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中間テスト期間
十五、
しおりを挟む(疲れた……。)
バイト後、帰宅してケリーが作ってくれた晩ごはんを食べてシャワーを浴びた後、教科書とノートを並べて勉強する。理数科目は得意だが、文系科目は苦手だ。歴史にしろ地理にしろ、社会の教科書は文字が書き連ねてあるだけだし、英語は単語を覚えないとそもそも何を問われているのかよく分からない。ただ、苦手なだけで社会も英語もできない訳ではなかった。暗記は面倒くさいが頑張ればいいし、単語さえわかれば文法を理解さえすれば解くのは難しくなかった。
そう、解き方さえ分かれば答えは一つだけだから目的がはっきりしていてまだやりやすいのだ。
(国語がなあ……。)
教科書を見たり、ノートを見たり、参考書を見たり……パラパラとページをめくりながら問題の意図を読み取ろうとする。だが、疲れて集中力が切れてしまい、ため息を吐いて目を閉じて上を向く。長時間下を向いているとやはり疲れる。
まだ、古文や漢文は良い。「この文章を日本語訳しなさい」等は英語と同じように考えれば解くことができる。だが、現代文の文章問題だと「ここで筆者は何を伝えたかったか」のような明確な答えがない問題が多く、腑に落ちない瞬間がある。それに、現代文の教師の加藤とはどこか馬が合わず、作品についての解釈違いが多くて授業自体が好きではなかった。
休憩しよう、とケリーと遊んでいるテテを見る。ビー玉を転がして遊んでいたテテは、俺の視線に気付き「ぴゃー!」と鳴いて一目散に走ってきた。ピョンっと膝に座って、背中を撫でるとコテンと横になって可愛くて癒される。
その様子を見ていたケリーから声をかけられた。
「休憩?ココアかお茶飲む?」
「飲む。ココアが良い」
ケリーが来てからここに少しだけ物が増えた。一人でいた時は飲み物なんて水でいいと思っていて、麦茶のパックもココアも買っていなかった。しかし。いざ家にどちらも常備されると水じゃなくて麦茶がいいし、甘いココアを選びたくなる。
「俺も飲もうっと!」と自分の分は二つ氷を入れて冷ましてから二つのコップを手にして戻ってきた。
「はい、こっち清飛の」
「ありがと」
「勉強は順調?」
「まあ、大体は。国語が苦手で疲れる」
「え?意外だな」
「なにが?」
「清飛、普段から本読んでるから、てっきり国語得意なのかと思ってた」
二人でいても各々好きなように過ごすので、普段俺はケリーを気にせず一人で本を読んでいた。アパートであるこの部屋は狭く、あまり多くの本を置けないので図書館で借りた物が殆どである。
「本読んでても別に国語が得意なわけじゃない」
「でも読んでるのが太宰治とか島崎藤村とか、文豪の作品が多かったから」
「吸血鬼が太宰治とかわかるの?」
「名前くらいは。あ!『走れメロス』は読んだことあるよ!」
「そう」
今更驚きはしないが、『走れメロス』を読む吸血鬼というフレーズは面白い。吸血鬼の世界に浸透してる『走れメロス』……。
「国語のどんな所が苦手なの?」
「なんか、良い作品は良い作品なんだから、無理に理解を深めようとするのって野暮なんじゃないかと思ってしまう。この表現"なんか"好きだなって思っても言語化してしまったら別の感情になってしまいそうだし。どういう意味か噛み砕かれて説明されても情緒ないな、とか」
「あー、なるほど。本好きだからこその、こだわりがあるんだね」
こだわりなのだろうか。情緒と言っても結局は深く追わず浅い所で楽しみたいという自分の面倒くさがりな一面が原因ではないかとも思う。俺にとって現代文は考える枠が広く、途方に暮れる教科であった。
考えるのが嫌になってきて、という国語に悩むのに飽きて、一旦教科を変えてリフレッシュしようと数学を手に取る。
「気分転換に数学する」
「うわー、数学か。俺苦手。頑張って」
自分がする訳でもないのに嫌そうな表情を浮かべるケリーにエールを貰いながら、数学の問題集を開いた。勉強を再開すると、テテは膝の上から下りて放置していたビー玉の元に向かった。小さな背中が「勉強会の邪魔はしないぞ」と言っているようで、賢いなと思った。
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