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雪に舞う山茶花
雪に舞う山茶花
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なかなか纏まらなかった奥州も政宗の台頭により平定がなされようとしていた。
だが、既に天下の趨勢は関白秀吉によりほぼ定まり、残すは小田原の北条とこの奥州のみ。いわば喉元に刃を突き付けられていると言った状況であった。それを阻んだのはこの深く冷たい『雪』という名の天然の壁だった。そんな中で迎えた年の瀬、しかも大晦日に伊達の居城・米沢城でちょっとした騒ぎが起きる。当主・政宗が新年を祝う料理を作るために厨に籠っていたのだ。そのような真似をさせるわけにはと愛の元に助けを求めて侍女たちが押しかけていた。
(折角、庭の山茶花でも眺めようかと思ったのに…。)
そんなことを思うと出てくるのはため息しかなかった。
「喜多、後のことは頼みます。」
「お任せください。」
愛は側に控える喜多にそう告げると、厨に向かった。
「殿、そのようなことは私どもの仕事なれば…。」
「いつも美味い飯を作ってくれる其方らへの礼だ。」
「し、しかし…。」
厨で働く侍女は困り果て右往左往している。何をどういっても『手出し無用』ときかぬ政宗が普段刀を持つ手に包丁を持ち料理をしているからだ。
「皆、殿の好きに差し上げてください。」
「お方様…。」
「正月くらいゆるりと過ごしてほしいとの殿の思し召しなのです。」
「そういうことなら…。」
愛のその言葉に下女たちは渋々その場を後にする。それを見送り、愛は息を吐き出す。
「藤次郎様。」
「うん?」
「どうして、そう…。」
「俺がそうしたいのだ。」
「ですが、いくら何でも一人でとは無茶です。」
「豪勢なのは無理だから、雑煮と煮物くらいだ。」
「この城に詰めるものだけでどれほどいると思っているのですか?」
「まぁ、そうだな、100人はゆうに超えるか。」
「はぁ…。」
「愛?」
愛は袖を襷でまくると政宗の隣に立つ。
「私も手伝います。」
「いや、しかし…。」
「私は藤次郎様の妻ですから。 お手伝いしても問題ないでしょ?」
「う、うむ…。」
そんなわけで二人で雑煮と煮物を作り始めたのだった。
「雑煮の餅は如何します?」
「それは明日、皆で餅つきをすることにしてる。」
「では、もち米の用意だけしておきます。」
「頼む。」
気付けば日は陰り、夜の帳が降りる。耳を澄ますと遠くの寺から鐘を打つ音が聞こえてくる。
「もうそんな時刻か…。 どおりで腹も空くわけだ。」
「味見がてらに食べますか?」
「それもよいかもしれん。」
「では、お酒も用意いたしますね。」
「折角なら庭の雪でも見ながらにするか?」
愛はできばかりの煮物を、政宗は酒の入った瓶子を手に庭を望む縁側に運ぶ。
「今宵も止みそうにありませんね。」
「それでも、今年は豊作だったから良い正月になるだろう。」
「そうですね。」
政宗は煮物に箸をつけ口に放り込む。
「これなら皆も喜んでくれよう。」
「そうですね。 ただ…。」
「?」
「厨の者たちが肩を落とすかもしれません。」
「は?」
「主君にこのように美味しく作られては。」
「馳走なのだから美味く作らなくてなんとする。」
「まぁ、そうですけどね。」
「皆で美味いものを食べて、笑いあいたいだけだ。」
「そうですね。」
「明日は皆で餅をついて、雑煮を振る舞おう。」
と、突然政宗は愛の体を引き寄せた。愛は政宗の肩に頭を預け、寄り添う。やがて、寺の鐘の音が聞こえなくなる。どうやら、年が明けたようである。
「そう言えば…。」
「?」
「山茶花もそろそろ終わりか…。」
庭に視線を向ければ、山茶花がその白い花びらを雪の中へと舞い散らせていた。
「左様でございますね。」
「今見ごろは椿か?」
「それが過ぎれば雪解けとなりましょう。」
政宗の手に力がこもる。愛は顔を上げる。二人は顔を見合わせ、どちらともなく唇を重ねた。
愛が裾を肌蹴、政宗の膝を跨ぐように座る。
「いつになく積極的だな。」
「いけませぬか?」
「そうは申しておらぬ。」
「では、このまま…。」
愛は強請るように唇を重ねた。政宗はそれに答えるように舌を差し入れ口腔内を舐め上げる。二人は貪るように口づけを交わし、互いの体を弄る。政宗も袴を脱ぎ捨て逸物を取り出し、蜜口に狙いを定める。そして、愛の耳元で囁く。
「そのまま腰を落とせ。」
愛はコクリと頷き、自らの腰を落とす。すると、硬く滾った逸物が自身を貫く。その快感に背を仰け反らせる。
「相変わらず狭いな。」
「あぁぁぁ…。」
「愛、自ら動いてみろ。」
「で、でも…。」
「大丈夫だ。 感じるままに動けばいい。」
愛はぎこちなくも自ら動き始める。やがて慣れてきたのか、動きが滑らかになる。その乱れる姿に政宗は興奮を覚えついには自らも腰を突き上げた。そこからはただお互いを貪るように交われば、あっという間に高みへと上り詰めたのだった。
「愛…。 続きは寝所で、な。」
愛は肩で息をしながらも頷き、乞うように政宗を見上げた。政宗はその潤んだ瞳に反応し逸物が再び力を持つのを感じ苦笑する。そのまま愛の体を抱き上げ、寝所へと向かう。
褥に降ろし、再び貪るような口づけを交わす二人。やがて我慢の聞かなくなった政宗は愛を横たえその上に覆い被さる。冷えた空気にさらされたせいか、愛の双丘の赤い実はすでに立ち上がっており、ソレにむしゃぶりつくように口に含む政宗。
「あ…。」
その刺激に愛は小さく声を上げてしまう。徐々にその声に甘さが含まれてくる。やがて、腰をくねらせ先を強請り始める。
「そんなに欲しいのか?」
「とう、じろうさま…。」
政宗はその節くれだった指で愛の蜜口を撫で、奥に隠れた花芯を探り当てる。それを親指の腹で嬲り、中指を蜜口の中へと鎮める。そこは蜜で濡れており、簡単に受け入れてしまう。
「あぁぁぁ!!」
「愛、欲しいものははっきり口にせねば手に入らぬぞ。」
「と、とうじ、ろう、さま…。 お願い…。」
「何が欲しい?」
愛は快楽に溺れ、朦朧とする中で手を伸ばし、政宗の逸物に触れる。
「藤次郎様の…。」
「ああ。」
「愛にください。」
「わかった。」
政宗は愛の足を開き、体を滑り込ませると逸物を蜜口に宛がい貫く。蜜に濡れた肉壁が絡みつき奥へと誘う。政宗は背かされるように奥を何度も穿つ。
「はぁっ、あぁっ、 あぁぁぁ!!」
「愛、愛…。」
室内に淫靡な音が響く中、政宗は容赦なく愛を穿ち続けた。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「くっ。」
愛を高みへと押し上げるのにさほど時はかからなかった。同時に政宗も搾り取られるが如く果てる。その熱を統べて解き放ち、倒れ込む。
「藤次郎様…。」
「愛…。」
「重い…。」
「もう少しだけ…。」
「嫌です。 息ができませぬ。」
甘い余韻に浸りたかったのに叱られ、渋々起き上がり隣に横たわる。若干不貞腐れる政宗。だが、すぐに愛が抱きついてきたことですぐに機嫌が直り、その体を抱き寄せる。
(我ながら単純だな。)
そうは思うが、好きな女子に寄り添われて嫌な男などいるわけない。そう結論付けて、愛を抱き寄せる腕に力を入れる。すると、クスクスと笑い声がする。
「何を笑っておる。」
「だって…。」
「何だ?」
「藤次郎様、先ほどからコロコロ表情変わっておりますよ。」
愛の指摘に政宗の顔は一気に熱を持つ。必死に誤魔化そうとするが、既に遅くどうにもならない。
「そ、そなたのせいだ。」
「私の?」
「か、可愛いことをするから…。」
「え?」
政宗はやけくそ気味に唇を重ねた。突然のことに驚いた愛だったがそれが政宗なりの照れ隠しだとわかり受け入れる。
「決めた!」
「はい?」
「今宵は寝かせぬ。」
「え?」
「覚悟せよ。」
言うが早いか、体を入れ替えると再び押し入る。既に二度交わっているため肉壁はすんなりと政宗を受け入れる。愛の体は正直で奥へと誘うように蠢く。政宗はそれを味わうようにゆるゆるとした抽挿を繰り返す。ソレに我慢できなくなったのは愛のほうで潤んだ目を向け、強請るように脚を絡めてくる。政宗はニヤリと口の端を上げると一度自身を引き抜いた。愛はそのことに非難するような目を向ける。だから、政宗はそっと耳元で囁く。
「折角その気になってくれたのならもっと楽しもうと思ってな。」
「とう…、じ…、ろう、さま?」
政宗は愛の体を反転させ腰を掴むと後ろから再び押し入る。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「今宵はともに楽しもうぞ。」
そこから政宗は容赦なく穿ち続けた。そして、それは明け方近くまで続き愛が力尽き気を失うまで続けられたのだった。
*******************************************************
さて、日が高く昇ったころ家臣たちが正月参賀の挨拶にやってきた。大広間に膳が運ばれ、侍女たちが酒を注いで回る。
「殿、今年こそは奥州制覇と参りましょう!!」
「おお、そのつもりじゃ。 皆、頼りにしておるぞ!」
終始上機嫌の政宗に対し、疲労困憊の色が濃い愛。その様子に昨夜何があったか大方の予想は付いてる。成実は小十郎に耳打ちする。
「小十郎、あれって…。」
「成実殿、『口は禍の元』ですぞ。」
「ははは…。」
「お世継ぎができれば少しは落ち着かれるかもな。」
「「いや、それ、無理だろ。」」
綱元の言葉に成実と左馬之助の声が重なる。それを小十郎は内心ため息をつきながら聞き流す。
「殿、準備が整いました。」
「おお、そうか!」
政宗は立ち上がると庭に面した戸を開ける。突然の行動に皆が呆気にとられる。庭には臼が用意されており、下男の一人が杵を持っていた。
「これより餅つきじゃ。」
「なら、それがしがつきましょう。」
名乗りを上げたのは綱元だった。それに成実や左馬之助も続く。その後は皆の掛け声とともに餅がつきあがる。それを今度は小餅にちぎって丸める。
「殿、どこでそのようなこと覚えたのですか?」
「はは、見よう見真似じゃ。」
そう言って手際よく餅をちぎる政宗。それを集めた童や侍女たちが丸めていく。
「ずんだがよいか? 胡桃だれも用意しておるぞ。」
「雑煮が良い人はこちらへ。」
皆、思い思いに餅を食らう。皆笑顔で楽しそうである。体が辛いはずの愛もいつしか笑顔になる。そこへ現れたのは長らく旅に出ていた政宗たちの学問の師・虎哉宗乙禅師だった。
「随分と賑やかですのぉ。」
「虎哉禅師?」
「新年の挨拶に参ったのじゃが…。」
「ようおいでくだされた。 ちょうど、皆で餅つきをしておったところです。」
「それはそれは…。」
「禅師様もおひとついかがですか?」
愛の差し出したずんだ餅を虎哉禅師は受け取り頬張る。
「これは何とも…。」
「此度は豊作で質の良い米が取れたのです。」
「いやぁ、美味でござった。」
「ありがとうございます。」
「礼と言ってはなんですが、これを差し上げますかのぉ。」
禅師は背負っていた籠の中から花の咲いた枝を取り出す。それは淡く桃色に染まった山茶花の花だった。
「え?」
「珍しい色合いでございましょう。」
「そうですね。 山茶花といえば白い花しか見たことございませんので…。」
「赤いものもあるそうでな。 恐らくこれはその掛け合わせで生まれたものかと。」
「なるほど…。」
「奥方様にはお似合いかと思い、無理を言うて枝を分けてもらいましてのぉ。」
「まぁ。」
愛はその花を慈しむように手で包み、受け取るが、政宗が横から手を伸ばし奪う。
「あ…。」
「これ、何をするか!!」
虎哉禅師が叱るが政宗は意に介さない。奪った山茶花を愛の髪に差した。
「折角ならこの方がよかろう?」
「殿…。」
政宗は満面の笑みを浮かべ、愛の手を取り再び皆の輪へと連れていく。その大きな手は力強く、そして優しい。その温もりに愛のこころは温かくなる。
「愛、今年もよろしく頼む。」
「はい。」
賑やかで笑いにの絶えぬ正月が過ぎていく。散りゆく山茶花の花びらが風に乗って天に舞う。
それは独眼竜が迫りくる困難に打ち克つことを暗示するかのようであった。
************************************************
************************************************
お読みいただきありがとうございます
冬といえば椿と並んで山茶花と思いましたので…。
因みに山茶花の花言葉は『困難に打ち克つ・ひたむきさ』だそうです。
また、色によっても違いがあり
赤:『謙譲・あなたがもっとも美しい』
白:『愛嬌・あなたは私の愛を退ける』
ピンク:『永遠の愛』
だそうです。
何となく、この二人はピンクの花言葉が一番似合うと思い最後はこの色で閉めてみました。
だが、既に天下の趨勢は関白秀吉によりほぼ定まり、残すは小田原の北条とこの奥州のみ。いわば喉元に刃を突き付けられていると言った状況であった。それを阻んだのはこの深く冷たい『雪』という名の天然の壁だった。そんな中で迎えた年の瀬、しかも大晦日に伊達の居城・米沢城でちょっとした騒ぎが起きる。当主・政宗が新年を祝う料理を作るために厨に籠っていたのだ。そのような真似をさせるわけにはと愛の元に助けを求めて侍女たちが押しかけていた。
(折角、庭の山茶花でも眺めようかと思ったのに…。)
そんなことを思うと出てくるのはため息しかなかった。
「喜多、後のことは頼みます。」
「お任せください。」
愛は側に控える喜多にそう告げると、厨に向かった。
「殿、そのようなことは私どもの仕事なれば…。」
「いつも美味い飯を作ってくれる其方らへの礼だ。」
「し、しかし…。」
厨で働く侍女は困り果て右往左往している。何をどういっても『手出し無用』ときかぬ政宗が普段刀を持つ手に包丁を持ち料理をしているからだ。
「皆、殿の好きに差し上げてください。」
「お方様…。」
「正月くらいゆるりと過ごしてほしいとの殿の思し召しなのです。」
「そういうことなら…。」
愛のその言葉に下女たちは渋々その場を後にする。それを見送り、愛は息を吐き出す。
「藤次郎様。」
「うん?」
「どうして、そう…。」
「俺がそうしたいのだ。」
「ですが、いくら何でも一人でとは無茶です。」
「豪勢なのは無理だから、雑煮と煮物くらいだ。」
「この城に詰めるものだけでどれほどいると思っているのですか?」
「まぁ、そうだな、100人はゆうに超えるか。」
「はぁ…。」
「愛?」
愛は袖を襷でまくると政宗の隣に立つ。
「私も手伝います。」
「いや、しかし…。」
「私は藤次郎様の妻ですから。 お手伝いしても問題ないでしょ?」
「う、うむ…。」
そんなわけで二人で雑煮と煮物を作り始めたのだった。
「雑煮の餅は如何します?」
「それは明日、皆で餅つきをすることにしてる。」
「では、もち米の用意だけしておきます。」
「頼む。」
気付けば日は陰り、夜の帳が降りる。耳を澄ますと遠くの寺から鐘を打つ音が聞こえてくる。
「もうそんな時刻か…。 どおりで腹も空くわけだ。」
「味見がてらに食べますか?」
「それもよいかもしれん。」
「では、お酒も用意いたしますね。」
「折角なら庭の雪でも見ながらにするか?」
愛はできばかりの煮物を、政宗は酒の入った瓶子を手に庭を望む縁側に運ぶ。
「今宵も止みそうにありませんね。」
「それでも、今年は豊作だったから良い正月になるだろう。」
「そうですね。」
政宗は煮物に箸をつけ口に放り込む。
「これなら皆も喜んでくれよう。」
「そうですね。 ただ…。」
「?」
「厨の者たちが肩を落とすかもしれません。」
「は?」
「主君にこのように美味しく作られては。」
「馳走なのだから美味く作らなくてなんとする。」
「まぁ、そうですけどね。」
「皆で美味いものを食べて、笑いあいたいだけだ。」
「そうですね。」
「明日は皆で餅をついて、雑煮を振る舞おう。」
と、突然政宗は愛の体を引き寄せた。愛は政宗の肩に頭を預け、寄り添う。やがて、寺の鐘の音が聞こえなくなる。どうやら、年が明けたようである。
「そう言えば…。」
「?」
「山茶花もそろそろ終わりか…。」
庭に視線を向ければ、山茶花がその白い花びらを雪の中へと舞い散らせていた。
「左様でございますね。」
「今見ごろは椿か?」
「それが過ぎれば雪解けとなりましょう。」
政宗の手に力がこもる。愛は顔を上げる。二人は顔を見合わせ、どちらともなく唇を重ねた。
愛が裾を肌蹴、政宗の膝を跨ぐように座る。
「いつになく積極的だな。」
「いけませぬか?」
「そうは申しておらぬ。」
「では、このまま…。」
愛は強請るように唇を重ねた。政宗はそれに答えるように舌を差し入れ口腔内を舐め上げる。二人は貪るように口づけを交わし、互いの体を弄る。政宗も袴を脱ぎ捨て逸物を取り出し、蜜口に狙いを定める。そして、愛の耳元で囁く。
「そのまま腰を落とせ。」
愛はコクリと頷き、自らの腰を落とす。すると、硬く滾った逸物が自身を貫く。その快感に背を仰け反らせる。
「相変わらず狭いな。」
「あぁぁぁ…。」
「愛、自ら動いてみろ。」
「で、でも…。」
「大丈夫だ。 感じるままに動けばいい。」
愛はぎこちなくも自ら動き始める。やがて慣れてきたのか、動きが滑らかになる。その乱れる姿に政宗は興奮を覚えついには自らも腰を突き上げた。そこからはただお互いを貪るように交われば、あっという間に高みへと上り詰めたのだった。
「愛…。 続きは寝所で、な。」
愛は肩で息をしながらも頷き、乞うように政宗を見上げた。政宗はその潤んだ瞳に反応し逸物が再び力を持つのを感じ苦笑する。そのまま愛の体を抱き上げ、寝所へと向かう。
褥に降ろし、再び貪るような口づけを交わす二人。やがて我慢の聞かなくなった政宗は愛を横たえその上に覆い被さる。冷えた空気にさらされたせいか、愛の双丘の赤い実はすでに立ち上がっており、ソレにむしゃぶりつくように口に含む政宗。
「あ…。」
その刺激に愛は小さく声を上げてしまう。徐々にその声に甘さが含まれてくる。やがて、腰をくねらせ先を強請り始める。
「そんなに欲しいのか?」
「とう、じろうさま…。」
政宗はその節くれだった指で愛の蜜口を撫で、奥に隠れた花芯を探り当てる。それを親指の腹で嬲り、中指を蜜口の中へと鎮める。そこは蜜で濡れており、簡単に受け入れてしまう。
「あぁぁぁ!!」
「愛、欲しいものははっきり口にせねば手に入らぬぞ。」
「と、とうじ、ろう、さま…。 お願い…。」
「何が欲しい?」
愛は快楽に溺れ、朦朧とする中で手を伸ばし、政宗の逸物に触れる。
「藤次郎様の…。」
「ああ。」
「愛にください。」
「わかった。」
政宗は愛の足を開き、体を滑り込ませると逸物を蜜口に宛がい貫く。蜜に濡れた肉壁が絡みつき奥へと誘う。政宗は背かされるように奥を何度も穿つ。
「はぁっ、あぁっ、 あぁぁぁ!!」
「愛、愛…。」
室内に淫靡な音が響く中、政宗は容赦なく愛を穿ち続けた。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「くっ。」
愛を高みへと押し上げるのにさほど時はかからなかった。同時に政宗も搾り取られるが如く果てる。その熱を統べて解き放ち、倒れ込む。
「藤次郎様…。」
「愛…。」
「重い…。」
「もう少しだけ…。」
「嫌です。 息ができませぬ。」
甘い余韻に浸りたかったのに叱られ、渋々起き上がり隣に横たわる。若干不貞腐れる政宗。だが、すぐに愛が抱きついてきたことですぐに機嫌が直り、その体を抱き寄せる。
(我ながら単純だな。)
そうは思うが、好きな女子に寄り添われて嫌な男などいるわけない。そう結論付けて、愛を抱き寄せる腕に力を入れる。すると、クスクスと笑い声がする。
「何を笑っておる。」
「だって…。」
「何だ?」
「藤次郎様、先ほどからコロコロ表情変わっておりますよ。」
愛の指摘に政宗の顔は一気に熱を持つ。必死に誤魔化そうとするが、既に遅くどうにもならない。
「そ、そなたのせいだ。」
「私の?」
「か、可愛いことをするから…。」
「え?」
政宗はやけくそ気味に唇を重ねた。突然のことに驚いた愛だったがそれが政宗なりの照れ隠しだとわかり受け入れる。
「決めた!」
「はい?」
「今宵は寝かせぬ。」
「え?」
「覚悟せよ。」
言うが早いか、体を入れ替えると再び押し入る。既に二度交わっているため肉壁はすんなりと政宗を受け入れる。愛の体は正直で奥へと誘うように蠢く。政宗はそれを味わうようにゆるゆるとした抽挿を繰り返す。ソレに我慢できなくなったのは愛のほうで潤んだ目を向け、強請るように脚を絡めてくる。政宗はニヤリと口の端を上げると一度自身を引き抜いた。愛はそのことに非難するような目を向ける。だから、政宗はそっと耳元で囁く。
「折角その気になってくれたのならもっと楽しもうと思ってな。」
「とう…、じ…、ろう、さま?」
政宗は愛の体を反転させ腰を掴むと後ろから再び押し入る。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「今宵はともに楽しもうぞ。」
そこから政宗は容赦なく穿ち続けた。そして、それは明け方近くまで続き愛が力尽き気を失うまで続けられたのだった。
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さて、日が高く昇ったころ家臣たちが正月参賀の挨拶にやってきた。大広間に膳が運ばれ、侍女たちが酒を注いで回る。
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「おお、そのつもりじゃ。 皆、頼りにしておるぞ!」
終始上機嫌の政宗に対し、疲労困憊の色が濃い愛。その様子に昨夜何があったか大方の予想は付いてる。成実は小十郎に耳打ちする。
「小十郎、あれって…。」
「成実殿、『口は禍の元』ですぞ。」
「ははは…。」
「お世継ぎができれば少しは落ち着かれるかもな。」
「「いや、それ、無理だろ。」」
綱元の言葉に成実と左馬之助の声が重なる。それを小十郎は内心ため息をつきながら聞き流す。
「殿、準備が整いました。」
「おお、そうか!」
政宗は立ち上がると庭に面した戸を開ける。突然の行動に皆が呆気にとられる。庭には臼が用意されており、下男の一人が杵を持っていた。
「これより餅つきじゃ。」
「なら、それがしがつきましょう。」
名乗りを上げたのは綱元だった。それに成実や左馬之助も続く。その後は皆の掛け声とともに餅がつきあがる。それを今度は小餅にちぎって丸める。
「殿、どこでそのようなこと覚えたのですか?」
「はは、見よう見真似じゃ。」
そう言って手際よく餅をちぎる政宗。それを集めた童や侍女たちが丸めていく。
「ずんだがよいか? 胡桃だれも用意しておるぞ。」
「雑煮が良い人はこちらへ。」
皆、思い思いに餅を食らう。皆笑顔で楽しそうである。体が辛いはずの愛もいつしか笑顔になる。そこへ現れたのは長らく旅に出ていた政宗たちの学問の師・虎哉宗乙禅師だった。
「随分と賑やかですのぉ。」
「虎哉禅師?」
「新年の挨拶に参ったのじゃが…。」
「ようおいでくだされた。 ちょうど、皆で餅つきをしておったところです。」
「それはそれは…。」
「禅師様もおひとついかがですか?」
愛の差し出したずんだ餅を虎哉禅師は受け取り頬張る。
「これは何とも…。」
「此度は豊作で質の良い米が取れたのです。」
「いやぁ、美味でござった。」
「ありがとうございます。」
「礼と言ってはなんですが、これを差し上げますかのぉ。」
禅師は背負っていた籠の中から花の咲いた枝を取り出す。それは淡く桃色に染まった山茶花の花だった。
「え?」
「珍しい色合いでございましょう。」
「そうですね。 山茶花といえば白い花しか見たことございませんので…。」
「赤いものもあるそうでな。 恐らくこれはその掛け合わせで生まれたものかと。」
「なるほど…。」
「奥方様にはお似合いかと思い、無理を言うて枝を分けてもらいましてのぉ。」
「まぁ。」
愛はその花を慈しむように手で包み、受け取るが、政宗が横から手を伸ばし奪う。
「あ…。」
「これ、何をするか!!」
虎哉禅師が叱るが政宗は意に介さない。奪った山茶花を愛の髪に差した。
「折角ならこの方がよかろう?」
「殿…。」
政宗は満面の笑みを浮かべ、愛の手を取り再び皆の輪へと連れていく。その大きな手は力強く、そして優しい。その温もりに愛のこころは温かくなる。
「愛、今年もよろしく頼む。」
「はい。」
賑やかで笑いにの絶えぬ正月が過ぎていく。散りゆく山茶花の花びらが風に乗って天に舞う。
それは独眼竜が迫りくる困難に打ち克つことを暗示するかのようであった。
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お読みいただきありがとうございます
冬といえば椿と並んで山茶花と思いましたので…。
因みに山茶花の花言葉は『困難に打ち克つ・ひたむきさ』だそうです。
また、色によっても違いがあり
赤:『謙譲・あなたがもっとも美しい』
白:『愛嬌・あなたは私の愛を退ける』
ピンク:『永遠の愛』
だそうです。
何となく、この二人はピンクの花言葉が一番似合うと思い最後はこの色で閉めてみました。
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