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最終章 砂漠の薔薇
〇一一 薔薇の毒①
男娼とはいえ、水揚げ日も決まっていないのでやることがない。
俺にも出来る仕事がないか自分から訊きに行ってやる義理もない。
競売所では旨い飯を食わせて貰って何をさせられるのかと思えば内覧会に展示されて酷い目に遭ったもんな。
拙者、働きたくないでござる。
そんな俺の現在最大にして唯一の楽しみは食い物。
だからこの邸の中で行くところといったら調理場しかない。
「なあなあ、ギデオン。今日の昼飯なに?」
「……お前、さっき朝飯食ったばかりだろ」
仕込みをしていたギデオンに呆れ顔をされたが俺は気にしない。
「昨夜のお茶漬けもめっちゃ旨かったけど、今朝のオムレツもすげえ旨かったぜ! 口に入れた瞬間バターと生クリームの香りがふわっとして、それをコクのあるシャンピニオンソースが上手く纏めてて絶品だった。だから昼飯に期待が高まっちゃってさ」
「お前あれが分かるのか?」
「旨いもんは誰でもわかるだろ」
「今まで一体どんな生活してたんだ?」
「それな。気付いたら奴隷商に捕まってて、自分の名前もなんにも思い出せないんだよ。それより、昼飯は米がいいなー。俺、米好きなんだよー。あと海老な」
「名前は思い出せないのに好きな食い物は覚えてるのかよ。変な奴だな」
そこまで言ってしまってから俺は昨夜のナズーリンのラーメンの話を思い出した。
ギデオンに好きな物を作って貰うには身体で払うんだった!
「あ……! えっと、今のやっぱりナシ! 作って貰っても払えないから俺!」
「なんだ。ナズに余計なこと吹き込まれたか。心配すんな。何にもいらねえよ。ギャレットからお前の胃袋ガッチリ掴んどけって言われてるから、お前からのリクエストを受けるのも仕事のうちだ」
「あ、そなの……?」
「で、米と海老な……カレーなら出来るか。カレーでいいか?」
「カレー! やった! 俺手伝うよ! 料理は出来ないけど野菜の皮むきくらいは出来るぜ!」
働きたくはないが俺の目的は調理場にある。
「高級男娼にそんなことさせられるかって。傷でも付いたらどうする。お前の仕事はその身体を常に綺麗に整えておくことだろ。昼飯までメイドに爪の手入れでもして貰ってろ」
「ええー、じゃあそこの桃貰ってもいいか?」
何気ない風を装って目的の品を所望した。
「お前それ昨夜からずっと狙ってただろ。穴の開くほど見てたからな。ちょっと待ってろ。まだ硬いがそんなに食いたいならひとつ剥いてやる」
「剥かなくていい。今じゃなくて後で部屋で食べたいんだよ」
「そっか? じゃあ好きにしろ。持ってっていいぞ」
俺にも出来る仕事がないか自分から訊きに行ってやる義理もない。
競売所では旨い飯を食わせて貰って何をさせられるのかと思えば内覧会に展示されて酷い目に遭ったもんな。
拙者、働きたくないでござる。
そんな俺の現在最大にして唯一の楽しみは食い物。
だからこの邸の中で行くところといったら調理場しかない。
「なあなあ、ギデオン。今日の昼飯なに?」
「……お前、さっき朝飯食ったばかりだろ」
仕込みをしていたギデオンに呆れ顔をされたが俺は気にしない。
「昨夜のお茶漬けもめっちゃ旨かったけど、今朝のオムレツもすげえ旨かったぜ! 口に入れた瞬間バターと生クリームの香りがふわっとして、それをコクのあるシャンピニオンソースが上手く纏めてて絶品だった。だから昼飯に期待が高まっちゃってさ」
「お前あれが分かるのか?」
「旨いもんは誰でもわかるだろ」
「今まで一体どんな生活してたんだ?」
「それな。気付いたら奴隷商に捕まってて、自分の名前もなんにも思い出せないんだよ。それより、昼飯は米がいいなー。俺、米好きなんだよー。あと海老な」
「名前は思い出せないのに好きな食い物は覚えてるのかよ。変な奴だな」
そこまで言ってしまってから俺は昨夜のナズーリンのラーメンの話を思い出した。
ギデオンに好きな物を作って貰うには身体で払うんだった!
「あ……! えっと、今のやっぱりナシ! 作って貰っても払えないから俺!」
「なんだ。ナズに余計なこと吹き込まれたか。心配すんな。何にもいらねえよ。ギャレットからお前の胃袋ガッチリ掴んどけって言われてるから、お前からのリクエストを受けるのも仕事のうちだ」
「あ、そなの……?」
「で、米と海老な……カレーなら出来るか。カレーでいいか?」
「カレー! やった! 俺手伝うよ! 料理は出来ないけど野菜の皮むきくらいは出来るぜ!」
働きたくはないが俺の目的は調理場にある。
「高級男娼にそんなことさせられるかって。傷でも付いたらどうする。お前の仕事はその身体を常に綺麗に整えておくことだろ。昼飯までメイドに爪の手入れでもして貰ってろ」
「ええー、じゃあそこの桃貰ってもいいか?」
何気ない風を装って目的の品を所望した。
「お前それ昨夜からずっと狙ってただろ。穴の開くほど見てたからな。ちょっと待ってろ。まだ硬いがそんなに食いたいならひとつ剥いてやる」
「剥かなくていい。今じゃなくて後で部屋で食べたいんだよ」
「そっか? じゃあ好きにしろ。持ってっていいぞ」
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