が日本人だという確信があったようだが、ギデオンに会わせて再確認したのだろう。
一方、問われたギデオンは顎に手を当てて少し考えてから口を開く。

「名無しの権兵衛」

ちょ、ギデオン!?
俺の源氏名まさかの権兵衛!?
日本語ほとんど忘れたって嘘だろ!?
太郎とか花子ならまだしも、普通そんな渋いのは出てこねえって!
しかしギャレットは眉間に皺を寄せてぼそりと言う。

「長いな。『ナナシ』で」

そっち!?
権兵衛じゃないのかよ!?
【悲報】俺氏、名前がナナシになる。
てっきり俺も外国語の薔薇の名前か何かを付けられると思ってたのに。
権兵衛よりはマシな気がするけど、地味に酷い名前だなオイッ!
でもなんか微妙にしっくりくるような、物凄く惜しいような気がするのは何故なんだぜ?
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