7 / 89
出会い
七、
しおりを挟む
(まあ、そもそも吸血鬼どころか誰かとどうこうなるなんて俺には無いだろうし、別にいいか)
「そういえば、清飛って何歳?」
話を変えようとしてか、ケリーが慌てたように聞いてくる。
「十七。今年で十八になる」
「そっか!良かった、予想通りだった。日本人って年齢のわりに若く見えるから。清飛は大人っぽいな」
「そうか?そういうケリーは何歳?って言っても同い年くらいだろ?」
「俺?二十二歳だよ」
「へ?あ、成人してたんですね」
てっきり同い年くらいだと思ってたから早々にタメ口で話していたのだが、年上だと知り敬語に戻す。
「やだ!別に気にしないから敬語やめて!他人行儀みたい!」
「他人だけど。まあ、そう言うなら。でもその見た目で二十二って思ったより年いってたんだな。ん?そもそも人間と歳のとり方って一緒?」
「わかった、一個一個説明していくね」
ケリーの説明はこうだった。
吸血鬼の寿命は百歳程で人間とほぼ一緒。だが、一年の日数が違い、なおかつ年によって日数が二、三十日程変化する。なぜ変化するのかというと、吸血鬼の世界に生えているある花が、芽を出してから花が枯れて、次の芽がでる前日までを一年と換算しているからのようだ。そしてその期間は大体、千三百日らしい。
要するに。
「二十二歳っていっても超年上なんですね」
「敬語やめてって!」
ということは、人間と成長の仕方も全然違うし年なんて全然参考にならないか。
「と言っても、この姿は日本旅行用に変えてあるから実際は全然違う見た目だよ」
「それ先に言えよ」
折角納得しかけていたのに、あっさりと違うことを言われ思わず睨み付ける。
「わざわざ姿変えてんの?」
「そう。日本人の二十二歳ってこんな見た目かなーって思ったんだけど清飛によると幼すぎたみたいだね。本当の姿は髪の色も瞳の色も違うよ」
そういえば、倒れていた時に見た目の色は青色だった。あの時は吸血鬼は空腹になったら色が変わるのかなんて考えていたけど、どうやら見当違いだったようだ。きっとあれが本当の色なのだろう。
「もしかして、姿変えるのって血が必要なのか?」
「そうなんだよ。生命維持とか姿変えるのとか、他にもなんか力使う時とかに血が必要なんだ」
なるほど。血を与えてもフラフラとしていて、価値ショボくない?とか思っていたが、血は血で役割があるのだと漸くわかった。やはり吸血鬼には吸血鬼なりの特殊な生態があるんだな。
それに、一つ腑に落ちたことがある。正直やけに色々と、開けっぴろげに話してくれるなと思っていた。人間の中に吸血鬼が混じって生活してるとか、子どもを作ることが可能とか。それってこんなにあっさりと話していいことなんだろうか。それも俺みたいなただ一度血を吸っただけの人間に。
さっきケリーは何か力を使う時に血が必要だと言った。その力の中に記憶を消す力もあるのではないだろうか。きっと今日俺が眠りについた時に記憶を消されるのだろう。母が記憶を消されなかったのは、きっと子どもだったから誰も信じないと思って必要ないと思ったに違いない。
(そう思い始めるとそうとしか思えなくなってきたな。)
「今姿変えることできる?」
どうせ記憶を消されるなら最後にこの吸血鬼の本当の姿を見てみたかった。こんな非日常、もう体験できないだろう。面倒くさがりの自分でも、少しだけソワソワしていた。
だが、これまでの反応からすぐ了承してくれると思っていたケリーの反応はあまり良いものではなかった。
「できるっちゃできるけど……うーん……」
「なに?体がきついとか?」
別に絶対に見たいという訳ではなかったので、ケリーが嫌なのであれば無理強いするつもりは無かった。
「きつい訳ではないんだけど。今俺は清飛からこの姿でいるには十分な血を貰っているが、また変えるってなるとちょっと足りないんだ。まあ戻ることはできるんだけど、またこの姿になるには新たに血が必要になると思う」
(なるほど、足りないだけか。)
「じゃあ姿変えた後にまた血吸わせたらいいの?」
「そりゃそうなんだけど……清飛はいいの?」
「俺?なんで?」
何を心配しているのか分からずに首を傾げる。
「なんでって……痛くなかったの?血出るまで皮膚に噛みつかれるんだよ?さっきは未知のことだったから耐えれたかもしれないけど二回目だと怖くならない?」
「気にしすぎ。別に怖くないから、そういう心配ならとっとと見せて」
なぜこの吸血鬼はこんなにも優しいのだろう。こんな幼い子どもを相手にしているかのような対応をされるとこそばゆい。
(いや、でも人間の十七歳なんてケリーくらいの吸血鬼にとっては子どもみたいなものなのかも。)
それならこういう対応をされても仕方ないかと自分を納得させる。
「本当にいいの?」
「大丈夫だって。それとも俺に何か不都合あるの?血吸われた人が吸血鬼になるとかよく言うじゃん。俺一回吸われてるからあっても遅いけど」
「いや、そんな大きな変化はないよ。もっと小さな変化はあるけど」
「え、あるの?どんな?」
まさか肯定されるとは思わず、少したじろいた。だが、その答えを聞いてすぐに気が抜けた。
「小さな変化って何?」
「ちょっと元気になる」
「ちょっと元気になる?」
(何その変化。)
「ちょっとした風邪とかかすり傷とか治るよ。大きな病気とか怪我は無理だけど進行遅らせたり、治りを少し早めたりできる」
「すごい力じゃん。どうなってんだよ」
不思議だったが、母が血を吸われて風邪が治ったというのは言っていたので疑いは持たなかった。だが、原理はわからなかったので少し心配になった。
「そういえば、清飛って何歳?」
話を変えようとしてか、ケリーが慌てたように聞いてくる。
「十七。今年で十八になる」
「そっか!良かった、予想通りだった。日本人って年齢のわりに若く見えるから。清飛は大人っぽいな」
「そうか?そういうケリーは何歳?って言っても同い年くらいだろ?」
「俺?二十二歳だよ」
「へ?あ、成人してたんですね」
てっきり同い年くらいだと思ってたから早々にタメ口で話していたのだが、年上だと知り敬語に戻す。
「やだ!別に気にしないから敬語やめて!他人行儀みたい!」
「他人だけど。まあ、そう言うなら。でもその見た目で二十二って思ったより年いってたんだな。ん?そもそも人間と歳のとり方って一緒?」
「わかった、一個一個説明していくね」
ケリーの説明はこうだった。
吸血鬼の寿命は百歳程で人間とほぼ一緒。だが、一年の日数が違い、なおかつ年によって日数が二、三十日程変化する。なぜ変化するのかというと、吸血鬼の世界に生えているある花が、芽を出してから花が枯れて、次の芽がでる前日までを一年と換算しているからのようだ。そしてその期間は大体、千三百日らしい。
要するに。
「二十二歳っていっても超年上なんですね」
「敬語やめてって!」
ということは、人間と成長の仕方も全然違うし年なんて全然参考にならないか。
「と言っても、この姿は日本旅行用に変えてあるから実際は全然違う見た目だよ」
「それ先に言えよ」
折角納得しかけていたのに、あっさりと違うことを言われ思わず睨み付ける。
「わざわざ姿変えてんの?」
「そう。日本人の二十二歳ってこんな見た目かなーって思ったんだけど清飛によると幼すぎたみたいだね。本当の姿は髪の色も瞳の色も違うよ」
そういえば、倒れていた時に見た目の色は青色だった。あの時は吸血鬼は空腹になったら色が変わるのかなんて考えていたけど、どうやら見当違いだったようだ。きっとあれが本当の色なのだろう。
「もしかして、姿変えるのって血が必要なのか?」
「そうなんだよ。生命維持とか姿変えるのとか、他にもなんか力使う時とかに血が必要なんだ」
なるほど。血を与えてもフラフラとしていて、価値ショボくない?とか思っていたが、血は血で役割があるのだと漸くわかった。やはり吸血鬼には吸血鬼なりの特殊な生態があるんだな。
それに、一つ腑に落ちたことがある。正直やけに色々と、開けっぴろげに話してくれるなと思っていた。人間の中に吸血鬼が混じって生活してるとか、子どもを作ることが可能とか。それってこんなにあっさりと話していいことなんだろうか。それも俺みたいなただ一度血を吸っただけの人間に。
さっきケリーは何か力を使う時に血が必要だと言った。その力の中に記憶を消す力もあるのではないだろうか。きっと今日俺が眠りについた時に記憶を消されるのだろう。母が記憶を消されなかったのは、きっと子どもだったから誰も信じないと思って必要ないと思ったに違いない。
(そう思い始めるとそうとしか思えなくなってきたな。)
「今姿変えることできる?」
どうせ記憶を消されるなら最後にこの吸血鬼の本当の姿を見てみたかった。こんな非日常、もう体験できないだろう。面倒くさがりの自分でも、少しだけソワソワしていた。
だが、これまでの反応からすぐ了承してくれると思っていたケリーの反応はあまり良いものではなかった。
「できるっちゃできるけど……うーん……」
「なに?体がきついとか?」
別に絶対に見たいという訳ではなかったので、ケリーが嫌なのであれば無理強いするつもりは無かった。
「きつい訳ではないんだけど。今俺は清飛からこの姿でいるには十分な血を貰っているが、また変えるってなるとちょっと足りないんだ。まあ戻ることはできるんだけど、またこの姿になるには新たに血が必要になると思う」
(なるほど、足りないだけか。)
「じゃあ姿変えた後にまた血吸わせたらいいの?」
「そりゃそうなんだけど……清飛はいいの?」
「俺?なんで?」
何を心配しているのか分からずに首を傾げる。
「なんでって……痛くなかったの?血出るまで皮膚に噛みつかれるんだよ?さっきは未知のことだったから耐えれたかもしれないけど二回目だと怖くならない?」
「気にしすぎ。別に怖くないから、そういう心配ならとっとと見せて」
なぜこの吸血鬼はこんなにも優しいのだろう。こんな幼い子どもを相手にしているかのような対応をされるとこそばゆい。
(いや、でも人間の十七歳なんてケリーくらいの吸血鬼にとっては子どもみたいなものなのかも。)
それならこういう対応をされても仕方ないかと自分を納得させる。
「本当にいいの?」
「大丈夫だって。それとも俺に何か不都合あるの?血吸われた人が吸血鬼になるとかよく言うじゃん。俺一回吸われてるからあっても遅いけど」
「いや、そんな大きな変化はないよ。もっと小さな変化はあるけど」
「え、あるの?どんな?」
まさか肯定されるとは思わず、少したじろいた。だが、その答えを聞いてすぐに気が抜けた。
「小さな変化って何?」
「ちょっと元気になる」
「ちょっと元気になる?」
(何その変化。)
「ちょっとした風邪とかかすり傷とか治るよ。大きな病気とか怪我は無理だけど進行遅らせたり、治りを少し早めたりできる」
「すごい力じゃん。どうなってんだよ」
不思議だったが、母が血を吸われて風邪が治ったというのは言っていたので疑いは持たなかった。だが、原理はわからなかったので少し心配になった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる