オレがαでアイツはΩ ~いつかご主人様と呼ばせてやる!~

尾和 ハボレ

文字の大きさ
5 / 5

『傘』

しおりを挟む
『傘』

「あんまコッチくんな! 肩がぬれるだろ!」
「ボクの傘だし。ちゃんと持ってよ」
「クソが」

放課後、突然の土砂降り。

怒涛のように振り続ける雨を前に校舎玄関で絶望していると、帰り支度のトロい生き物がようやく靴をはいてやってきた。

「うわぁ、すごい雨」
「見りゃわかる」
「じゃあね」

するとコイツは折り畳みの傘を広げて、雨の中へ歩き出した。

「待て待て待て!」
「なに?」
「何? じゃねぇよ、入れろよ!」

コイツ素でなに? とか返したぞ? 血の色、青いんじゃねぇのか!?

「でもこれ折り畳みで小さいし、ヒビキが入ったらボクが濡れるでしょ?」
「いや、そうだが、そこは仕方ないなって言うところだろ」
「えー」

本気でイヤそうな顔になる。幼馴染に対する所業とは思えん。

「じゃあ、はい。持って」
「ん、おう?」

差し出された傘を手に取るオレ。

「オレが持つのかよ」
「ボクが持つとヒビキの頭をつっつくよ? そのムダに大きい背が役に立つね?」

いちいち腹の立つヤツだ。

だが、ここで文句を言って一人で帰られると困る。今は泣き寝入りだ。

というか、コイツはオレが文句を言えないとわかっていてやっているから始末が悪い。

オレが傘を持つとぐいぐいとこちらに寄ってくる。

「寄りすぎだ。オレが濡れるだろ!」
「これでもボクの肩、冷たいんですけど」

一つ傘の下、オレが左、青い血の冷血漢が右。

たしかにお互いの肩は濡れているが、あきらかにオレの方が濡れている。

だというのに。

「もっと中に入れてよ」
「もう無理だっつーの! 冷てぇ!」

オレの胸元まで寄り添うにして密着してくる。

それを突き離したりと、押し合いしているうちに二人ともずぶ振れだ。

肩どころか首の近くまで傘からはずれて、襟から雨が首の中に雨が入り込んでくるし、髪からも水滴が垂れている。

もう、傘、意味ねーな。

「冷たい。もっと寄ろうよ。くっつけ少しは暖かいんじゃない?」
「二人してこんだけ濡れてんのにあったかいわけねえだろうが!」
「そう? ……ボクは暖かいよ?」

胸元に入り込むようにしてきたキョウのつむじ髪がオレの鼻先をくすぐる。

その髪も肩もびしょ濡れだってのに、何を言ってるんだコイツは。

結局、雨が弱まる事もなくオレたちは傘の下を取り合いながら帰宅した。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

しー
2022.01.28 しー

凄く面白いです🥺
続きが早く見たくてウズウズしてます🤩❤︎

2022.01.28 尾和 ハボレ

しー様、初めまして(*´ω`*)ノ
感想頂き、ありがとうございました! とても励みになります!
良いシーンが降ってきたら更新なので不定期ですが、ぜひまた遊びに来てくださいね(*'▽')

解除

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

隣の番は、俺だけを見ている

雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。 ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。 執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。 【キャラクター設定】 ■主人公(受け) 名前:湊(みなと) 属性:Ω(オメガ) 年齢:17歳 性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。 特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。 ■相手(攻め) 名前:律(りつ) 属性:α(アルファ) 年齢:18歳 性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。 特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。