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出会い
七、
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(まあ、そもそも吸血鬼どころか誰かとどうこうなるなんて俺には無いだろうし、別にいいか)
「そういえば、清飛って何歳?」
話を変えようとしてか、ケリーが慌てたように聞いてくる。
「十七。今年で十八になる」
「そっか!良かった、予想通りだった。日本人って年齢のわりに若く見えるから。清飛は大人っぽいな」
「そうか?そういうケリーは何歳?って言っても同い年くらいだろ?」
「俺?二十二歳だよ」
「へ?あ、成人してたんですね」
てっきり同い年くらいだと思ってたから早々にタメ口で話していたのだが、年上だと知り敬語に戻す。
「やだ!別に気にしないから敬語やめて!他人行儀みたい!」
「他人だけど。まあ、そう言うなら。でもその見た目で二十二って思ったより年いってたんだな。ん?そもそも人間と歳のとり方って一緒?」
「わかった、一個一個説明していくね」
ケリーの説明はこうだった。
吸血鬼の寿命は百歳程で人間とほぼ一緒。だが、一年の日数が違い、なおかつ年によって日数が二、三十日程変化する。なぜ変化するのかというと、吸血鬼の世界に生えているある花が、芽を出してから花が枯れて、次の芽がでる前日までを一年と換算しているからのようだ。そしてその期間は大体、千三百日らしい。
要するに。
「二十二歳っていっても超年上なんですね」
「敬語やめてって!」
ということは、人間と成長の仕方も全然違うし年なんて全然参考にならないか。
「と言っても、この姿は日本旅行用に変えてあるから実際は全然違う見た目だよ」
「それ先に言えよ」
折角納得しかけていたのに、あっさりと違うことを言われ思わず睨み付ける。
「わざわざ姿変えてんの?」
「そう。日本人の二十二歳ってこんな見た目かなーって思ったんだけど清飛によると幼すぎたみたいだね。本当の姿は髪の色も瞳の色も違うよ」
そういえば、倒れていた時に見た目の色は青色だった。あの時は吸血鬼は空腹になったら色が変わるのかなんて考えていたけど、どうやら見当違いだったようだ。きっとあれが本当の色なのだろう。
「もしかして、姿変えるのって血が必要なのか?」
「そうなんだよ。生命維持とか姿変えるのとか、他にもなんか力使う時とかに血が必要なんだ」
なるほど。血を与えてもフラフラとしていて、価値ショボくない?とか思っていたが、血は血で役割があるのだと漸くわかった。やはり吸血鬼には吸血鬼なりの特殊な生態があるんだな。
それに、一つ腑に落ちたことがある。正直やけに色々と、開けっぴろげに話してくれるなと思っていた。人間の中に吸血鬼が混じって生活してるとか、子どもを作ることが可能とか。それってこんなにあっさりと話していいことなんだろうか。それも俺みたいなただ一度血を吸っただけの人間に。
さっきケリーは何か力を使う時に血が必要だと言った。その力の中に記憶を消す力もあるのではないだろうか。きっと今日俺が眠りについた時に記憶を消されるのだろう。母が記憶を消されなかったのは、きっと子どもだったから誰も信じないと思って必要ないと思ったに違いない。
(そう思い始めるとそうとしか思えなくなってきたな。)
「今姿変えることできる?」
どうせ記憶を消されるなら最後にこの吸血鬼の本当の姿を見てみたかった。こんな非日常、もう体験できないだろう。面倒くさがりの自分でも、少しだけソワソワしていた。
だが、これまでの反応からすぐ了承してくれると思っていたケリーの反応はあまり良いものではなかった。
「できるっちゃできるけど……うーん……」
「なに?体がきついとか?」
別に絶対に見たいという訳ではなかったので、ケリーが嫌なのであれば無理強いするつもりは無かった。
「きつい訳ではないんだけど。今俺は清飛からこの姿でいるには十分な血を貰っているが、また変えるってなるとちょっと足りないんだ。まあ戻ることはできるんだけど、またこの姿になるには新たに血が必要になると思う」
(なるほど、足りないだけか。)
「じゃあ姿変えた後にまた血吸わせたらいいの?」
「そりゃそうなんだけど……清飛はいいの?」
「俺?なんで?」
何を心配しているのか分からずに首を傾げる。
「なんでって……痛くなかったの?血出るまで皮膚に噛みつかれるんだよ?さっきは未知のことだったから耐えれたかもしれないけど二回目だと怖くならない?」
「気にしすぎ。別に怖くないから、そういう心配ならとっとと見せて」
なぜこの吸血鬼はこんなにも優しいのだろう。こんな幼い子どもを相手にしているかのような対応をされるとこそばゆい。
(いや、でも人間の十七歳なんてケリーくらいの吸血鬼にとっては子どもみたいなものなのかも。)
それならこういう対応をされても仕方ないかと自分を納得させる。
「本当にいいの?」
「大丈夫だって。それとも俺に何か不都合あるの?血吸われた人が吸血鬼になるとかよく言うじゃん。俺一回吸われてるからあっても遅いけど」
「いや、そんな大きな変化はないよ。もっと小さな変化はあるけど」
「え、あるの?どんな?」
まさか肯定されるとは思わず、少したじろいた。だが、その答えを聞いてすぐに気が抜けた。
「小さな変化って何?」
「ちょっと元気になる」
「ちょっと元気になる?」
(何その変化。)
「ちょっとした風邪とかかすり傷とか治るよ。大きな病気とか怪我は無理だけど進行遅らせたり、治りを少し早めたりできる」
「すごい力じゃん。どうなってんだよ」
不思議だったが、母が血を吸われて風邪が治ったというのは言っていたので疑いは持たなかった。だが、原理はわからなかったので少し心配になった。
「そういえば、清飛って何歳?」
話を変えようとしてか、ケリーが慌てたように聞いてくる。
「十七。今年で十八になる」
「そっか!良かった、予想通りだった。日本人って年齢のわりに若く見えるから。清飛は大人っぽいな」
「そうか?そういうケリーは何歳?って言っても同い年くらいだろ?」
「俺?二十二歳だよ」
「へ?あ、成人してたんですね」
てっきり同い年くらいだと思ってたから早々にタメ口で話していたのだが、年上だと知り敬語に戻す。
「やだ!別に気にしないから敬語やめて!他人行儀みたい!」
「他人だけど。まあ、そう言うなら。でもその見た目で二十二って思ったより年いってたんだな。ん?そもそも人間と歳のとり方って一緒?」
「わかった、一個一個説明していくね」
ケリーの説明はこうだった。
吸血鬼の寿命は百歳程で人間とほぼ一緒。だが、一年の日数が違い、なおかつ年によって日数が二、三十日程変化する。なぜ変化するのかというと、吸血鬼の世界に生えているある花が、芽を出してから花が枯れて、次の芽がでる前日までを一年と換算しているからのようだ。そしてその期間は大体、千三百日らしい。
要するに。
「二十二歳っていっても超年上なんですね」
「敬語やめてって!」
ということは、人間と成長の仕方も全然違うし年なんて全然参考にならないか。
「と言っても、この姿は日本旅行用に変えてあるから実際は全然違う見た目だよ」
「それ先に言えよ」
折角納得しかけていたのに、あっさりと違うことを言われ思わず睨み付ける。
「わざわざ姿変えてんの?」
「そう。日本人の二十二歳ってこんな見た目かなーって思ったんだけど清飛によると幼すぎたみたいだね。本当の姿は髪の色も瞳の色も違うよ」
そういえば、倒れていた時に見た目の色は青色だった。あの時は吸血鬼は空腹になったら色が変わるのかなんて考えていたけど、どうやら見当違いだったようだ。きっとあれが本当の色なのだろう。
「もしかして、姿変えるのって血が必要なのか?」
「そうなんだよ。生命維持とか姿変えるのとか、他にもなんか力使う時とかに血が必要なんだ」
なるほど。血を与えてもフラフラとしていて、価値ショボくない?とか思っていたが、血は血で役割があるのだと漸くわかった。やはり吸血鬼には吸血鬼なりの特殊な生態があるんだな。
それに、一つ腑に落ちたことがある。正直やけに色々と、開けっぴろげに話してくれるなと思っていた。人間の中に吸血鬼が混じって生活してるとか、子どもを作ることが可能とか。それってこんなにあっさりと話していいことなんだろうか。それも俺みたいなただ一度血を吸っただけの人間に。
さっきケリーは何か力を使う時に血が必要だと言った。その力の中に記憶を消す力もあるのではないだろうか。きっと今日俺が眠りについた時に記憶を消されるのだろう。母が記憶を消されなかったのは、きっと子どもだったから誰も信じないと思って必要ないと思ったに違いない。
(そう思い始めるとそうとしか思えなくなってきたな。)
「今姿変えることできる?」
どうせ記憶を消されるなら最後にこの吸血鬼の本当の姿を見てみたかった。こんな非日常、もう体験できないだろう。面倒くさがりの自分でも、少しだけソワソワしていた。
だが、これまでの反応からすぐ了承してくれると思っていたケリーの反応はあまり良いものではなかった。
「できるっちゃできるけど……うーん……」
「なに?体がきついとか?」
別に絶対に見たいという訳ではなかったので、ケリーが嫌なのであれば無理強いするつもりは無かった。
「きつい訳ではないんだけど。今俺は清飛からこの姿でいるには十分な血を貰っているが、また変えるってなるとちょっと足りないんだ。まあ戻ることはできるんだけど、またこの姿になるには新たに血が必要になると思う」
(なるほど、足りないだけか。)
「じゃあ姿変えた後にまた血吸わせたらいいの?」
「そりゃそうなんだけど……清飛はいいの?」
「俺?なんで?」
何を心配しているのか分からずに首を傾げる。
「なんでって……痛くなかったの?血出るまで皮膚に噛みつかれるんだよ?さっきは未知のことだったから耐えれたかもしれないけど二回目だと怖くならない?」
「気にしすぎ。別に怖くないから、そういう心配ならとっとと見せて」
なぜこの吸血鬼はこんなにも優しいのだろう。こんな幼い子どもを相手にしているかのような対応をされるとこそばゆい。
(いや、でも人間の十七歳なんてケリーくらいの吸血鬼にとっては子どもみたいなものなのかも。)
それならこういう対応をされても仕方ないかと自分を納得させる。
「本当にいいの?」
「大丈夫だって。それとも俺に何か不都合あるの?血吸われた人が吸血鬼になるとかよく言うじゃん。俺一回吸われてるからあっても遅いけど」
「いや、そんな大きな変化はないよ。もっと小さな変化はあるけど」
「え、あるの?どんな?」
まさか肯定されるとは思わず、少したじろいた。だが、その答えを聞いてすぐに気が抜けた。
「小さな変化って何?」
「ちょっと元気になる」
「ちょっと元気になる?」
(何その変化。)
「ちょっとした風邪とかかすり傷とか治るよ。大きな病気とか怪我は無理だけど進行遅らせたり、治りを少し早めたりできる」
「すごい力じゃん。どうなってんだよ」
不思議だったが、母が血を吸われて風邪が治ったというのは言っていたので疑いは持たなかった。だが、原理はわからなかったので少し心配になった。
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