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一話 出会いの季節
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「いいから帰れって言ってんだよぉぉぉおお!」
「だから無理って言ってるでしょぉおおおお!」
俺、立樹淳宏は現在、俺の部屋でとある女性と取っ組み合いをしていた。
互いの手を掴み、額を合わせ叫んでいたのだ。
「帰れぇええええええ!」
「無理なのよぉおおお!」
…これは、とある一般高校生が、異世界から来た変な奴を全力で元の世界へ帰す物語である。
6時間前。土曜日の昼13:00。外は春の桜が満開で、空には桜の花びらが舞う4月初めの土曜日。
俺は出張で両親がいない実家のダイニングで自家製のペペロンチーノを食べ終えてお腹をさすっていた。満足して椅子から立ち、お皿をキッチンのシンクに置いた。そしてその場でベランダから見える遠くの桜を見て物思いに耽っていた。
「桜…出会いと別れの季節かぁ…」
俺は進級して高校二年生。去年三年生だった先輩たちは校舎と仲間に別れを告げ、新入生は多くの人との出会いがあったはずだ。非常に感慨深い季節だ。
今週の学校生活は進級するのと同時に、新しい先生とも会ったり授業をしたりとで体はかなり疲れていた。
両親がいない土曜日。俺はこの日を満喫するぞと言わんばかりにソファに倒れ込んだ。
その瞬間だった。
ボォオンッ!と音が響いた。
「えあ!?何ッ!?」
俺は慌てて沈めた顔を持ち上げて音がしたほうへ振り向いた。爆発音のようなものがしたのは俺の部屋のほうからだ。
今の音は他の人の部屋の耳にも届いたに違いない。ここはマンションだからだ。だがそんなことはお構いなしに、俺は胸の鼓動を感じながら廊下へ足を踏み出した。
間違いない、俺の部屋からだ。
何か俺の部屋に危険なものでもあったのだろうかとすごく不安になった時、俺の部屋から聞いたことがない女性の声が聞こえてきた。
「なっ!?こ―は、―こ!?」
ドアで声が少し遮断されていてよく聞こえないが、女性の声だ。俺は一気に身震いした。今日は一回も人を部屋に上げたことがないし、ましてや女性を部屋に呼んだことも一度もないのだ。
ということは、今俺の部屋にいるのは空き巣か泥棒の類だろうか。それだったらどうしよう。俺は自分の部屋へ歩む足を止め、少し考える。
「…よし」
俺はキッチンに行き、先ほどペペロンチーノを切った際に使った包丁を手に持った。人には頼らず、自分で解決しようと躍起になったのだ。
俺は包丁の先端を常に前にして廊下をゆっくり歩いた。
そしてついに、部屋の前に立った。ドアは特に傷ついているようには見えない。
包丁を左手に持ち替えて右手でドアノブに手をかけ、呼吸を一つ。歯を食いしばって俺はドアを思い切り開けた。
「誰だッ!」
俺は力任せに開けたドアの勢いで声を張った。部屋は少し煙が舞っていた。爆発音の大きさに対し、俺の部屋はかなり原型を保っていた。だが小物置きに愛用していた木の棚が破壊されている。
そして部屋の中央にはその主犯と思われる人物が、床に座っていた。両足を伸ばし、両手を床につき、心ここにあらずといった表情でその人が座っていた。
いや、心ここにあらずなのは俺のほうなのだが。
座っていたのは声を聞いた通り、女性のようだ。濃く赤い、ショートヘアにウェーブかかった髪色。顔は整っており、目は鮮やかな黄緑色だった。
服は法衣のようで、白を基調としたものだ。フードもついていて、装飾も鮮やかに施されている。だが今の爆発で少し汚れていた。
「…おい」
俺は震えながら、コスプレしている同い年ぐらいの不審者に声をかけた。
床に座っている赤髪の女性は、俺の声に気づいたようで初めて目が合った。どうやらドアを開けた俺のことを今まで認識していなかったようだ。
その人はついに表情を整え、口を一度閉じて言葉を発した。
「…あの、すみません」
「は…はい?」
「ここは…どこですか?」
「…は?」
俺の出会いの季節は、変な奴との出会いだった。
「だから無理って言ってるでしょぉおおおお!」
俺、立樹淳宏は現在、俺の部屋でとある女性と取っ組み合いをしていた。
互いの手を掴み、額を合わせ叫んでいたのだ。
「帰れぇええええええ!」
「無理なのよぉおおお!」
…これは、とある一般高校生が、異世界から来た変な奴を全力で元の世界へ帰す物語である。
6時間前。土曜日の昼13:00。外は春の桜が満開で、空には桜の花びらが舞う4月初めの土曜日。
俺は出張で両親がいない実家のダイニングで自家製のペペロンチーノを食べ終えてお腹をさすっていた。満足して椅子から立ち、お皿をキッチンのシンクに置いた。そしてその場でベランダから見える遠くの桜を見て物思いに耽っていた。
「桜…出会いと別れの季節かぁ…」
俺は進級して高校二年生。去年三年生だった先輩たちは校舎と仲間に別れを告げ、新入生は多くの人との出会いがあったはずだ。非常に感慨深い季節だ。
今週の学校生活は進級するのと同時に、新しい先生とも会ったり授業をしたりとで体はかなり疲れていた。
両親がいない土曜日。俺はこの日を満喫するぞと言わんばかりにソファに倒れ込んだ。
その瞬間だった。
ボォオンッ!と音が響いた。
「えあ!?何ッ!?」
俺は慌てて沈めた顔を持ち上げて音がしたほうへ振り向いた。爆発音のようなものがしたのは俺の部屋のほうからだ。
今の音は他の人の部屋の耳にも届いたに違いない。ここはマンションだからだ。だがそんなことはお構いなしに、俺は胸の鼓動を感じながら廊下へ足を踏み出した。
間違いない、俺の部屋からだ。
何か俺の部屋に危険なものでもあったのだろうかとすごく不安になった時、俺の部屋から聞いたことがない女性の声が聞こえてきた。
「なっ!?こ―は、―こ!?」
ドアで声が少し遮断されていてよく聞こえないが、女性の声だ。俺は一気に身震いした。今日は一回も人を部屋に上げたことがないし、ましてや女性を部屋に呼んだことも一度もないのだ。
ということは、今俺の部屋にいるのは空き巣か泥棒の類だろうか。それだったらどうしよう。俺は自分の部屋へ歩む足を止め、少し考える。
「…よし」
俺はキッチンに行き、先ほどペペロンチーノを切った際に使った包丁を手に持った。人には頼らず、自分で解決しようと躍起になったのだ。
俺は包丁の先端を常に前にして廊下をゆっくり歩いた。
そしてついに、部屋の前に立った。ドアは特に傷ついているようには見えない。
包丁を左手に持ち替えて右手でドアノブに手をかけ、呼吸を一つ。歯を食いしばって俺はドアを思い切り開けた。
「誰だッ!」
俺は力任せに開けたドアの勢いで声を張った。部屋は少し煙が舞っていた。爆発音の大きさに対し、俺の部屋はかなり原型を保っていた。だが小物置きに愛用していた木の棚が破壊されている。
そして部屋の中央にはその主犯と思われる人物が、床に座っていた。両足を伸ばし、両手を床につき、心ここにあらずといった表情でその人が座っていた。
いや、心ここにあらずなのは俺のほうなのだが。
座っていたのは声を聞いた通り、女性のようだ。濃く赤い、ショートヘアにウェーブかかった髪色。顔は整っており、目は鮮やかな黄緑色だった。
服は法衣のようで、白を基調としたものだ。フードもついていて、装飾も鮮やかに施されている。だが今の爆発で少し汚れていた。
「…おい」
俺は震えながら、コスプレしている同い年ぐらいの不審者に声をかけた。
床に座っている赤髪の女性は、俺の声に気づいたようで初めて目が合った。どうやらドアを開けた俺のことを今まで認識していなかったようだ。
その人はついに表情を整え、口を一度閉じて言葉を発した。
「…あの、すみません」
「は…はい?」
「ここは…どこですか?」
「…は?」
俺の出会いの季節は、変な奴との出会いだった。
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