【R18】転生先は男女比1:30の貞操逆転世界~ビッチを夢見る三十路の魂~

尾和 ハボレ

文字の大きさ
388 / 437

『薫の日常(5)』

しおりを挟む
『薫の日常(5)』  

それまでの柔らかい口調と雰囲気が消え、やや厳しい顔と声で言いつける花お母さん。
 
「う、うん」
 
花さんにはそういう言い訳で誤魔化しているのだから、薫ちゃんもそう言われれば従うしかない。
 
花さんのやや怒っているようにもとれる雰囲気からして、顔も性格も良い優しい先輩(オレの事だぞ)に、自分の娘が甘えてお手数おかけてしてしまった、という心苦しさのようなものを感じる。
 
あとは、例えオレが大事にするつもりがなくとも、男絡みのトラブルから娘を遠ざけようとする意思も感じた。
 
男女比の偏りが激しい、この世界。
 
知らない男が娘をおんぶして帰宅してきたら、こういう反応になるのもわかる。
 
オレからすれば些細な事でも、停学、退学、微罪に大罪、そう発展してしまうケースもある。
 
今回はオレも調子に乗りすぎた。軽率だったな。
 
「薫ちゃん、早く冷やした方がいいよ? シップとかある?」
 
オレも花さんを安心させるべく、それとなくうながした。
 
「あ、はいッス」
 
うなずいた薫ちゃんは、カウンターに手をつきながら、足の痛むフリをしつつ立ち上がる。
 
「じゃ、じゃあ。あの。京センパイ。今日は本当にありがとうございました!」
「こちらこそ。楽しかったよ。また学校でね。お大事に」
 
そう言って薫ちゃんは店の奥へと消えていく。
 
何度も何度もこちらを振り返る。
 
オレはそのたびに笑顔で手を振る。
 
やがてカウンターの奥にある引き戸を開けて、お店とつながっているだろう、自宅へと姿を消した。
 
後に残ったのは、それをジッと見送っていた花お母さんと、周囲の酔っ払いたちだ。
 
「では、お母さん。ボクもこれで」
「あ、ああ、はい、そうね。ウチの娘がご迷惑おかけしまして。本当にありがとうございました」
「いえいえ……皆さんも、楽しい時間をお過ごしの中、お邪魔しました」
 
周囲のお姉さんや、それよりもう少し年上のお姉さま。
 
そしてさらに人生経験豊富であろう、もっと年上のお姉さまがたにも、会釈を交えて挨拶をする。
 
「おー、兄ちゃん、いい男だねぇ!」
「おばちゃんがあと10年若かったら返さなかったよ!」
「10年で足りるかババア! 30年若返ってこい!」 
 
大盛り上がりである。
 
異世界でも酔っ払いは変わらない。
 
「にーちゃん、これ食ってみな! お花さんの煮物うめーから! まだ箸つけてないからさ!」
 
とあるテーブルからそんな声がかかった。
 
ギリギリお姉さまといった年の女性の手には、割っていない箸と小鉢があった。
 
「おい、やめとけ。さすがに酔っ払いの免罪符にも限度ってもんがあるぞ」
 
同じテーブルの友人が止めているが、オレは小鉢に入った煮物にすいよせられるようにテーブルに向かった。
 
このお店、酒の匂いはともかく、カウンター内の火元から漂う香りがじつに良い。
 
つまみとしてかもしれないが、濃い目の味付け料理が鼻を刺激しっぱなしだ。
 
「ではお言葉に甘えまして、頂きます」
「お、おう?」
 
お姉さまから新しい割りばしを受け取り、お姉さまの手に乗ったままの小鉢から少し煮物を頂く。
 
里芋。
 
オレの好物の一つだが、実に美味い味付けだ。
 
テーブルにあるビールもついでに頂戴したくなるが、さすがにそこまでするとお店に迷惑がかかってしまう。
 
未成年飲酒で営業停止などシャレにならない。
 
未成年淫行ならドンと来いなんだが。
 
「確かに美味しいですね。ごちそう様でした。お箸、お返ししますね?」
「お、お、おおう」
 
お姉さまの小鉢の上に、使った割りばしをそのまま置く。
 
お姉さまは、目じりのシワを深くして、オレが使った割りばしをガン見していらっしゃる。
 
この世界において、美少年が使った割りばしというのは、里芋一つ分と引き換えにする程度の価値はあるはずだ。
 
オレも色々と学んだ。
 
お暇するついでに、通りかがりのテーブルで、お詫びでーす、と言いながら軽く酌をしていく。
 
そのたびに盛り上がる酔っ払いのお姉さまたち。これはこれでなかなかに楽しい。
 
今後のビッチ活動の為にも、夜のお店のバイトも視野に入れるべきか?
 
ホストクラブとかそういう感じではなく、飲み屋の看板娘……いや看板男子、みたいなポジションだと楽しく働けそうだけれど、店の親族でもない難しいだろうな。
 
そんな未練で少しだけ後ろ髪をひかれつつ、オレは自動ドアの前に立ち、振り返る。
 
「では、お邪魔しました」
 
最後にもう一度、花お母さんに会釈をして、オレはようやく店を出た。
 
外に出ると酒の匂いのない、まっさらな空気に包まれた。
 
辺りはさらに暗くなっており、あちこちの店のネオンの輝きが夜の街に浮かび上がっている。
 
少しだけその中にフラフラ舞い降りて、夜の蝶を気取ってみたいと誘惑される。
 
さぞ無双できる事だろう事は、想像に難くない。
 
羽振りのいい女社長、ビシっとスーツを着こなすキャリアウーマン、そういう人をデレデレさせてみたいビッチの欲求がむくむくと首をもたげる、が。
 
「それはまたの機会にしとくか」
 
学生の夜遊びはよろしくない。
 
飲み屋街で補導なんてされようものなら面倒だ。
 
しかも、未成年の男が飲み屋で知り合った成人女性と一緒となると、学園に知らせがいくかもしれない。
 
そうなると、更に色々面倒だ。
 
主に冬原先生が。
 
というわけで、今日は大人しく帰る事にする。
 
十分、良い一日だったしね。
 
「またね、薫ちゃん」
 
閉められた扉にそう言葉を残して、オレと薫ちゃんの長い一日は、こうして終わりを迎えた。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...