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『高嶺の花にはトゲがある(2)』
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『高嶺の花にはトゲがある(2)』
真面目で誠実な子だ。
私は以前、祖母や母の仕事のつきそいの関係で、彼女の母親とも会ったことがあるが、彼女と同じく真面目で実直な方だった。きっと育て方が良いのだろう。
私のような男の子の事ばかり考えていいる、見た目と役職だけが真面目な女とは大違いの子。
三年生になったら会長となって、がんばってくれるに違いない。
「空手部から備品補充の要望がありましたので、実際に見てきました」
「……ああ、空手部。また、あそこ。それでどうだったの?」
手にある写真つきの書類を私に差し出す春日井さん。
「説明をしてくれた部員いわく『蹴ったら壊れた』との事でした。それは間違いありません」
「確かに殴ったり蹴ったりする部活だけれど」
「その言い方には語弊がありますよ。武道ですから」
「道とつく以上、礼儀にも敬意を示すべきよね?」
「おっしゃる通りです」
私は春日井さんから受け取った書類を見る。
「そこにプリントされている写真、どう見ても道場の更衣室のドアよね?」
「はい」
「蹴るものではないわよね?」
「はい」
それをバカ正直に蹴って壊したという空手部。
ウソをつかない真面目さなのか、罪悪感すらない無法者集団なのか判断に迷うところだが、どうあれ対処は決まった。
「今年度予算の部費からの天引きで、業者さんに修理をお願いします」
「そう思いまして私もそう主将に伝えたのですが、待ったが入りました」
「待つ要素も情状酌量の余地もないでしょうに」
「昨年、殴って壊したという部室の壁の穴を今年度予算を前借して修理しているため、今年予算からさらに今回の修理代を引いてしまいますと、活動予算に支障があります」
「……はぁ」
今日の私はため息ばかりだ。
「あと、冬原先生から忖度の要望がありまた」
「冬原先生? いくらなんでも私情を挟みすぎでしょう」
空手部顧問であり、そしてこの生徒会副顧問でもある。
悪い先生ではない。
ただ体育教師というためか、言動や恰好が暑苦しいところは目立つ。
あまり知る生徒はいないがこの学校のOGであり、元空手部主将でもあったとも聞いている。
生徒会の顧問であり、保険の先生である山崎先生いわく、冬原先生とその一つ上の先輩がいた時代は大会や交流試合でまさに負けなしだったそうだ。
対峙した相手が目をあわせないほどの迫力と実力差があり、日華の餓狼姉妹と呼ばれて恐れられていたという。
ただ、学園内外でも色々問題を起こしていた二人だそうで、ケンカ騒ぎは片手では数えられないとも聞いている。
私が知る冬原先生とはイメージがずいぶんと違う。
当時の空手部顧問だったという山崎先生は、さんざん手を焼かされたが、手がかかる子達ほどかわいいものだ、と、とても楽しそうにそう昔ばなしを語ってくれた。
それはともかく。
「いくらOGの先生でもひいきはしません。それに忖度を要望って。それはただの要請や強制じゃないのよ」
「ええ。なので却下いたしました」
「却下したんだ」
以外と強いわね、この子。
そんな春日井さんがスカートのポケットから茶封筒をとりだして、私に差し出す。
「これは?」
「ドアの修理費です」
「……冬原先生の自腹?」
「はい。最初は一万円だけだったので、足りませんといって三万円ほど回収してきました」
春日井さんって、冬原先生が担任のクラスの子よね。容赦がないわ。
けれど、将来の生徒会長と考えると頼もしい。
「というわけで、このお金を預かっていただこうと思いまして伺ったのですげれど……さきほど、ここから出ていかれた副会長とすれ違いましたが、何かありましたか?」
「……何か、というほどでもないけれど、少し機嫌を損ねてしまったわ。もしかしたらもう顔を出してくれないかもしれない」
春日井さんには申し訳ないことをしたかもれしない。
彼女にとっても、生徒会というのは男性と身近に触れ合える少ない機会だと思う。
それを私の身勝手な話で失くしてしまった。
「そうですか。でももう六月ですし、三年生の活動期間は長くても夏休み前まででしょうから、生徒会活動に支障はないと思うます」
「そ、そうね」
だが、予想と違って、春日井さんはそんな反応を返してくる。
この子も副会長には興味をもっていたようだったけれど……いえ、最近はまったくといってもいいほどに見向きもしなくなっていたわね。
女が男に興味を示さなくなる理由は少ない。
もっともたる理由として、特定のつきあいのある男性ができた場合。
その相手に浮気とともとれる言動を控えるという時だ。
男性がからんだと時の女同士の争いはみにくい。
ある事ない事を相手男の耳に届くように吹聴する事だって珍しくはないのだ。
……え、もしかして?
真面目で誠実な子だ。
私は以前、祖母や母の仕事のつきそいの関係で、彼女の母親とも会ったことがあるが、彼女と同じく真面目で実直な方だった。きっと育て方が良いのだろう。
私のような男の子の事ばかり考えていいる、見た目と役職だけが真面目な女とは大違いの子。
三年生になったら会長となって、がんばってくれるに違いない。
「空手部から備品補充の要望がありましたので、実際に見てきました」
「……ああ、空手部。また、あそこ。それでどうだったの?」
手にある写真つきの書類を私に差し出す春日井さん。
「説明をしてくれた部員いわく『蹴ったら壊れた』との事でした。それは間違いありません」
「確かに殴ったり蹴ったりする部活だけれど」
「その言い方には語弊がありますよ。武道ですから」
「道とつく以上、礼儀にも敬意を示すべきよね?」
「おっしゃる通りです」
私は春日井さんから受け取った書類を見る。
「そこにプリントされている写真、どう見ても道場の更衣室のドアよね?」
「はい」
「蹴るものではないわよね?」
「はい」
それをバカ正直に蹴って壊したという空手部。
ウソをつかない真面目さなのか、罪悪感すらない無法者集団なのか判断に迷うところだが、どうあれ対処は決まった。
「今年度予算の部費からの天引きで、業者さんに修理をお願いします」
「そう思いまして私もそう主将に伝えたのですが、待ったが入りました」
「待つ要素も情状酌量の余地もないでしょうに」
「昨年、殴って壊したという部室の壁の穴を今年度予算を前借して修理しているため、今年予算からさらに今回の修理代を引いてしまいますと、活動予算に支障があります」
「……はぁ」
今日の私はため息ばかりだ。
「あと、冬原先生から忖度の要望がありまた」
「冬原先生? いくらなんでも私情を挟みすぎでしょう」
空手部顧問であり、そしてこの生徒会副顧問でもある。
悪い先生ではない。
ただ体育教師というためか、言動や恰好が暑苦しいところは目立つ。
あまり知る生徒はいないがこの学校のOGであり、元空手部主将でもあったとも聞いている。
生徒会の顧問であり、保険の先生である山崎先生いわく、冬原先生とその一つ上の先輩がいた時代は大会や交流試合でまさに負けなしだったそうだ。
対峙した相手が目をあわせないほどの迫力と実力差があり、日華の餓狼姉妹と呼ばれて恐れられていたという。
ただ、学園内外でも色々問題を起こしていた二人だそうで、ケンカ騒ぎは片手では数えられないとも聞いている。
私が知る冬原先生とはイメージがずいぶんと違う。
当時の空手部顧問だったという山崎先生は、さんざん手を焼かされたが、手がかかる子達ほどかわいいものだ、と、とても楽しそうにそう昔ばなしを語ってくれた。
それはともかく。
「いくらOGの先生でもひいきはしません。それに忖度を要望って。それはただの要請や強制じゃないのよ」
「ええ。なので却下いたしました」
「却下したんだ」
以外と強いわね、この子。
そんな春日井さんがスカートのポケットから茶封筒をとりだして、私に差し出す。
「これは?」
「ドアの修理費です」
「……冬原先生の自腹?」
「はい。最初は一万円だけだったので、足りませんといって三万円ほど回収してきました」
春日井さんって、冬原先生が担任のクラスの子よね。容赦がないわ。
けれど、将来の生徒会長と考えると頼もしい。
「というわけで、このお金を預かっていただこうと思いまして伺ったのですげれど……さきほど、ここから出ていかれた副会長とすれ違いましたが、何かありましたか?」
「……何か、というほどでもないけれど、少し機嫌を損ねてしまったわ。もしかしたらもう顔を出してくれないかもしれない」
春日井さんには申し訳ないことをしたかもれしない。
彼女にとっても、生徒会というのは男性と身近に触れ合える少ない機会だと思う。
それを私の身勝手な話で失くしてしまった。
「そうですか。でももう六月ですし、三年生の活動期間は長くても夏休み前まででしょうから、生徒会活動に支障はないと思うます」
「そ、そうね」
だが、予想と違って、春日井さんはそんな反応を返してくる。
この子も副会長には興味をもっていたようだったけれど……いえ、最近はまったくといってもいいほどに見向きもしなくなっていたわね。
女が男に興味を示さなくなる理由は少ない。
もっともたる理由として、特定のつきあいのある男性ができた場合。
その相手に浮気とともとれる言動を控えるという時だ。
男性がからんだと時の女同士の争いはみにくい。
ある事ない事を相手男の耳に届くように吹聴する事だって珍しくはないのだ。
……え、もしかして?
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